最後の救出劇
高身長の水の頭と呼ばれた男がまず消火器で炎に向かって消火していった。炎が消えるまでの多少の時間がかかっている間に上木も消火器を両手で持って炎に向かって消火を始めた。
若干だが、炎の勢いは少しずつ小さくなってきているのが分かると何も怖がることなくすぐに水の頭は前に進み出た。少しずつ動けたことが分かると後ろにいた三回生から準司と将吾までの皆は左右に別れて消火器を持って炎の近い順から消火を始めた。
「おい、消防隊がここに来るのはいつぐらいだ?」水の頭の高身長の男は聞いた。
「桐原さんが下の階にいる消防隊の人達に行って連絡しに行ったと思うので、たぶんもうそろそろ来ると思います」上木が返答した。
「さっき言ったように俺の消火器はまだ満タンだから俺の方はましだが、君ら消火器の量もうそんなにないだろ?そんな場合は消防隊の人達に要請してもらってもいいと思う。もし消火器が持たなくなったら消防隊の人にお願いしに行ってくれ。その方がまだ早いと思うから。それ、自分らできるだろ?」高身長の男は聞いた。
「はい、確かにそうですね。…おい、皆話を聞いたか?水の頭さんの言う通りもし消火器が底ついたら消防隊の人達にお願いしに行ってくれ。それぐらいはできるだろ?」上木は消火器を左手にホースを右手に持ちながら後ろに向かって残りの皆に聞いた。
皆は「はい!」と返事した。
「それと、君上木君だっけ?」高身長の男は聞いた。
「はい!そうです!」
「他の救急隊と警察の人達にも十二階から十六階まで来てくれるようにお願いしに行ってくれるか?すぐに救助ができるようにしておいた方がいいから」
「分かりました、皆聞いてくれ!救急隊と警察の人達もこの十二階から十六階まで来るように連絡してくれるか?万が一に備えて何がおきるのか分からないから。誰か連絡しに行ってくれ!」上木が全員に聞こえるように伝えると、残りの三回生は後ろを振り向いて二回生と二人の一回生に聞いた。
「君らなら行けるだろ?すぐに行ってくれるか?…」
「先輩!僕が行きます!僕なら一回生だし、それぐらいならできますので」将吾は手を挙げて上木に伝えた。
「先輩!じゃあ僕も行かせてください。二人でならできると思うので」二回生の男子も手を挙げて上木に伝えた。
「分かった!じゃあ今すぐに行ってくれ!下の階にまだいると思うから!急いで行ってくれ!」
「分かりました!」
「将吾、いいのか?俺が行ってあげてもいいんだぜ…」
「いや、準司は消火の方がまだ早いと思うから。皆と協力して消火に集中してくれ。俺は後からまた合流する」
「分かった、急いでくれ!」
「ああ!」
将吾は準司の肩にポンと手を叩いて二回生の男子と一緒に再び下の階にいる消防隊や救急隊、警察のいるところへ急いだ。
「少しずつでいい。いきなり全部消火しようとするとかえって危ないこともある。完全に消火できたら少しずつ前に進むといい。時間が気になると思うが完全に消火しきるにはこれしかない。消防隊の人の数が足りていれば話は別だが、このメンバーだから安全第一に動いた方がいい。とにかく消防隊が早く来てくればいいんだが」高身長の男は話しながら消火器を片手にホースを右手に持って噴射していった。
廊下の三分の一は鎮火できてきた。だんだんと鎮火が進んでいけた時、三回生の男子があることを思い出した。
「あのお、水の頭さん。ちょっといいですか?」
「うん?何だ?」
「あなたの水の盾で一気に消火するのはどうでしょう?そうすれば火災の鎮火が早くできるんじゃ?…」
「いや、水で鎮火するのは逆に危険だ。炎に水を浴びせると炎の勢いがさらに増してしまう。爆発的に燃えてしまうことがあるから、消火器の方が便りだ。地味だが、一つずつ進んでいくしかない」高身長の男は分かりやすく説明した。
「そっか、分かりました」三回生の男子は納得した。
「水の頭さん、ようやく消防隊達が到着しました!急いでポンプをこっちに持ってきています!」さっき消防隊を呼びに行った二回生男子と将吾が帰ってきた。
「そうか、これでもう消火が一気に早まるな」高身長の男はそう言って、安心感が出てきた。
「消防隊です!ここからも私達に任せてください!これだけの人数を呼びましたので安心してください!…」
「そうですか、やっと来てくれて助かります!我々も消火を手伝いますので十六階まであと四階火災の消火を急いでくれますか?」高身長の男は消防隊に聞いた。
「分かりました!任せてください!おい!十二階から十六階までの四階を各人数に分けて消火を始めるぞ、急げ!」
「はい!」消防隊の人数はすごかった。百人以上はいるんじゃないかというぐらいの人数だが、急いで上の階に登るメンバーは階段を登って走り、そして各階に別れて消火を開始した。火の勢いは凄まじかったが、完全に消火できるまで時間をかけても水をかけ続けた。
「まだ鎮火できていないところは俺達が消火しよう。急げ!」
「はい!」高身長の男は活発に最後まで粘り、まだ火がついているところに消火器で消していった。上木達メンバーも各自に別れて消火器で炎に向かって消火を続けた。
