十五番目と呼ばれた男
辰准教授から全ての道具を身につけた全員は、ヴィジョン教授と工藤部長に急いで案内され、乗車するバス二台に乗るルートを教えられた。酸素マスクとゴーグルを手に持ちながら自分のカバンを背負い、そして盾を左腕から左手に取り付け急いで全員が小走りで二人の跡を追った。
大学内でたどったことのない道を皆が走って行くとまるで空港のバスターミナルみたいな風景になっていて大学専用の大型バスが二台並んでいる。
「ではこの止まっているバスに乗って現場まで向かいます。恐らく非常に慌ただしい状況ですので、警察と連携して救出と捕獲に取り組んでください。一番前のバスは文京区に、後ろのバスは江戸川区に向かいます。各自それぞれ乗ってカバンは置いたまま防具と失神銃に酸素マスクとゴーグル、そして肝心な盾を装着して現場にたどり着いてからすぐに駆けつけられるように準備を心がけなさい。救出する側は全員が外に救出できた後にイナズマ団捕獲組と合流してその主犯格を捕まえることに切り替えなさい。私も中に入って救出と捕獲を行う任務にあたります。私は文京区に向かいますからそのつもりで。工藤君は江戸川区に行きなさい。そしてリーダーとなって皆を指示しなさい」
「あ、はい。分かりました」工藤はヴィジョン教授の言う通りに返事した。
「それでは、皆検討を祈る。皆もケガを負わないようにだけは気を付けなさい。私はこのバスに、工藤君はそっちのバスを頼む」
「分かりました。じゃあ江戸川区に向かう人こっちのバスに乗ってください!」工藤が先に江戸川区に向かう人達を乗せるようにバスのドアの前に立って皆を待った。
「席は奥から乗っていってください!あっそれと決まりはないんで自由に乗っていってください!」工藤がそう指示し手前にいた人から次々と乗っていった。
準司達も江戸川区に向かうため、少し後ろに並んでいた。
ようやく準司達もバスに乗ると前から三番目の席に座った。このバスは高速バスとほぼ変わらない感じだったので、すごく椅子の乗り心地が良かった。豪華なバスなんだろうか?
「はい、じゃあ今から現場に向かいますから遠足に行くのと訳が違うんで。爆発現場に着いたらすぐに建物の中に移動してください。火災の影響で黒煙が酷い状況だと思うのでまだ取り残されてる人達の救助をはかるようにこの酸素マスクを一人一個ずつ持っていってください。特に救助する人達はお願いします!では今から出発するのでシートベルトを装着してください!では出発します!」工藤は忙しく席に着いたらすぐにシートベルトを装着し、バス運転士に「ではお願いします」と言ってしばらくしてバスが前のバスに続いて走り始めた。緊張を高めたくても高速バスに乗っている時は旅行気分にされるかのようにそれができづらかった。
準司は今から取り残されてる人達を助けに行かないといけないと思うと、あの図書館襲撃事件の時に葵を助けに将吾と辰准教授と一緒に行ったことを思い出してきた。
葵を助けることができたと思ったその直後にイナズマ団のボス達が出てきたのだ。あのボス達に殺されそうな時に辰准教授に助けられたのだ。あれは間一髪だった。辰先生のおかげで助かった。
葵は今どんな気持ちなのか心配になってきたが、葵の方を向くと葵は窓を眺めていた。次こそあのイナズマ団を捕まえてみせるというのと、取り残されてる人達を助けなければいけないというそんな気持ちが葵の見開いた目を見てより感じてきた。もう葵は大丈夫かもしれない。葵を信じて準司は思った。
前に走っていた文京区に行くバスがここで信号機を越した時にこの江戸川区に向かうバスと別れた。ヴィジョン教授達全員も現場に助けに行くために行ったんだ。もうここから真剣にならなきゃいけない。準司は覚悟が深まってきた。
「なあ準司、あの映像見た時けっこうな黒煙が立ち上っていたよな?今は消防隊達が懸命に消火活動と救助活動をやっているのはわかるけど俺達この人数で火災現場に入って行くなら消火器が必要だろ?それ工藤部長もヴィジョン先生もちゃんと持ってるの?」将吾は肝心なことを聞きたく準司に質問した。
「それ工藤部長に聞くのをまずいかなぁ。どうだろう?消防隊に聞くのできるのかな?まあ酸素マスク持ったし、消火は消防隊が何とかしてくれているだろう。この盾で消火できるかな?」準司は妙に思いついた。
「そっか、水の使い手の人は水が使えるのか。でもどうやって水を出すんだ?」将吾は疑問を抱いた。
「そういえば…それ滝島さん達から何も聞いてないな。どう扱うのか教えてもくれなかったな…」準司は何であの時教えてくれなかったのか、防衛技能訓練の時は水圧に耐える修業だったり、鉄針に耐える修業だったり、どこからボールが飛んでくるのかの反射神経を鍛える修業だったりのこの三つの修業しかしていないから肝心な技の出し方は何も教わっていない。それでもどうしようとするんだろう。
「それと準司、葵は大丈夫なんかな?あのイナズマ団にやられた傷だらけでトラウマ抱えているんじゃないかなって思うんだけど」将吾は準司の思っていた悩みと同じく出てきたので準司ももう一度葵を心配することにした。
