ヴィジョン教授の留守
まだ午前3時の時間だった。準司は恐ろしい夢でも見たのかと息がきれてる。あれは何なんだ?あれは本当におこった現実か?それとも夢か…。
謎の集団に囲まれて銃で撃たれた…。あの恐ろしさは肌で感じられるほど、…夢であってほしい、ただの夢だったというのが願いだ。
今はニュースやってないよな。
暫くして準司はテレビの電源をリモコンでつけたが、どこのチャンネルも深夜アニメか見たことのない通販番組しかやっていない。ニュースが出てくるのはだいたい5時くらいかそれぐらいだろう。
そう予想した準司は大学に行く前の準備をもう一度確認してからベッドの上に横になってからまた二度寝した。
午前5時過ぎ。
準司はもう一度目を覚ました。この時間なら朝のニュースがやっているだろう。再びリモコンで電源を入れテレビをつけた。いつもと変わらない様子だ、みんな出演者明るく何かの話題に笑いながらトークしている。この時間は天気予報もしくはスポーツのニュースのことで話題になっている時間だ。どこの番組つけても同じ様子だ。まだいやなニュースが出ないか時間を待ってもなかなか出てこない。
準司が朝ごはんの支度をしようとしたその時、ようやくニュースの時間がきた。ランキングを見て準司が見た夢と同じか見てみると…あった。
「次のニュースです。午前1時頃に北海道函館市の建物内に会社従業員が血を流して倒れているのを関係者が発見しました。関係者によりますと銃声の音が聞こえたということです。警察は指定要注意集団イナズマ団の関係も含め捜査を進めています」
えっ…イナズマ団?じゃあ夢で見たあの集団ってまさか。
やはりそうなのか。
準司はなぜか事件が起こる度に目が覚めてしまう。今回だけじゃなく前からそうだった。
イナズマ団という集団はニュースだけじゃなく指名手配のポスターにも掲示されている。皆もこの集団はどんな集団なのかはとっくに知っていて出くわしたらすぐに110番という文字を思い出しながら恐れている。
準司もニュースでよく見てたからこの事については知っている。
この事でまたイナズマ団の仕業だとしたら以前からまた騒ぎがおきているだろう。
イナズマ団め…。準司は怒りをぶつけていた。
軽い朝食を終え、テレビを消し準司は大学の行く支度をした。今日の提出物忘れていないかカバンにしまいこみ、顔洗いと歯磨きを済ませて自宅を後にした。準司は一人暮らしのため何から何まで一人でこなしている。
鍵を閉めてドアの確認をしたら階段を降りて自転車で大学に向かって行った。
大学についたのは約10分後。いつもの駐輪場に自転車を止めてから準司は水曜日の授業の校舎の中へ入っていった。実は1時限目の授業はないが早めに行くことにしていた。
準司は同じ同僚の松田将吾と浅倉葵が来ているかが気になっていた。イナズマ団のことですごく気になっているだろう、何だかその事が気になっていた。
準司は校舎の中へ入ってから周りを見渡した。すると左奥の丸いテーブルのところで新聞を広げてじっくり読んでいるショートヘアの女子が見えた。彼女の名前は浅倉葵。身長は少し小さく小柄に見える。
準司はすかさずそこまでいき挨拶した。
「オッス、今日は早かったんだな?」準司は挨拶した。
「うん、ただニュースのことで気になっちゃって」ちょうどそのニュースを読んでいるところみたいだ。
バカでかく『イナズマ団の仕業か』と書かれている。
「またイナズマ団か」と準司が言うと葵が返事した。
「もうほんとに怖いよねこの連中。偶然見かけたら鳥肌立ちそうって思ったりもして…。一体何がしたいかマジで意味わかんないんだけど。…準司はまだあの教授を追いかけてんの?ヴィジョン勇一という人」
「ああそうだけど、なんでダメなの?」
準司は不思議そうにそう聞いた。
「だってあの教授もイナズマ団を追いかけるって言ってるけど実際情報を得ているだけで何も動いてないじゃん。しかもアメリカ人と日本人の間に生まれた人って言ってるわりに英語しかしゃべれない人って…本当に変わってんだから」葵はそう言った。
「しょうがないよ、あの教授はアメリカ育ちなんだから。でもさ葵から見てそう思ってるのかわかんないけどそんなバカでもなんでもないんだぜ。だって一流大学卒業で理系の持った頭脳でそんな頭のいい先生を侮辱するなど…そっちだってどうかしてるよ」準司は熱くなって言った。
「じゃあ英語話せる人にならないとあの先生とは会えないと思うけど。英語を話せるなら英検2級は合格できないと…ヴィジョン教授と会いたいんでしょ?英語話せるんですか?」葵はわざとらしく言った。
