絶望と残酷、そして決意
六階に着いた。ここもまだ鎮火に至っていない。今まで来た階とは違い、炎の勢いが凄まじかった。もう生存者はいないのかもしれない。消火を急いでも救助をする時間はもうないのかもしれない。…終わりなんだろうか?桐原リーダーも唖然とした顔で足が棒のように立ち尽くした。
「リーダー、消火を始めても生存者の方はまさか…」
「分からない。でもやるしかないわね」桐原リーダーは非常階段のすぐ近くにいた消防隊の一人に声をかけた。
「消防隊の皆さん、ヴィジョン教授の弟子として救助と消火の手伝いをしに来ました。消火の手伝い今からさせてもいいですか?」
「ああ、あなた方が道保堂大学の学生さん達ですか?消火器とか揃ってますか?」水で消火しながらその消防隊は聞いた。
「はい、もちろんここにあります。全員救助と消火活動に協力しに来たので。ここにいるメンバー全員も消火器は持っています」桐原は消火器を見せた。
「それなら助かります。けれどもこの通り火の勢いがすごいのでなるべく距離を置いて消火を行ってください」
「分かりました。みんな火傷しないようにだけ気を付けて」桐原リーダーは皆に注意喚起して先頭に立って消火器を持ちながら炎に向かって消火を開始した。最初は時間がかかっていたが、出口付近にだけ通路ができたみたいに火が鎮火してきた。
「ようやく鎮火ができてるみたい。この調子で私に続いて消火を手伝って」桐原リーダーが鎮火できたことを確かめれた残りの三回生と後輩達は一人ずつリーダーに続いて消火器を構えて消火を始めた。
だんだんと炎の勢いは縮まっていき、桐原リーダーがどんどん前に進むと続いて三回生達が中へと慎重に入っていき、三回生全員が中へと入れた後に二回生達が続いて中に入っていった。一回生三人が入る前にヴィジョン教授の開発した消火器のおかげであれだけ消火する時間が長かったのが覆ったかのように火は時間がかからず消火できていた。消防隊もその様子を見て一体何のために我々がここにいるのか分からなくなったなと仰天していた。
桐原リーダーはもう六階の中心らへんに行ったのではないかというぐらい出口からはどこらへんまで行ったか見えなくなっていた。ただ桐原リーダーのすぐ後ろにいた三回生達や二回生達の消火活動のおかげで周りはだんだんと炎の勢いはもうあっという間に鎮火していた。
準司達三人も消火器を構えて万が一のために消火できるように前へと進み始めた。
皆の活躍のおかげで部屋と廊下は三分の一は消火できていた。
しかし、桐原リーダーを始め、三回生の皆や二回生全員も燃えている箇所全て消火しようとした時、絶望の顔に変わってしまった。…もうやっぱり遅かったんだ…。
三回生の誰かが言っているのを後ろの皆は聞こえていた。準司達三人も煙の中を潜り抜けると衝撃なものを見てしまった。
もう灰と化した真っ黒な部屋と廊下であちこちに人の形をした黒い物体、パソコンの形をした残骸や必要だった資料の紙全て炭と化した残骸、そして仕事に必要だった数々の道具の跡、もう何もかもめちゃくちゃだった。見てはいけない衝撃の光景が映っている。
全部が火災で消失しているからおそらくこの六階の全ては誰も外からの救出をしていないのだろう。確かに手遅れだ。
「増田君、消防隊と救急隊を急いで呼んできて。なるべく消火を急いだけど、もう黒焦げになってるって…警察の人達にも早く伝えたいけど、工藤部長と一緒だから無理かもね」桐原リーダーは絶望を抱いたまま鋼の使い手の増田龍太にお願いを言った。
「分かった、すぐ戻ってくる」増田はすぐに出口に戻りすぐに消防隊達に連絡をし救急隊も早く来てくれるように頼んだ。
消防隊はすぐに「分かりました、私達もこの六階の救助をはかります。救急隊も早く来てくれるように呼びますので必ず待っていてください!」と言い、増田も「至急お願いします」と言った。そして消防隊達は早く救急隊を呼べと部下に指示し「分かりました!」と言って下の階に急いで降りて行った。
「とりあえずこの階全部消火を続けるわよ、消火器、みんな足りてるよね?」桐原リーダーは気持ちを切り替えて皆に消火器のことを心配して聞いた。
