救助優先
準司達が初めて四階の廊下から部屋まで消火活動をしている最中、ようやく火がだいぶ鎮火してきた時にだんだんと全体が真っ黒に焦げてしまった姿が見えてきてここで働いていた人たちの面影が一瞬にして一変してしまったことに救助していた弟子達はショックを隠せなかった。その中で爆発にあってしまった全てが灰と化していたことに絶望しかけた。消防隊と救急隊達が乗り込んで真っ黒と化した人の死体を運んだり火傷を負ったけが人の救助を急いだりと絶望的な作業を黙々としていくしかなかった。他に辺りを見渡すとオフィス機器は溶け、書類は炭と化していてかつて忙しく人が行き交ったであろう廊下や部屋には持ち主が失ったままの、無言の持ち物が散らばり、その一つ一つが唐突に途絶えた営みを物語っていた。それを見ていた準司達三人も消火器で消火していた作業から手が止まり足が棒になってしまい、顔も蒼白で衝撃な表情を浮かべて心の中がぽかんと穴が空いたような気持ちになった。
「準司、ここの階も全部吹き飛んでしまったんだな…」将吾は火がようやく鎮火してきて落ち着いてきた時、地獄のような微かに残った絶望の部屋と元は廊下だったこの場所を見渡して準司に聞いた。
「ああ、こんなに酷いだなんて…」準司はまだ動けなくなった。
「本当に許せない…イナズマ団の悪い質はこれで分かったような気がする。無差別に人を殺すなんて」葵も怒りが恐怖より勝ってきた。
「とりあえずまだ生存者がいるかどうか探そう。まずはそこから先だ」準司の言っていることを聞いた葵も将吾もうんと頷き手分けして生存者の救出を始めた。
準司は、自分の距離が近いところから遠いところまで白い煙の中に入りながら「誰かいませんか!」と叫んでみた。すると、
「誰か、助けてください…私はここにいます…」かすかな声がした。男性の声だ。準司はその男性のところまで行き部屋を開けた。そしたら
「あっ、大丈夫ですか!?ケガはありませんか!?」やっと見つけた。まだ中にいたということは呼吸ができているか確認した。ただこの男性はハンカチを口に当てていたので重症にまではなっていなかったが、油断は許せない。
「呼吸の方は大丈夫ですか?とりあえずここを出ましょう…」
「お兄さん…実はまだ…あそこに…人がいるんです…助けて…あげて…ください」男性はごほんごほんと咳をして必死に準司に訴えた。
「分かりました、全員を救出しますのでとりあえず消火ができているのですぐに非常階段の方に逃げてください。そこに消防隊がいますので。残りの方達のことも任せてください!」準司はそう言うと男性は「ありがとうございます!」と言ってハンカチを口に当てながら外へと逃げた。
将吾も葵も人が倒れている数人を発見できた。片手に盾を取り付けているので一人ずつ動けない人にだけは右手で抱きかかえるしかなった。大丈夫ですか!?と大きく返事しても返事がない場合に一人ずつ右手で抱きかかえながら非常階段の出口まで出ようとすると消防隊が早く気づいて「大丈夫ですか?一緒に抱えますよ」と言って二人三脚の形になって非常階段まで被害者を救護しながら安全のところまで移動した。
移動できて安全なところまで移動できた後消防隊が電話をかけ救急隊の要請をお願いし被害にあった人の様子を詳しく説明し救助を急いでほしいとお願いした。
葵も将吾も一人を救助できた後にまだ人がいるからと救急隊達にお願いしてまた元の場所に戻って倒れている人達を二人で抱えてもう一度非常階段のところへ被害者を運ぶの繰り返しを行った。
消防隊も二手に分かれて心臓マッサージをする側と消火する上倒れている人たちを非常階段に運ぶ側と別れて救助を続けた。
「これで全員?」葵は将吾に聞いた。
「いや、まだいるかもしれないな。…あれ?そういえば準司は?」将吾も葵に聞いた。
「あっ、本当だ。準司はどこにいるんだろう、奥の部屋にいるとか?」
「とりあえず準司を探そう。準司のところも倒れている人達の救助をやっているかもしれないしな」将吾は葵にそう言うと葵は消防隊にお願いをした。
「消防隊の皆さん、もう一人被害にあっている人達の救出をはかっているので手伝ってくれますか?」
「はい、もちろん。ちなみにどこにいるのかわかるかい?」