「もちろん英語は話せないけどヒアリングはできるから。ヴィジョン先生もヒアリングできるんだし」
「それ言い訳しか聞こえないんだけど」葵は悟ったように言った。
「まあ俺にそう責めんなよ」準司は手で合図した。
「…あっ、将吾!今日も遅かったんだね」葵がそう言うと準司も振り向いた。松田将吾である。体格は広くちょっとぽっちゃりした体型だ。
「ごめんごめん、一時限目の授業に遅刻してきてさ。レポート書くのにだいぶ時間がかかったよ」将吾はリュックを机に置いてから言った。
「大変だね」葵は心配そうに言った。
「まあでも言い訳しても始まんないし…っていうかもう二時限目始まるよ、授業行かないの?」
「あっほんとだ」
「急ごうぜ」葵と準司は時計を見てあわててカバンを背負って授業に走った。将吾もそれに続いて走った。
片端に座っていた怪しいスーツの着た一人の男が席を立って外へと出ていった。その様子を見ていた白衣の着たこの教授は新聞を広げたまま缶コーヒーを一口飲み干してその男を見張っていた。
一方大学をずっと望遠鏡で監視していたこの怪しい黒い服の着た集団達は次の動きに連絡を待っていた。
「こちらは準備完了です。…了解です。実行に移します」
一人が合図し目的地まで向かった。
四時限目の授業が終わったことに皆安堵して帰った。
「やったぁ、授業終わった」
「ようやく解放されたって感じだよな」葵と将吾は1日の授業が終わって喜んでいる。
「あのさ。授業も終わったからさ、せっかくだから引き返して教授のところに行きたいんだけど」準司はすまない気持ちで言った。
「もうほんとにしつこいな。あの先生はそう簡単に入れてくれないって何回も言ってるんだから」葵は声に力が入った。
「えっ?ああ、前に言ってたヴィジョン教授のことだっけ?」将吾は聞いた。
「うん、そうみたい」葵は言った。
「あの教授も人気があるよな。みんな弟子入りしたいって言ってたけど断られたらしいんだって」将吾はそう言った。
「そんなに入れないの?」
「そりゃそうだよ。警察でも捕まえられないぐらい強敵なイナズマ団を相手にヴィジョン先生達は追いかけてるんだぜ。今イナズマ団は何をしてるのか危険な悪事を止めようとヴィジョン先生達が突き止めてるところだよ。そんな危険な仕事に大学生もでくわしてしまってどうすんだよ?」将吾は説得するように言った。
「だからこそ俺のやりたいことさ。大学って自由な場所だし、自分だって奴らを追い続けて罪のない人達を無念に晴らしたいよ。そういう仕事に向いてるのか分からないけど何か動きたくて仕方がないんだよ」準司は言った。
「うーん、まあ準司は成績はトップだしパソコン技術も一流並みだし…しょうがない、ついていこうよ」将吾は葵に聞いた。
「えっ…わかった、一回だけだよ」葵は怒ったように言った。
準司はウンウンとうなづいた。
「確かこのエリアが理学部に関係のあるところかな?」将吾は一つ一つ部屋を確認しながらヴィジョン教授のいる部屋を探していた。二人も将吾について行くような形でその部屋を探し続けた。
「ここじゃないか…あっ、あった。こんな奥のところにヴィジョン教授の部屋があったんだ」準司は先の続いている部屋を見渡しながら言った。
「でも今いるのかなあ?」将吾は聞いた。
三人は奥のところまで行きドアのところで立ち止まった。準司は中に誰かいるのかドアをノックした。
「すみません」
暫く返事がない。
「…いなさそうだね」
将吾の言ったことに準司がそうだねと返事をした。暫くしてドアの開け口をひねってみるとドアが空いた。
「あれ?空いた」準司は言った。
「本当だ」将吾は言った。
そして三人は見つめあった。
「ねぇ勝手に入っていいの?関係者に怒られるかもしれないよ」葵は聞いた。
「まあいいじゃん、ちょっとぐらい。理学部関係で入っただけだって言えばいいじゃないか」準司はちょっと調子にのったように言った。
「それだけの理由で教授が納得するわけないじゃん。掲示板にも書いてたように入室の際は先生の許可を得ないと…」
「ちょっとあなた達一体ここで何をしてるの?」いきなりだった。三人とも「わっ!」と叫んで心臓がとびはねそうだった。
「あっ、あの…私たち怪しい者ではなくてですね、ただ…ヴィジョン教授と会いたいためにここに来てるだけであって…」葵は恐る恐る言った。