「こっちは大丈夫です、二回生全員消火器足りてるよな?…はい、まだ大丈夫です」二回生の男子が言った。
「三回生はちゃんと足りてる?」
「大丈夫だ、なあみんな?…うん、足りてる」他の三回生男子がみんなに聞いた。
「一回生全員は大丈夫?ちゃんと足りてる?」桐原リーダーは一番後ろの方に向いて準司達に聞いた。
「はい、まだいけます」準司が応答した。
「よし、まだ燃えているところに消火をはかって!今からいきます!」
皆が「はい!」と一斉に返事して急いで消火を始めた。
消火器で火の鎮火をはかるのに少し時間がかかったがだんだんと火の勢いが鎮まってきた。時間をかけて左側の部屋全部を開けて消火していくのと右側の部屋全部を開けて消火するのと廊下の燃えている箇所に全部消火していくのと役割分担を図って火の鎮火を急いだ。
白い煙を立ち込めてようやく六階全て鎮火することができた。ただ辺りはもう真っ黒になっていて救出を図りたかったのが、全部焼けてしまっていたので間に合わなかった。皆は悔しくて「そんなあ」と涙を流す人達もいた。脱出もしくは爆発に巻き込まれてその場で間に合わなかった人達なのだろう、死体がそこら中倒れているのが見えた。
「あっ、消火が終わりましたか⁉皆さんありがとうございます!今から救急隊が入りますから任せておいてください」消防隊たちが救急隊たちと一緒に入り込んできた。この六階の残酷な地獄のような描写を描いているかのような最悪な状況の中でも救急隊は冷静になってここに取り残された亡くなられた人達を外に出す作業を始めていった。
「ここには生存者がいなかったんだな…」将吾も絶望した気持ちを準司達に伝えたくなってきた。
真っ黒と化した廃墟跡を見つめながら準司は黙ったままになった。葵も絶望した気持ちで黙ったままになった。
救急隊たちは二人で一組になって亡くなった人に手を合わせて合掌し二人でその死体を持ち上げ担架に乗せた。そしてゆっくりと落ち着いて冷静に外へと運んでいった。その様子を桐原リーダー達全員は黙って見送るしかできなかった。準司達三人も同じく黙って見送るしかなかった。
「みんなここから出ましょう。救出はこれで全部できたと思うから…みんなの気持ちはわかるよ、私だって本当に辛いよ。こんな残酷なこと許されてはいけない事件なんだから」桐原はみんなを和ませた。皆は暫く黙ったまま下を向いた。
「…もう気持ちを切り替えないといけないですよね?上で戦ってるんですから、俺たちも救助が終わったしいよいよ戦闘態勢に切り替えないといけないですよね?」二回生の男子が桐原に聞いた。
「…そうね…みんな、覚悟持って中から失神銃取り出せる?消火器はまた白いカバンの中にしまって!それからゴーグルをファインドグラスに取り替えて!」桐原が指示して皆も消火器をカバンにしまい、中から失神銃とファインドグラスを取り出した。
皆が取り出せたのを確認すると桐原はまた皆に指示を出した。
「いよいよ七階に登るからそこにイナズマ団が出てくるかもしれない。万が一に備えて盾を大きくして前に出して前進するから戦う覚悟はしておいてよ。分かった?」皆が返事をするといつの間にか急に緊張感が皆出てきた。桐原が盾を大きくして戦闘の構えを始めると皆も後に続いて盾を大きくして前に出して構えながら六階を後にして廊下の外に出て近くの非常階段を桐原が先頭に慎重にゆっくりと足音を立てずに登っていった。
皆も足音立てずにゆっくりと桐原に着いていくようにした。一人ずつ列を作って階段を登っていく中準司は一番最後に並んだが、今までいた六階の方に振り向いた。
この悲しみを無駄にはしない。助けに行くのに間に合わなかったけど、一体ここにどれぐらいの人数がいたのか分からないがこの死を無駄にはしたくない。
六階の救出ができなかった悔しさと悲しさを抱えた気持ちでずっと後ろを向いて立ち尽くしていたが、また前を向き直し桐原のチームにすぐに合流し直し七階へ皆と同じに慎重にゆっくりと足音を立てずに登っていった。




