開始の対戦
ゆっくりと慎重に足音をたてず桐原をはじめ皆も長い階段を登っていき、失神銃を右手に盾を左手に持ち、盾を前に構えて前に進んでいった。七階からは何も火がついていなく下の階とは全く逆で何も燃えておらず何一つ被害といったものがない。工藤部長は一体どこへ行ったのだろうか?もう最上階に行ってしまったんだろうか?七階へ続く階段を登っている途中でも上から何の音もなく声もなくただシーンとしていて全く変化がない。イナズマ団がそこに隠れていたりしていないのだろうか?皆もファインドグラスではめているから安心して取り組めているがこの赤色に輝いているファインドグラスもヴィジョン教授が開発したものでこの機械のおかげで死角であっても向こうに何があるのかを黒い影で映って見えることができる。準司と将吾は辰准教授と一緒に葵を助けに行くためにイナズマ団が占拠した図書館に裏から潜入したがその時に全く同じファインドグラスをはめてイナズマ団と戦ったことがある。このおかげで行く手に何があるのか危険物がないか敵がそばにいないかをすぐさま察知することができ動きやすかった。
今回もあの時と同じように準司と将吾はこの緊張感に慣れていた。
桐原たち三回生全員が先に長い階段を登り切ってようやく七階にたどり着いた。近づいて七階の廊下をよく見てみるとやっぱり下の二階から六階までとは全く違う。あんなに廃墟と化す程燃えていたのとは違って今までと変わらず下で何がおきていたのかと思わすかのように何の変化もなかった。
確か外から見た高層ビルは二階から六階までが火災で燃えていただけでなく最上階の三階全部が燃えていて黒い煙がもくもくと空の方へ舞い上がっていたのを覚えている。先に消防隊や救急隊は最上階に行って救助しているのか?いや…まさかイナズマ団に邪魔されているどころか怪我を負わされているのかまたは殺されているのか、そうやって行く手を阻むようにして最上階まで行かせないようにしているんだろうか?
だとしたら大変だ。最上階にいる人たちもイナズマ団に襲われているのかもしれないし、火災で逃げ場を失っているのかもしれない。どこにイナズマ団のボスがいるのか分からないが手下のイナズマ団の連中達はもうすぐそこにいるのは間違いない。
最後列にいた準司が七階にたどり着いたのを桐原が後ろを向いて確認できると桐原をはじめにファインドグラスですぐその場にイナズマ団がいるのかを確かめた。見た感じ誰もいない。
「いなさそうね。じゃあ中に入るよ。途中ではぐれないようにだけは気を付けてね」桐原は小声で皆に知らせゆっくりと慎重に前に進み出た。ここから戦闘モードに切り替わるとますます緊張感が増してきて恐怖との闘いがようやく始まってきた。
廊下はそんなに広くはなく狭すぎることもなく幅は二人が入るぐらいの広さであったため盾を前にして進んでいくことができる。桐原もそうだが全員が辺りを見渡しファインドグラスで人の影が映っているかを確かめていた。…どこだ?一体どこにいるんだ?もうここまで進んでいくとイナズマ団の姿が見えてくるはずだ。もう少し進んでみようか…。盾を前に構えたままファインドグラスで辺りを見渡していくように慎重に歩いていたその時だった。三回生の増田がファインドグラスで遠い所に黒い人の形をした影を見つけた。
「桐原さん!あそこ!あそこに黒い人の影映ってるぞ」増田がそう言うと桐原は足を止めて後ろを向いてどこにいるのかをもう一度ファインドグラスを通して確かめた。確かに増田の言う通りだ。あの先に人が行ったり来たりしているのが確認できる。それにあの長い銃の形のした武器も見える。あれはおそらくアサルトライフル銃だろう、殺傷能力の高い軍隊が使うあの銃のことだ。あの映っている人の姿は、間違いない、イナズマ団だ。どこから攻めようか、背後から攻めようとするなら遠回りしなければならない。桐原は作戦を思いついた。
「みんな、こっちに来て。私に考えがあるから」桐原は遠回りを選び背後から失神銃で撃つつもりで全員を誘導した。
死角で見えないが壁からそっと覗いた。やはりあの恰好はイナズマ団だ。桐原は慎重にゆっくりと盾を前に構えていることをもう一度確かめ失神銃を右手で構えてイナズマ団が向こうに向いている隙間に狙いを定めて撃った。すると、あのイナズマ団は倒れた。桐原が撃って倒れたことを確認できると「よし!」とガッツポーズをしていたが、その間もなく突然「誰だ!?」ともう一人の男の声が向こうからバカでかく聞こえてきた。ファインドグラスで皆でもう一度見渡すと右側から二人目のイナズマ団が出てきたのが見えた。
