盾の石
カタンコトンと歩いている足音が廊下中に響きわたっていた。広い廊下を歩いてからやっと外に出た時、ヴィジョン教授はさっき来た暗証番号がある扉を皆全員が外に出たことを確認するともう一度ガチャンと扉を閉め、自動にその扉がまたガチャンと音がして完全に閉まった。
ヴィジョン教授は無言でその場から立ち去り目的地まで歩いていった。四人もヴィジョン教授の後を追った。
またさっき来た職人さん達が盾の基礎を作っている作業場にたどり着いた。そこで何百度の鉄の塊をカチンコチンと三人の職人さん達が金槌で叩いていた。その側で見守っていた他の職人さん達がずっと立っていてその職人さん達にヴィジョン教授が話しかけた。
「仕事中失礼します、黒川さん」ヴィジョン教授が声をかけるとそのガタイの広い体のがっちりとしていた黒く焼けていた黒川という人はヴィジョン教授に振り向いた。
「おお、これはヴィジョン先生会えて嬉しいですな」黒川はばかでかい力強い声でヴィジョン教授に挨拶した。
「実は黒川さんにお願いがありまして、この学生達四人に盾に必要な石を見せて選ばせてあげたいのですが、石は用意できますか?」ヴィジョン教授も力強い声が入っていた。
「ああ、石ですか?丁度ここに置いてありますよ。あれがそうなんですが」黒川は右手を揃えてその石の方に差した。すると自然と黒川が歩き出してヴィジョン教授に準司達四人も後を追った。石が置いてある机の所の前まで皆が集まると、ヴィジョン教授は四人にこれらの石を紹介するように説明した。並べてあるこれらの石は全てキラキラ輝いている。
「これらが置いてある石が盾を作るための材料にもなっている。ただこれらの石はただの石ではない。叩いてもそんなに壊れない鋼のような石だから丈夫にできている。この中から君たちが選んでもらうことになっている。但し一人一つだけだ。さあ選んでくれ」
「三回生や二回生も同じように石を選んだんですか?」準司は質問した。
「そうだよ。君たち四人がここに入る前にもうすでに選び終わったからね。後の残りが今あるこれらの石だ。石を選び終わった後に盾を作る作業に移ることになっている。では自分がこれだと感じる石を選んでくれ」ヴィジョン教授は説明すると四人はどれを選ぼうか迷い始めた。
「自分の直感に任せればいい。勘でもいいからこれだと思う石を選ぶといい」ヴィジョン教授は四人の背中を少しずつ押していくかのように優しく話した。準司はどれも良い石なのは分かっていたがどれを選ぼうか勘で選ぼうとしても悩ましかった。すると坂本はようやく決めたようだ。
「じゃあ俺、右端の奥の奴を選ぶわ」右端の奥にある石に向かって指を指した。
「ミスター坂本はその石でいいんだな?」ヴィジョン教授は坂本にもう一度聞いた。
「ああ、これでいい。直感で選ぶならあの石が感じがいい」坂本は迷うことはなかった。
「分かった。ミスター坂本はその石を選ばせよう。黒川さんこの石をお願いします」
「分かりました」ヴィジョン教授がお願いすると、黒川はその右端の奥にある石を軍手のままつかみもう一度坂本に向きを変えた。
「すまないがあそこの紙があるだろ?あの紙に名前を書いてからこっちに持ってきて、セロハンテープもこっちに持ってきて貼ってくれないか?」黒川が坂本にお願いすると坂本はイライラしてしょうがないなあという顔をしてのろのろと紙とセロハンテープを取りに行った。その態度に一番腹が立ったのは準司だった。ヴィジョン先生と黒川さんの前であんな態度とるなんてなんて奴だ、場所と時間をわきまえろよな。準司は内心そう思った。
だらだらと紙と黒ペンとセロハンテープを持ってきた坂本は黒川に聞いた。
「名前はどこに書けばいいんすか?」
「あの机あるだろ?あそこに書いたらどうだ?ああ、名前書く時はフルネームで書いてくれ」黒川がそうお願いすると坂本は「分かりました」と返事して、その机に移動した。黒川もその机に石を持ったまま移動して坂本が名前を書いている時に石を横に置いて坂本の横に立った。坂本は『坂本将太』と太字でばかでかく書いた。
「書けました」
「じゃあ名前を書いたその紙をセロハンテープで石に貼ってくれないか?それで誰の石なのかがわかるようになるから」黒川がそうお願いすると坂本ははいと返事してセロハンテープを紙に着けて貼った。
「うん、ありがとう。これで盾を作る段階に入れる。完成まで後一ヶ月ぐらいはするから完成するまで待ってくれよ」黒川が説明すると坂本は会釈を軽くした。
