潜入作戦
小走りで図書館の裏側まで向かっていた準司と将吾は図書館の裏側にようやくたどり着いた。イナズマ団がどこにいるか辺りを警戒しながら見回したが、誰もいない。
「なあ、準司。裏側に奴らが隠れているんじゃないか?」将吾は見渡しながら準司に聞いた。
「どうだろうね、でもいなさそうだよ。そこまで気にしなくてもいいんじゃないか」準司は警戒はしてはいてもイナズマ団がいないため警戒心は和らいだ。
「それにしてもすんごい人数だ。取材カメラマンもかなりの人数だよなあ」将吾は向こう側の表玄関近くのカメラマンやテレビアナウンサーなどたくさんいる方へ目を向けながら準司に聞いた。
「真っ先に飛び込むのはかなり危険だなぁ」準司は将吾と同じく向こうに目を向けながら言った。
すると、あちら側から小声が聞こえた。
「おーい、二人ともこっちだ」辰准教授だ。二人より先にたどり着いていた。
「あっ、辰先生!?」準司が言った。
「しー!、声が大きいよ」辰准教授がしーのポーズをとりながら小声で話した。
「あっ、ごめんなさい」準司は謝った。
「ここから入れるからついてきて」辰准教授が二人を近くのドアに誘導して周りを気にしながら図書館に入っていった。
「君たち図書館に来たことある?」辰准教授は二人に聞いた。
「まだ一回ぐらいしか来たことなくて、春学期始まってすぐに来た感じですかね…っていうかいつの間に先生がここに?」準司は聞き返した。
「うん?それはね…君たちが困らないように直ぐ様準備物をまとって近道してきたんだ」
「さすが先生ですね…」将吾は感心した。
辰准教授は特殊機械で建物の中を映すように上を眺めた。
「ここは地下一階だけどね、君たちが助けに行くべき友人さんは一番上の部屋の中に閉じ込められているみたいだ。そこまで行くには階段を利用して周りのいる敵を失神銃で眠らせてから最上階の職務室に入って鍵を開けなければいけない」
「鍵ですか?」準司は聞いた。
「ああ、だけどね、イナズマ団はそんな生優しく鍵を放っておくことするはずがないからね。おそらくイナズマ団の中の誰かが持ってると思うから君たち二人はこのファインドグラスっていう機具をはめておいてくれ」
辰准教授は二人に二つの新しい機具を渡した。
二人はそのグラスをはめた。
「おお、すげえ。何ですかこれ?」準司は聞いた。
「そのグラスがどこに人や物が隠れているかを察知して危険物かどうかを見極めることができるんだ。これを利用して鍵を持っている奴は誰かを探すんだ」辰准教授は説明した。
「なるほど、またしてもこんなものが大学内にあったなんて」将吾は感心した。
「よし、これで準備が出揃ったようだな。ただ二人も気をつけろよ。相手もどこかで隠れていたり、監視したりしているかもしれないから万が一護身盾を頼りに捜索して欲しい。俺はここに立て籠っている人たちを救出したりイナズマ団を追い詰める手伝いをするから」
「わかりました」二人は言った。
「あっ、あの辰先生」
「ん?どうした?」準司は辰准教授に言っておかなければならないことを思い出した。
「さっき偶然にヴィジョン先生に出会いました。辰先生に武器を手渡されたと説明したら呆れた顔をしてましたけど」
「えっ、そうなの?」
「はい、ヴィジョン先生も後でこっちに向かうって言ってました。後、警察と共に中に入るように工夫しろと言われました。警察と一緒に行動した方がいいんじゃないですか?」準司は辰准教授に言っておかなければならないことをやっと説明できた。
「警察なら俺もさっき会ったよ。中にいる人たちを救出する手伝いをさせて欲しいってさっき言って、いろいろ説得するのに時間はかかったけど、何とか理解してくれたな。警察には他の二人も中に入るから万が一の時のために手助けをしてほしいって言ったらわかったと了解してくれたよ。だからこっちはこっちでやることに集中すればいい」辰准教授はそう説明した。
「そうなんですね。わかりました」準司はそう返した。
「よし、じゃあ次はこっちだ」辰准教授は二人を誘導して地下の部屋に入っていった。
イナズマ団がいるかを警戒しながら三人は前に進んだ。
「よし、護身盾を大きくしよう」辰准教授が言うと二人も盾を構えた。三人同時に盾を大きくして臨戦体勢に入った。ファインドグラスを目にはめているのを確認し、護身盾を前に構えながらゆっくりと前に進んだ。