「みんな隠れて!」桐原は小声で言って左に小走りで走って皆をまた誘導し二人目のイナズマ団に見られないように壁に隠れた。
「誰だあ?こんなことした奴はあ。倒れているじゃねえかあ?てことはそこにいるんだろう?出て来いよお。相手になってあげるからよお」かなり気の荒いイナズマ団だ。身長が高く体格が広く髭の生えた短髪でまるで自衛隊にいそうな体力に自信のある男だ。
「どうした?」また別の男性の声がした。それに一人だけじゃない。足音で分かったが、数人が入ってきた。まずい、次から次へと入ってきたらここに何人かの大学生がいることが必ずバレてしまう。
「見ろよ、倒れている。死んではいないが寝ているみたいだ。どうやらここにあの人の弟子達がいるんじゃねえか?上で見ただろ、あのメガネかけた小娘がリーダーになって戦っていたあの大学生らさ。それに警察までもな。俺達と戦いにきたみたいだな。どうやらここにもそれらしき奴らがいるみたいだぜ」気づかれた。敵の数は…ヤバい、十人以上はいる。もうダメだ。隠れている場合じゃない。皆がここにずっと隠れてばかりしていては必ず見つかる。こうなったら…仕方がない、やるしかない。
「桐原さん、やるしかありません。僕が奴らと戦います」準司は覚悟を決めて言った。
「三田原君、戦う時は私達三回生が先頭に立つから。一回生三人は後ろで盾でしのいで」桐原は敵に聞こえないように気を配りながら小声で伝えた。
「桐原さん、ここにずっと隠れてばかりいたら必ず見つかります。それまで戦う覚悟を決めないと先に進めませんよ!」準司も小声で必死に説得した。
「分かってる。今計算してるところだから」桐原も実は戦う覚悟を決めている最中だった。ここにいるイナズマ団の人数より少なくはないが皆の戦い方が大丈夫なのかも心配していて三回生全員が指揮を取るのはできるが二回生一回生がイナズマ団と戦えるかが不安だった。
「…みんなよく聞いて。私達三回生が戦闘態勢に入るから二回生一回生は皆カバンの中にある手足を縛る足枷手枷を持ってしっかりとイナズマ団の手足を固定すること。それだけでいいから皆は命を優先に守って!分かった?」桐原がそう言うと準司と将吾以外二回生一回生全員が「分かりました」と呟いた。準司と将吾は桐原の警告を無視して三回生と一緒に戦おうかとお互いジェスチャーをしてうんと頷いた。
桐原は「三回生全員私と一緒に来て」と言って全員盾を前にして前に進んだ。
そして失神銃を持ってイナズマ団に突撃し、ついに何発も打ってイナズマ団数人を眠らせた。それに気づいた残りのイナズマ団が動き出し銃を乱射してきた。
桐原達は直ぐ様盾で防ぎ銃の玉から身を守った。
「誰かと思ったら、やっぱりいたんだな?まだいるんだろ?お前達の仲間は?」別のイナズマ団はアサルトライフル銃を構えながら桐原達三回生に聞いてきた。
「いないわよ。これで全員だからね」桐原は怒った顔つきで気を強くして覚悟を深めていた。
「あのメガネかけた小娘と同じ、ここも女がリーダー役なのか?女如きで俺たちと戦いにきたってか?調子のってんじゃねえぞ。こっちはこんな武器を持ってんだ。こんな怖い武器を相手にどう戦おうってんだ?お前達のその盾という奴がどこまで俺達の攻撃に耐えられるわけなのか、教えてもらおうじゃねえか?」イナズマ団全員アサルトライフル銃を構えている。ヴィジョン教授の開発した盾をこの銃なら壊せるはずだと調子に乗っている。
桐原達が戦っている中、準司と将吾は前に進み桐原達と合流しようとした。それを見た葵は思わずびっくりして「準司!?将吾!?」と小声で話し二人を止めた。
「何やってるの?二人も桐原さんに言われたでしょう?二回生一回生は全員は命を守る行動をしてって。イナズマ団全員が眠った後に私達が手枷足枷を固定してって言われたのに!」葵は心臓が跳び跳ねそうなぐらい緊張していてもしイナズマ団に見つけられたら大変だとハラハラしている。
しかし、二人は全然平気だった。
「葵、気持ちは分かるよ。桐原さんに言われたことは守らなきゃねと。でも俺たち葵を助けに行った時にもう慣れたし、戦い方も自然と身についたから。俺は桐原さん達に加勢する。こんなことで挫けてる場合じゃないから」