「それが分からないんです。僕たち手分けして探していたので準司も同じタイミングでここに来るんじゃないかと思っていたんですが。僕たち準司という人を探しますのでそこでけが人を助けているんだと思います」将吾は詳しく言った。
「分かった、まだ取り残されている人達の救助は消防隊達もしておくから。私も君たちの手伝いをするからその準司君という人の居場所を一緒に探そうか?そこにも倒れている人たちがいるかもしれないから手伝うよ」
「あっ、ありがとうございます」二人が言うと早速準司のいる場所がどこにいるのか準司の名前を言いながら探した。
「準司!どこにいるの?いたら返事して」
「準司!どこにいるんだ?」
葵も将吾も何回も準司を呼び続けた。すると、
「おーい、二人ともここだ!ここにいるよ。助けてくれ!」準司の声だ。奥の方から声が聞こえてきた。
「準司?」準司の声がする方へ消防隊含め三人が奥へと進んだ。部屋のドアが空いている方へ突き進んでいると女性を抱えている準司を見つけた。
「準司!ここにいたのね…ケガしてるの、その二人は?」葵は直ぐ様聞いた。
「分からない。息しているのかさえ分からないんだ。このままじゃまずいよ」
「ちょっと待って、皆下がって。心臓マッサージをするからここでするよ」消防隊はあの心臓マッサージを始め息を吹き込み心臓にマッサージをした。
何回も繰り返し心臓マッサージをしているうちにそのスーツ姿の女性は意識を取り戻した。
「大丈夫ですか?意識は大丈夫ですか?」消防隊はその女性に尋ねた。すると女性はハアハア言って「はい…大丈夫です…それより他の人達も…」
「分かってます。後もう一人この女性も心臓マッサージを行いますからあなたは非常階段の所で待機して下さい。そこにも消防隊と救急隊がいますから具合を診てもらって下さい」
「じゃあ私が一緒に行きます」葵はそのスーツ姿の女性を手助けしようと消防隊に言った。
「あなたが誘導してくれるんですか?じゃあ非常階段まで一緒に行ってあげてください」
「分かりました」じゃあ一緒に行きましょうか?と言って葵はハンカチをあげてスーツ姿の女性に右手で口元を抑えるように誘導しスーツ姿の女性の左手を首の後ろに置いて右手で抱えながら非常階段に案内した。
「この女性も息できてないのですか?」消防隊は準司に聞いた。
「はい、体を揺すって聞こえますか?と返事をしたのですが反応がなくて…」
「分かりました、この人にも心臓マッサージを!」
「はい!」
消防隊はまたすぐに心臓マッサージを始めた。息を送ってあげたり心臓にマッサージをして何度も繰り返した。すると、もう一人の女性は咳込んでようやく無事に目を覚ました。
「大丈夫ですか?意識はありますか?」消防隊は目がうっすらと見開いた様子の女性に返事があるか確かめた。「はい…大丈夫です…ありがとう…ございます…」その女性は咳込みながら話せていた。準司達も一時はどうなるかと思いほっとした。
「ここから出ましょうか?念のため救急車に乗って医者に診てもらいましょう」消防隊はそう言うと女性は「はい」と返事した。
「僕も非常階段まで一緒に行きます。二人三脚で一緒に」準司は心臓マッサージのやり方が分からなかった失態の代わりに移動の手伝いをしてあげたくなった。将吾もそうだった。ちょうどその時、葵が帰ってきた。
「無事に私が送った女性は消防隊員と一緒にこのビルから脱出しました。ちょうどその時救急隊も来てくれて体の具合を聞いてまして、一階の出口に出て救急車に乗ったそうです」葵は消防隊に事情を詳しく説明した。
「そうですか、それなら良かった。じゃあみんなで非常階段まで戻りましょう。他の被害に遭ってる人達はまだ中にいるのか他の消防隊達が探しているので皆さんも引き続き協力してくれますか?」消防隊はそう聞くと準司達三人は「はい!」と返事して次に向かった。
「今江戸川区のビルに着きました。中に今から入ります」盾の頭と呼ばれた一人がヴィジョン教授に電話をしていた。
「久しぶりだな。まずは全員の救助をやってくれ。全員の無事ができたらイナズマ団全員を今度こそ捕まえてくれ、君の強さは私もよく分かっているからな」