「さあ残り三人さんも直感を信じて選んでくれ」三人はまた並んでいる石に目を向けた。…どれも輝いて見えるしなあ。直感を信じてって…適当に選ぶわけないからなあ。準司はあれこれ考えていて優柔不断になっていてどれを選ぼうかまだ悩んでいたその時、隣にいた葵がようやく決断した。
「ヴィジョン先生、私これに決めます!」葵は左奥から二番目の石を指指して選択した。
「あの石だな?それでいいんだな?」ヴィジョン教授は改めて葵に問いかけた。
「はい、あれが気に入りました」
「そうか、じゃあ名前を書いてセロハンテープで貼ってくれ」葵も坂本のやったようにマジックペンで名前を書いた。そして葵が選んだ石にセロハンテープで貼りつけた。
黒川は軍手のまま葵の選んだ石を持ち別の場所に移動した。
「先生、僕もこの石に決めました!」次は将吾が石を選ぶことができた。手前の角がほとんどない少し大きくて丸い石だ。
「丸い石じゃないか。それでいいんだな?」ヴィジョン教授は将吾にもう一度聞いた。
「はい、これに決めました」将吾は迷いはなかった。なんとなく丸い形が気に入ったようだ。
「分かった、じゃあ君も紙に名前を書いてセロハンテープで貼ってくれ」ヴィジョン教授は説明すると将吾は「はい」と返事をした。坂本や葵がやっていたように将吾も紙に太字で名前を書いてセロハンテープで自分の選んだ石に貼った。黒川は将吾の選んだ石を軍手で持ち坂本が選んだ石と葵の選んだ石が置いてある所に持っていった。
「さあ、ミスター三田原、後は君だけだ。残った石を選びなさい」準司はまだ迷いがあった。直感で選びたくても自分の選ぶべき石はどれか見つけられなかった。自分の性格や価値観、自分に合った物全てを引き出すとしたらどれが自分の石なんだ?
自分に近い形を探すとしたら、一体どれだ?
準司は右手で念力の技を出しているように並んでいる石に向かって感じとってみた。どこかに俺の価値観に合う石があるはずだ。感じろ…感じろ…。
手でジーッと集中していた時準司のしている様子を坂本はプスッと笑いがこぼれてしまった。
「おーい、三田原、そんなことしてまで石を探してんのか?お前どこまで馬鹿なんだ?」坂本は準司を馬鹿にした。
「まあ待て、そんなにすぐに決断できないことも三回生や二回生の中にもいたからそんなに責めなくていい。じっくり時間を待っていなさい」ヴィジョン教授は坂本を説得させた。坂本は早く決められないのかとイライラしていたが、暇な時間を埋めようと周りをあちこち見ていた。
(俺の性格は冷静で人には優しく助ける所があるって周りの先生や過去の友人に言われたことがある。他にも決めたらすぐに行動するとか決断ができるとかそんなことを言われたな。冷静にすぐに決断できる…その象徴の石は…うん?何かこの石が近いな)
準司はふっと止まった。何かこの石に何かを感じていた。しかも強く感じる。…間違いない、この石を選ぼう。
「ヴィジョン先生、目の前のこの石を選びます」ようやく準司は決断した。見えるように準司はヴィジョン教授に向きを変え選んだ石に向かって指を指した。
「ようやく決断できたか?これでいいんだな?」ヴィジョン教授は再度準司に聞いた。
「はい、迷いはありません」準司は自信が漲ってきた。この石と何らかの繋がりを強く感じる。
「よし、では紙にフルネームを書いてセロハンテープで君の選んだ石に貼ってくれ」ヴィジョン教授がそう指示すると準司は「分かりました」と返事した。
ヴィジョン教授に言われた通りに準司は名前を書いて石に貼ると黒川は軍手をはめたまま準司の石を持ち上げ三人の選んだ石の所に持っていった。
「これで後は盾の作成に取り掛かるだけだ。だいたい一ヶ月ぐらいはかかるだろう。それぐらいは目安にしておいてくれ。じゃあ石を選べたことだし、二回生と三回生のいるところに行こう。そこで君たちも訓練を経験してもらう」
「訓練ですか?」ヴィジョン教授の説明に将吾が聞いた。
「ああ、イナズマ団と戦える訓練のことだ。君たちはまだ石を選んだばかりだから別の盾を使って訓練や実験を行う。ではまた私についてきてくれ。案内する。黒川さん、後は宜しくお願いします」ヴィジョン教授が黒川にそうお願いすると「分かりました」と黒川は返事した。
そして五人は別の場所に行くようにその場所を後にした。
「さっき滝島さんについていくようにと二回生と三回生に言っただろ?その場所まで私が案内する」ヴィジョン教授は近道するように外に出て目的の場所まで歩いた。四人も後を追うように歩いた。