「俺も同意見だ」準司と将吾はイナズマ団を倒す術を知っている。だから、何も怖くもない。
「行くぞ、将吾」
「行こう、準司」二人はいっせいのーでと言って壁から身を乗り出した。そして失神銃でイナズマ団に打ち、二人を眠らせた。
「二人とも!」桐原達三回生はびっくりして何でこんな所に来たんだ?と言いたかった。
でも準司と将吾はびくともしていない。
「おーい、小娘。話が違うじゃねえか。まだいたわけか?こいつらは誰なんだ?うん?」イナズマ団の一人は何かどこかで見たことがあるなと思い浮かんだ。
「ああ、そうだ!あのガキだ!神威様のお気に入りの三田原という奴じゃねえか!まさかこんな所にいてたのか?これはラッキーじゃねえか、神威様にこやつを殺せばなんと喜ばれるか。おい、全員このガキを逃がすんじゃねえぞ」一人のイナズマ団が言うと皆も準司に集中した。
「三田原準司、文京区に救出しに行ったかと思っていたが、まさかここに来ていたとはな。もう一息で死なせるチャンスがあったというのにあの図書館で命拾いされるとは…全員を救出したいんだろ?どう救出しようと考えてんだ?」一人のイナズマ団の男は準司を挑発した。
しかし、準司は冷静にイナズマ団を見つめている。その後強い怒りが体全身に行き渡っている。
「ヴィジョン先生のおかげでこうやってイナズマ団の目の前で立つことができている。確かに最初のあの図書館でどうなるのかハラハラしたのはあったけど恐怖に打ち勝てた。技能訓練も受けることもできて何となく感覚は掴んだ。…四階から六階の火災から救出と消火をはかっていたがあそこで死人も出てしまったんだ。どれだけの人達が、罪のない人達が爆発事件で死んだか。そのあってはならない惨劇を俺は見たんだ。強い怒りを感じ取った。だから、俺は思ったんだ。イナズマ団を捕まえ、ボスも捕まえこれ以上の被害を食い止めるために俺たちも助けなければならないということを。やれるもんならやってみろよイナズマ団。お前たちが犯した罪を償ってもらう」準司は何もびくともしていなかった。三回生全員も準司の言っていることを冷静に聞いていた。
イナズマ団はわははと笑い出し、また圧をかけた。
「そうかそうか、罪を償ってもらうだと?正気かお前?イナズマ団だってこんなに数がいるんだぜ?イナズマ団を捕まえ、ボスを捕まえる。いい度胸してんじゃねえか小僧。ヴィジョン教授という人に何を教わったのかは知らねえがよ、お前、俺たちに勝とうと躍起になったって無駄だ。どうせ皆死ぬぞ。その盾とやらどこまで攻撃に耐えてくるのか見せてもらおうじゃねえか」イナズマ団は銃を乱射し始めた。残りのイナズマ団全員も連続に銃を撃ち続けた。銃撃戦が始まった。三回生全員と準司と将吾はしっかりと盾を構えて攻撃を防いだ。何もびくともしていなく無事だった。
「ヴィジョンっていう奴め、どこまで盾を研究してんだよ!」怒り狂ったイナズマ団全員はまたさらに銃を乱射した。ヴィジョン教授の弟子達三回生も防衛技能訓練を受けたあの経験を思い出していた。あの鉄針の降ってきた攻撃とよく似ている。ガンガンガンと音は鳴り響いていたが、全くびくともしていない。
「このまま盾で防いでもこっちも反撃しなきゃ意味ないよ」将吾は準司に聞いた。
「そうだな、一体どういうタイミングで撃てばいいんだっけ?」準司はあの図書館襲撃事件のことを思い出していた。確かにあの人数を相手に戦ったが、あの乱射をよけながらタイミングをはかって失神銃で反撃したのだ。
「タイミングをはかって相手が撃ってこなくなった時にこっちも撃てばいい」イナズマ団が一瞬だが乱射を止めた、そしてその時だった。
「今だ!」準司は何発も失神銃で撃ち返した。そしてイナズマ団数人に当たり気絶してばったりと倒れた。
「いいぞ!準司!先輩の皆さんは」将吾が三回生全員を心配している隙にもうすでに桐原達三回生も盾と失神銃を交互に使ってイナズマ団の銃の乱射が止まった瞬間のその時に失神銃を発射した。失神銃で撃ったそのイナズマ団全員が当たり床に倒れた。
「よし!これで全員か?」増田は周りを見渡してまだイナズマ団がいるか確認するように目で追った。
「いなさそうだ。二回生一回性もう出てきてもいいみたいだ、イナズマ団全員の手と足に手枷足枷をとりつけてくれ」増田が大声で二回生と葵に言うと全員が急いで白い鞄から警察が使う手錠と同じようなものを出し、倒れているイナズマ団全員の片端から両手と両足に手枷足枷を取り付けていった。