一方その頃の下の階の十一階に警察と救急隊が駆けつけに来てくれた。ケガを負った工藤部長は救急隊にタンカーで運ばれ、慎重になって非常階段を使って一階まで降りていった。この高層ビルの会社員の人達も重症の人を優先にタンカーで運ばれ慎重に一階まで降りていった。他の会社員の人達は救急隊にその場で治療をしてもらっていた。
他の工藤部長と一緒に戦っていた三回生から一回生の坂本も救急隊にその場で治療してもらっていた。桐原のメンバーの女子大生達や、上木のメンバーの女子大生達も救急隊に「何か手伝えることはありませんか?」と手伝いたいのもあり、ケガを負ったメンバーに治療を始めていた。葵は坂本の治療も手伝っていたが、坂本は拒んでいた。
「何でお前が俺の治療をしてんだよ?気持ち悪いなあ」
「あんたもイナズマ団に負けたんでしょう?最後ぐらいは傷を直させてもらうからね」葵はイナズマ団にやられた傷だらけの箇所に消毒液を塗ると坂本は床から二センチは跳び跳ねて「いてえええ!」と叫び目が血眼になった。
そして警察達はこの高層ビル爆破事件の首謀者でイナズマ団ボスの十五番目の手下である禳正人を始め、イナズマ団全員を逮捕した。ようやく今まで捕まえられなかったイナズマ団の幹部一人とその手下達をこの時初めて捕まえることができたことになる。その事が一階で生中継していたテレビ関係者達と速報でテレビカメラに向かって記者達がその様子を見ながらマイクを持って話していた。
「今ビルから出てきました!あの黒い服にドクロの仮面を被った犯罪組織でありますイナズマ団の様子が見えました。そして、あれがそうでしょうか、高層ビル爆破事件の首謀者である禳正人容疑者がついに逮捕したとの情報です。今まで捕まえられなかったイナズマ団の一人をついに逮捕することができました!」皆も凄く喜んでいる。手錠をかけられたまま警察に連行されているイナズマ団全員がテレビに写し出されている。
得意の手品で逃げようとしても無理みたいだった。何故か禳正人というイナズマ団幹部十五番目のこの男は何も抵抗することができなかった。
イナズマ団全員が大型バスの大きさの警察車両数台に乗せられていき、この事件の全てがようやく終わった。
十二階から十六階までの消火がようやく終わったみたいだ。実はこれら四階に誰もいなかったため無事で助かった。
「皆もよく頑張った。誰もいなかったのは幸いだったな。とりあえず下に戻るぞ」高身長の男は元のところにいた十一階に戻ろうと階段で降りていった。そして上木達も後に続いて全員降りていった。
十一階に戻ってくると再び皆と再会した。皆、ようやく全て終わったことにほっと一息ついた。十二階から十六階まで消火していた消防隊達を除いてメンバー達全員真っ黒になっていた。
「みんな、ようやく終わったみたいだな」上木が全員に言うと皆も安堵したようにこれまで縛られていたものから解放されたかのようにほっと一息ついた。自然と笑顔が戻ってきた。
「あっ、最後にもう一つ。…水の頭さん、あなたは一体誰なんですか?」上木が質問した。皆もこの高身長の人に夢中になった。
「聞きたい?」水の頭と呼ばれし高身長の男は聞き返した。
「はい!」上木は元気よく返答した。
「俺の名前は伏竜寛燿。元はヴィジョン教授の弟子で卒業生だ。今はセキュリティ会社に勤めていて、俺も盾の頭と呼ばれている。他にもいろんな盾の頭がいるが、その人達も卒業生で各会社に就職しているようだな」
伏竜は初めて名前を教えた。皆もこの男のことを忘れないようにはしていた。
「伏竜さん!」今度は準司だ。さっき助けてくれたお礼を言いたかった。
「僕の名前は、三田原準司と申します。イナズマ団幹部に殺されそうになった時に助けてくれたこと感謝します。ありがとうございました!」準司は深々とお辞儀をした。
「そうか、あの時奴に殺されそうだったのか?何故かよく分からないがとにかく俺に命拾いされたってわけを言いたいってか?…まあ君が無事なのは良かった。…その盾、水の盾なのか?」伏竜は準司の盾に指さして準司に聞いた。
「はい、水の盾です」
「じゃあ君も水の技を覚えていかなければいけないな。技覚えはヴィジョン先生に聞いてないのか?」伏竜は聞いた。
「あっ、そうですね。まだ何も…」
「技を覚えていないのに戦場に来たのか?それは大変危険だぞ。そんなのではイナズマ団と対等に戦えない。盾の関係者か、ヴィジョン先生に聞いて確かめてこい。技の習得も君の仕事だ…他の皆もそうなのか?」伏竜は気になって皆に聞いた。上木は事情を説明した。
「実はこれから技覚えをするところだったんです。そんな時にこの事件に出くわしてしまって。防衛技能訓練をこの間受けたところでして…」
「タイミングが悪い中でこの事件がおきた、そういうわけか」伏竜は分かりやすく翻訳した。
「じゃあここから本題だな。三田原君だけじゃなく皆もまだ習得していなかったのなら今のうちに早く習得しておくことだな。いろいろと技を覚えておかなければならない」伏竜は盾を小さくしてもう時間だという感覚が出てきた。
「ケガを治してから元の場所に帰ることだ。もう後は警察が何とかしてくれる。君たちもヴィジョン先生の所に帰らなければならないのでは?」もう自分から言うことは何もないと伏竜は悟ると一階に出るまで皆のチームのケガ人を見守ることにした。