「ヴィジョン教授ならここにいないけど。課題のことで今外に出かけてるんだから」見た感じ背は少し低く丸いメガネをかけていてスカートをはいていて上から白衣を着ていた。おそらく二、三回生か先輩の女性だ。それに意外と可愛らしい。
「そっ…そうですか」葵は返事した。
「ここのことで興味あるの?」この女性は聞いた。
「はい、ヴィジョン先生にお目にかかりたかったんで」
準司が答えた。
「うーん、まあでもせっかくここまで来たということもあるし…今回一回だけ中に入っていいよ」
「えっ、いいんですか?」将吾は言った。
「いいよ、ただものに触れたりしないでね。関係者以外立入禁止になってるんだから」この女性は注意した。
「ありがとうございます!」準司はそう挨拶した。
三人はこの女性についてくる形で「失礼します」と言って目的の部屋に入っていった。中は以外と広く実験に使う道具が多かった。3つの部屋があって手前の部屋は少し狭かったが、奥の部屋はかなり広かった。授業をするための机椅子と黒板、端には本棚が置いてあったり、実験器具が置いてあったりなどいろいろあった。
「おー、科学実験室案外広いんだなあ、向こう側が…授業に使う…部屋?」将吾は感動していた。
準司は実験室のギャラリーに気になり出した。一つ一つ眺めているうちに一枚の写真に気づく。
「この人…えっ?」この人がなぜ…準司はもう一度眺めようとした時メガネかけた女性は周りを見て時計を見てから大きな声で三人に呼びかけた。
「はい、観察はそこまで!私のいるところに集まってくれるかな?」将吾と葵はすぐさまやめてメガネをかけた女性に集まった。準司は一枚の写真をもう一回見て戻った。
「時間がきたからこれ以上は無理だけど、ヴィジョン教授の帰宅は夕方以降だから会うことはできないことだけわかっておいてね。いろいろとイナズマ団の追跡についてご多忙だから」イナズマ団の話が出たことに準司はすぐさま質問した。
「ヴィジョン先生と出会う機会はないんですか?」準司は言った。
「ほぼ毎日同じ夕方以降に帰ってくるから出会う機会は難しいかもね」メガネかけた女性はそう言った。
「そんな、出会えないんですか?」準司は焦った。
「そうだね、時間がそうなっちゃう以上どうしようもないからね」準司はがっかりした。ヴィジョン教授と出会うのがそんなに難しいなんて。
「ここに来たのはそれだけ?」メガネの女性は聞いた。
「いえ、ヴィジョン先生に会ってどうしても伝えたいことがありまして、とても重要な話なんです」
準司は冷静に言った。
「重要?そんなに大事な話なの?」メガネの女性は聞いた。
「はい、でもここでは話せません。ヴィジョン先生と直接会って話さなければならないんです」準司は冷静にまた言った。
「それは何?どうしても隠さなければいけない話なの?」メガネの女性はさらに聞いた。
「そうですね…ただ言えることは僕もヴィジョン先生の弟子としてイナズマ団を追い続けたいんです。奴らのしていることに怒りを感じて次々と事件をおこし人を殺め…今度は爆弾の開発を行っているなど…僕はそのことが許せないんです。だから…僕は…どうしてもここに入りたいんです。お願いです。ヴィジョン先生の弟子にさせてください。…お願いします」準司は深々と頭を下げた。
メガネのかけた女性はうーんと腕を組んで考えた。葵と将吾は共に顔を見合わせた。
「後ろの二人も同じ理由でついてきたっていうこと?」
メガネのかけた女性は即座に聞いた。
「えっ…まあ…はい。でも三田原君の意見と同じというのもあってここに来ました」将吾が答えた。
葵もウンウンとうなづき続けた。
「うーん、イナズマ団のことが許せないからという理由で…あなた達もどういう関係なのか知らないけど私たちの研究している内容はどんなものか本当にわかってる?面白半分で研究している訳でもないんだよ。それにイナズマ団のしていることがどんなに恐ろしいか、万が一危険な目に巻き込まれてしまったら取り返しのつかないことになってしまうんだから。他の人達もあなたと一緒なことを言ってたけど、遊び半分でここに来るのなら至急にここから出ていってもらうことになるからね」
メガネのかけた女性は少し怒りそうな口調だった。
「…僕は遊びに来たわけではないんです。奴らを突き止めるためにここに来たんです…」
「じゃあイナズマ団とどういう関係でそう言えるの?何の目的でイナズマ団を突き止めたいの!?」メガネのかけた女性は準司を追い詰めると同時に即座に叱責した。
「そ…それは…」