「ええ、任せてください。奴らを捕まえるのが俺達の仕事ですから。ではまた」青い色のした盾を左手に取り付けた身長の高い体格ががっちりとしたこの男はすぐに炎上している高層ビルの中へと走っていった。
「なあ、そっちはどうだ?まだ人がいるか?」将吾は準司に聞いた。
「向こうの方も確認したけど、誰もいなかったな。他の部屋も行ったけど、誰もいなかったよ。将吾は?」準司も聞き返した。
「こっちも探してはいるけど誰もいなかったぜ。準司、もうここは大丈夫じゃないのか?後は消防隊に任せて俺たちは次の階に移動するように桐原さんに言いに行こう」将吾が提案してる時に丁度良いタイミングで葵も戻ってきた。
「二人ともどうだった?他にいなかった?」葵は聞いた。
「こっちは誰もいなかったよ。それに火は全部消火できたし」準司は説明した。
「こっちも誰もいなかったな。完全に火は消えてる」将吾も説明した。
「そっか、じゃあ大丈夫みたいね。桐原さんに聞いてみてもいいよね?次の上の階に行ってもいいか」葵も将吾と同じ考えだった。
「そうだな。後は消防隊が片付けてくれると思うから次に進もう」準司はそう言っている時に桐原リーダーをはじめに三回生二人、二回生三人と合流した。
「あっ、一回生じゃない?倒れてる人見つけた?」桐原リーダーは聞いた。
「いえ、片隅まで声かけしながら探していましたが誰も見つかりませんでした」準司は説明した。
「そっか、私達のところもいなかったから次の階に移動しましょう…」
「君たち!」振り向くと消防隊が駆けつけに来た。
「ここの階はもう大丈夫だ。後は我々消防隊に任せてください。皆さんは次の階に移動して救助に行ってください」
「分かりました。じゃあ私達はこれで上に行きますね」桐原リーダーは後は任せたというセリフの代わりに消防隊に報告した。
「はい、分かりました。では早く行ってあげてください」
「分かりました、みんな行くよ」桐原リーダーが言うと皆は「はい!」と返事してすぐに非常階段に急いで走った。
非常階段までたどり着くと倒れていた人達が救急隊達に心臓マッサージを受けていたり医療器具を使って治療を急いだり慌ただしくなっていた。
「桐原さん!治療の方も到着しているのでもう上の階に上がった方が先じゃないですか?」二回生の男子も早くした方がいいと焦っている。
「今それを言おうとしたところなの。みんなここの階はもう大丈夫みたいだから次は上の階に移動します!ケガのないようにだけは気をつけてください。今から登ります。くれぐれも気をつけて」桐原リーダーが先頭に皆も後に続いて上に登った。
そういえば、工藤部長達は大丈夫なんだろうか?今頃イナズマ団とばったり会ってしまっているのか?…だとしたらイナズマ団と戦っているのか?
もし何か失敗してイナズマ団に何かされてるとしたら…大丈夫なんだろうか?何か嫌な予感がする。準司がそう思っているうちに五階にたどり着いた。
この階も消防隊達が消火活動を続けていた。火はだんだんと鎮火してきてはいるが、まだ火が消えていないところも所々あった。桐原リーダー達皆も消防隊に事情を説明し消火と救助の手伝いをすぐ様始めていった。そんな時に消防隊から話したいことがあると言って全員に説明した。
「この階は取り残された人達はもういないから大丈夫だ。後は消火の方に手伝ってくれないか?」
桐原は「わかりました」と言ってメンバー全員に消火を急ぐよと伝えて消火器を再び持って消火を開始した。準司達が消火を始めようとすると消防隊や救急隊達がけが人を背負って階段を下っていくところを何人か見かけた。無事であってくれ、準司はそう思い救急隊達が何とかやってくれると信じて燃えているところに消火器を持って消していった。
消防隊と桐原リーダー達率いるヴィジョン教授の弟子達の活躍で何とか五階の廊下や部屋全部が鎮火できた。消火の後だからか白い煙が立ち込めていただけで何とか事がおさまった。
「皆さんも消火ありがとうございました。後のことは私たちに任せてください」消防隊が感謝すると桐原も感謝を伝えた。
「こちらこそ無事鎮火できてよかったです。私たちも上の階に行かないといけないので先に進みます。では行かせてもらいます」桐原は頭を消防隊に下げてから行くよと皆に合図して六階の方に急いだ。