「確かに俺もさっき葵のことが心配になってたけど、葵は炎の使い手だから今度は強く立ち向かっていけると感じたりもしてる。だから、葵を俺は信じてる。将吾がよほど心配なら後で声かけしてあげてもいいんじゃないか?」準司が将吾にそう言ってるのを聞こえてたのか、右側の窓際の椅子に座ってた葵は準司と将吾が座っている左側の窓際の椅子の方に向いて「準司」と返事した。
「あの時のケガで確かにイナズマ団に対して若干トラウマだけど、今度は私が助ける番だから大丈夫よ。もうここからは戦える根性は身についたからね」
葵はうんうんと笑顔を見せた。準司も将吾もうんと返事した。
「空手を得意技にして救助活動していけると思うよ」準司は葵を勇気を出させようと自信を出させてあげた。葵は「うん、ありがとう」と返事した。
「皆さん、マイク持ってるんで後ろの方まで聞こえますか?もうまもなく事件現場に着きます。盾を左手に装着してますか?他に酸素マスクとゴーグルに防具と失神銃しっかり持ってますか?これらを持って事件がおきた高層ビルに突入します。まだ建物の中に人がいないか取り残されていないか救助に向かいます。そして捕獲のチームはすぐにイナズマ団を探して捕まえるように警察と連携して行ってください。本来の私たちの目的はその捕獲作戦なんで何か連絡する時もスマホで私に知らせてください。ここまで聞いて大丈夫ですか?…大丈夫ね、それじゃあ今から行ってください!」工藤が言い終わるともう目の前に事件がおきた高層ビルに近い場所にたどり着いた。一階から五階までと一番最上階の一部ほとんどが真っ黒になっていて大きな黒煙がものすごい勢いでモクモクと雲の上まで登っているのかというぐらい酷い状況だった。これはまずい。皆もそうすぐに思っていた。目の前には消防車数台が放水していて救急車数台もけが人を待機しているもしくは救助された患者の手当てを急いでいたりなどとりあえず大変深刻な状況だった。
バスのドアが開いて全員が外に出ると消防車や、救急車や、パトカーの慌ただしいサイレンの音が響き渡っているのと周りにいた人達の騒がしい声が凄まじく飛び交っている。
「かなり深刻な状況ね。全員酸素マスクとゴーグル取り付けましたか?それじゃあ盾を左手に持って、それからこれらも持って行ってください、運転手さん、お願いします」
「分かりました」運転手はあるボタンを押し、高速バスの大型荷物を置くための場所が開放しドアが上へと上がった。すると中に緑色のした太い十字型の印がついた大きな荷物のような白い袋が大量に置いてあった。工藤は急いでその白い袋を手に取った。
「これは救助活動に使う最低限必要な物資がこの中に詰まっています。これを万が一に備えて持っていくようにしてください。じゃあこれを時間がないので速く取っていってください」近い順に工藤は白い袋を一人ずつ渡していった。
全員に行き渡ると工藤はまた大きな声で説明した。
「じゃあもう一つ、荷物が入ったこの白い袋をたすき掛けにして持って行ってください。白い袋の中は時間がないので各自で確認してほしいですが、ヴィジョン先生が開発した道具だったり治療するための道具だったり食料品だったり体を守ったりするためとかの大切な道具が入ってます。今回火災現場なので持ち運びできる消火器も各自それぞれ入ってますからもし火災にあった場合はそれを使ってください。分かりましたね?それじゃあ今から中に入って救助始めます。私も救助と実行犯確保に動きますので宜しく。では行ってください」工藤の掛け声で皆は一斉に現場に行き始めた。その中で坂本が「よっしゃあ!俺が一番乗りだぜ!」と言いながら一番速く走っていった。三回生たちは坂本の独断な行動に焦り坂本を追いかけるように走っていった。
「準司、俺たちが心配していたことがなくなって良かったな。一時はどうなるかと思ったよ。いつの間にこんなものが」将吾は言った。
「これで救出ができるな。急いで早く行こう」
「おお」
「まず一階からだよね?」葵はちょっとしたことで聞いただけで三人もすぐに走って事件現場に急行した。
「神威様、ようやく奴らが到着しましたよ。ここからが面白いゲームが始まりますのでご報告いたします」ナンバー十五の禳は次の事件開始まで準備が整ったところでボスの神威に電話した。
「ご苦労だな、十五番目の男よ。禳君、次の爆発開始を待ってるのかい?」神威は自信満々の余裕の表情で聞いた。
「はい、神威様がご指名しました通り設置致しております」禳というこの神威の手下は笑みを浮かべながら報告した。
「では存分やるがいい。事の深刻さを思い知らせてやれ」神威が即座に電話を切ると禳は縄で縛られ口のガムテープを貼られた人質達を見ながら笑みを浮かべながら銃の玉が入っているかの確認をしてじっと見つめていた。
「そこにいるんだろ?三田原準司。全員助けられるかな?」禳はますますワクワク気分が止まらなくなってきた。