ようやく階段の前にまで来て一階に上がろうとしたその時だった。
上からブザーがなり始めた。
「うわ、しまった!こんなところにブザーが、とにかく階段に急げ!」
「えっ!?」二人も驚いた。
「誰だ!」
「うわあ!」
イナズマ団の一人が銃を乱射した。辰准教授は前に出て素早く盾を使って銃の玉を弾き返し、二人を守った。
「うわあ!危ねえ!!」
「早く走って逃げろ!」
辰准教授が言うまでもなくイナズマ団も直ぐ様追いかけてきた。
「待てー!」イナズマ団は走りながら銃を乱射した。
三人は階段を上に素早く登って辰准教授は二人を隠れるようにしてイナズマ団と対峙した。
「二人はそこで隠れてて!」辰准教授は失神銃を構えて振り返った。
二人のイナズマ団は容赦なく銃を乱射しまくっている。辰准教授は護身盾で必死に防ぎ、素早く失神銃を打ちまくった。するとイナズマ団二人は気絶して倒れた。
辰准教授は息をふーっとふいて撫で下ろした。
「大丈夫か?」辰准教授は二人を心配した。
「あ、はい…」将吾は言った。
「…先生…やったんですか?」準司は聞いた。
「ああ」辰准教授は返事した。
「…ちょうやべえ。こんな怖い経験初めてだ」将吾は気を失いそうだった。
「怖いのはここだけじゃないぞ。もっと数が多いからな。護身盾で守りながら前へ進もう」
「はい」
「あっ、ちょっと待って」辰准教授はもう一度イナズマ団のところに戻りファインドグラスを使って階段から眺めた。
「このイナズマ団らは鍵を持ってないみたいだ。きっとこの先にイナズマ団の誰かが持っているに違いない。先に進もう」三人はイナズマ団が気絶しているのを再度確認してから一階へと登った。
辰准教授は壁に隠れてイナズマ団がいるかを確認し、いないと分かると手で合図して二人を誘った。
ようやく一階にたどり着いた。
「よし、ここは一階だな。君たちに行き道を教えておくから今からよく聞いておけよ」一階の案内図を頼りにしながら辰准教授は二人に説明した。
「この一階から二階に上がるための非常階段がこの奥にあるからそこまで身を隠しながら進んでほしい。そこから一気に一番上までつながっている階段があるからそれを利用して最上階にあるドアまで行ってそのドアをこっそりと開けて君たちの同級生がいる部屋を探し出すんだ。その階にイナズマ団が監視していると思うから全員を君たちがいち早く失神銃で気絶させておくことも忘れるなよ。気絶した後部屋の番号が一致する鍵を奴らの誰かが持っているから探し出してその部屋の鍵を開けるってな訳だけど、何となくわかった感じかい?」
「なるほど。…ちょっと怖いですけど、まずそいつらを失神させておくことが先ですね」準司は確認しながら言った。
「ファインドグラスで危険を察知して盾で身を守りながら背後から失神銃で打つっていう作戦でいけば打たれにくいし狙われにくいし、逆に進みやすいっていうわけだ」
「なるほど…」将吾は少しずつ緊張してきた。
「確かに怖いかもしれないけど、すまないがそこは頼んだぞ。俺は前に言ったように全員を救出させるからここの一階からずっと探すんで」
「…はい」準司と将吾は緊張しながら返事した。
「助け出せたらここの場所に戻ってくること前もって言っておく。無事にここへ帰ってくることを祈るぞ」
「はい!」今度は二人ははっきりと返事した。
三人はイナズマ団に見つからないようにして非常口の手前までたどり着いた。そこは電気がついてなく暗いが若干薄暗くてまだ顔が見えている。
「ここから君たち二人はその非常口から裏に出て、外の階段を使って一番上に行くことだな」辰准教授は二人を見送るようにして言った。
「辰先生と一緒なら良かったんですけど」準司は先のことを考えるとだんだん不安になりながら言った。
「そうだな。でも俺の方なんか敵の数があまりにも多いよ。中に籠っている人たちを助けるよりもそっちはマシだろ?」
「まあ、言われてみりゃそうですよね」将吾は確かにと思って言った。
「いつかかってくるのか分からないから注意して前へ進めよ。ここまで聞きたいことは?」辰准教授は聞いた。
「もう大丈夫です」準司はそう返した。
「そうか、よし…じゃあ行ってくれ。帰ってこれること祈るぞ。さあ行け」
「はい!先生も気をつけて」準司は心配して言った。
「ああ」辰准教授は返事した。