「答えられないんでしょ!?甘く考えてるようなことでここに来たのならすぐに退出してください。もうこういった話はなかったことに…はい、出口はあっちだからどうぞ」メガネのかけた女性は手で合図した。
準司は下を向いて悔しがった。
「あそこまで怒るって初めて見たなあ」
「でもあの人の言ってることは間違ってないよ。イナズマ団とどういう関係なのかわからないまま入れさせてくれるなんておかしいよ」
大学から外に出て帰り道を歩きながら将吾と葵はそう話していた。準司は将吾と葵の前を歩いて考え事をしながら下を向きながら歩いていた。
「でも準司、あそこまで言われたらもう諦めるしかないよ。いい加減開き直ったらいいのに」葵は悟るようにして言った。
「あのさ…二人にはわからないことだからそう言えるんだよ…俺には俺の課題みたいなものがあって言いたかっただけさ」準司は言った。
「…課題みたいなもの?」
「何それ?」
二人は聞いた。
「そのことについては今のところまだ言えないから。そのうちまた話すよ」
準司はそう言ったらまた前を向いて歩いた。
葵と将吾は顔をあわせてから首をかしげた。
さっき大学で大広間にいた怪しいサングラスのかけた男を准教授は追いかけていた。このサングラスかけた男は周りを見渡しもうダッシュで逃げている。准教授は逃がすまいと追いかけていたが距離がだいぶあいてしまっている。怪しいサングラスの男は一瞬にして姿を消した。マジックを使って姿を消したのだろう。
准教授は開発した機械で追いかけようとしたが…。
「そこまでだ!」と叫んだがもうすでに姿を消していた。
「くそ、逃げられたか」と言って周りを見渡したが准教授はひとまず走り続けた。
準司と将吾と葵は帰り道の分岐点までたどり着いた。
「じゃまた明日」将吾は二人に帰りの挨拶をした。
「うん、またね…準司、あまり気にしない方がいいよ。あんたも何を考えているのか知らないけど」
「…ああ」
「…まあそう落ち込むなよ」
将吾は準司の肩を組みながらそう元気づけた。
「じゃあもう行くよ」葵は言った。
「ああ、じゃあな」将吾は返事した。
「じゃあな」準司もそう返事した。
準司と将吾は左の道に葵は右の道にそれぞれ歩き出していった。
帰り道を歩いている葵は準司の言ったことについて思い出していた。
(…課題?…あいつ一体何が言いたかったんだろう)
葵は首をかしげた。
そう思いながら自宅に帰ろうとしたその時、葵の後ろについてきた一人の怪しい者が指パッチをした。
そして黒い服のきた怪しい集団が銃を構えて飛び出してきた。
「うわあ、えっ?イナズマ団!?」
葵は後ろにすぐ逃げるが囲まれていることに気がついてしまった。
葵は逃げようとするが一周360度囲まれているため逃げられない。
(うわああ…超ヤバいんですけど。っていうかこれ本当に…?ドラマでよく見る女の子を誘拐する奴ってまさかこういう事?こいつらひょっとして同じやり方するってわけ?)
緊張が高まってきた中で葵はそう思った。
「これはこれは美しきお嬢さんよ。今から殺そうなど考えているのかってそうおっしゃってるかと思いますがただ我々はあなたを必要としているだけですからすぐに簡単に殺しませんよ」イナズマ団の一人が話し出した。
(げっ、美しきお嬢さん?完全にバカにしてそう…っていうかあの人に言われるって超何か嫌な感じなんですけど)
葵は思った。
「あなたは確か道保堂大学理学部サイエンス学科にいる一人だと聞きましたがクラブは帰宅部その代わり空手二段の持ち主、性格はやる気のない呑気な性格、名前は浅倉葵という者」もう一人のイナズマ団が説明した。
「えっ?…何で知ってるんですか?」葵はびくびくしながら話しかけた。
(ウソ!?うちのことをここまで知ってるってこいつらマジストーカー?)
葵は声にして出したいぐらい恐怖になった。
「なぜ知ってるか…それは教えられませんね。ボスの命で言われてるので…よし確かにこの人だ。早速実行に取りかかれ」
周りに言うようにこの男は大声で指示した。
(っていうかヤバい…どうしよう。速く逃げないと)
葵がそう思う間もなく背後から黒い色のした棒で頭を殴られてしまった。
「きゃっ!」と悲鳴をあげて葵は気絶をして動かなくなった。
作戦完了!今すぐ運べとイナズマ団がそう言うとすぐさま葵を数人で抱えてイナズマ団が開発した機械の中に入れて元の場所へ戻った。
その直後、准教授が葵がイナズマ団に連れ去られたところを目にした。しまったともう一息早くついていたら助けられたのにとそう思った。
「くそお。早くしないと」准教授は逆戻りしてもうダッシュで走り出した。