準司と将吾は非常口を開けて最上階へと向かうようにして先に進んだ。
二人が外に出た後、辰准教授は失神銃の麻酔薬を数個入れていた。その準備をしているその時、背後から誰かが来た。
「大学生二人と一緒に乗り込んでまで私たちと遊びに来たというのですか?大学教授」
話し出した時辰准教授はびくっとして後ろをゆっくりと振り向いた。振り向いた後、辰准教授は直ぐ様盾を真っ先に構えた。
しゃべったその相手は銃を打った。辰准教授は盾で防ぎ、失神銃を打った。
しかし、相手も盾で防いだ。
「何!?」
「ハハハハハー、盾が持っていないとお思いだったのですか?大学で開発してきた努力が水の泡になってしまうと言わせないですよね?」その男は背筋を正して再び銃を構えた。
「一体どこで手に入れた?盾は大学以外隠しているというのに」辰准教授は真面目に聞いた。
「さーて、どうやって手に入れたでしょう?私が何かやらかしたということですかね?」
「ふざけるな、盾の管理は関係者以外誰も触れていないはずだ…イナズマ団捕獲のための作戦を立てているというのに」
「その捕獲作戦が通じなかったとしたら、あなた方の作戦に穴が空いてしまったということですかな?」
その男は微動だにしていない。
「お前は…あの時の…」昼間から追いかけていたあのサングラスかけた男だと辰准教授は気づいた。
「ええ、先生が私を追いかけてきたようですねー。あの時にマジックを使っていなくても逃げられたことだけは後悔してますよー」
「大学に忍び込んで何の用だ?なぜ大学生一人を誘拐したんだ?」辰准教授は聞きたかった本心をついに聞いた。
「ふふん、誘拐したというより利用したためですかな?」
「ふざけんじゃないぞ!」辰准教授は激怒した。
「まあまあそう怒らず。私に言うよりボスに会ってからの方が分かると思って…私はボスの命にその通りにしただけですから」
「めいだと?お前もイナズマ団なら直接聞けてもおかしくないんじゃないのか?」
「私の仕事は質問に答えるんじゃなく先生がその非常口を通して上に行かせた学生さんに用があるのです」この男は銃を下ろした。
「なぜ知っている?学生さんていうのは…最初から知っているのか?」辰准教授はこの男の言っていることに戸惑いを隠せなくなった。監視カメラをつけていることを今気づいた。
「ええ…突然ながらすみませんが、今さっきの二人の中の一人であります、三田原君とお会いしたいことがあってね」辰准教授はさらに驚いた。
「…なぜその名前を?」辰准教授は聞いた。
「でしょうね。何でお前が知っている必要があるかってなりますよね?これはボスが直接話したからですよ。ボス自身も三田原君と話せる時を待ってるって何回も聞かされましてね」この男は直ぐ様突っ込んだ。
「それでお前がすることというのは…まさか」
「そうですねー、その三田原君を私の元に渡すことです」
「渡してどうする?三田原君を利用して命の引き換えをしようと考えているのか?」辰准教授は失神銃を構えようと準備した。
「そこについては分かりませんねえ。ボスが言うには引き渡せばその女の子を返せて渡さなければ殺せと命じていましたね」この男はニタニタと笑い始めた。
「…何だと?」
「その女子大生と仲が良い三田原君を手に入れるにはちょうどいいことだと思いましてね。助けに来るために三田原君が駆けつけにくるだろうと予測したことが見事に的中したようで。その判断を誤ったあなたも見事引っかかったみたいですねー」
「くっ…じゃあこの図書館を包囲しているのも?」辰准教授はさらに焦ってきた。
「そう…おそらくその通りですね。まんまとボスの罠に引っかかったことに嬉しく思います。…さあ長々と話すより先生…三田原君をこちらに引き渡し願います」この男はニタニタ笑いながら右手を差し出した。
「俺たちは一人の大学生を助け出しにここに来た。三田原君も大学生の一人だ、渡すわけにはいかない」
辰准教授はもう我慢できず失神銃を構えた。
「ほお、ならば渡すまで命をかけた銃撃戦をここで楽しみましょうか?覚悟はいいんですね?」
この男もようやく銃を構えた。そして何発も打った。
辰准教授は盾で身を防ぎ安全を保った。
「おー、防ぎ方超格好いいですねー、さすがは大学教授…フハハハハハー!」この男は笑い続けた。
辰准教授は次はどうしようか焦っている様子の中作戦を考えていた。