知られていない秘密の場所
それから一週間後の土曜日。準司は先週の時間と同じように自転車で大学に向かった。大学に着いた時、葵と将吾とまた偶然に会えるかと思ったが今日はそうでもなかった。周りを見渡してもあまり人がいない。葵と将吾は先に着いたのかなと準司は早歩きしながら思い研究室に急いだ。
研究室の前まで行くと中から騒がしい声が聞こえてきた。研究員達がもう集まっているのだろう。準司は普通に中へ入っていくと白衣を着ていない私服の格好でいる研究員達それぞれが談笑していた。
奥を見ると葵と将吾にあの坂本も席に着いて三人で何か話している。
準司は三人の所まで行き「押忍」と返事した。葵と将吾も「お疲れ」と手を上げて返事を返した。
「みんな、今日は早く着いたんだな」準司は三人に聞いた。
「予定より早く着いた方がいいと思ってさ。準司のワクワクよりもこっちも高まってきたよ」将吾もいつの間にかこれからする事に興味を抱いている。
「聞いた話、これからある場所に移動するみたいだから心の準備はしないとね。そこで盾の開発を見学するんだって」葵は準司に詳しく説明した。
「なるほど。盾の作成を見られるってわけか」準司は感心した。
「それだけじゃないわ。開発の次に試験と訓練も見学することになってるみたいよ。おそらく全部合わせると夕方辺りまでかかるだろうから帰りは夜になるかもね」葵はまた詳しく説明した。
「今日はでも大仕事というか何だかすごいことするんじゃないか?盾の開発を見学するって責任感重くなりそうだよな」将吾は先のことを想像した。
「まあそうだよな。ヴィジョン先生の開発を見学するっていうのもあるし、多少緊張はするよな」準司は少し緊張感は出てきた。
「おめえら意外と楽しそうに言うんだな?そんだけ見学に夢中になってるってか?」端っこに座っていた坂本は調子乗って馬鹿にしたように言った。
「あのさ、ここに来た以上盾について興味ぐらい湧くだろ?そう言ってるお前は何なのさ?」準司は言い返した。
「別にどうだっていいだろ?盾さえ手に入ればイナズマ団と戦えるってわけだ。開発とか研究とかそんなの片隅に置けばいいんだよ。俺がやりてえのはイナズマ団を全員捕まえてやることだ。それが出来れば盾の素晴らしさを世に知らしめることができるってわけだ」坂本は足を組ながら格好つけて話した。
「確かにそれが目標だけどよ、まず盾を作っている人達に感謝だろ?お前感謝もなしに盾を欲しがっているとでも言うのかよ?」準司は熱くなってきた。
「綺麗ごと言うの好きなんだな三田原は。お前は真面目だからそう熱く言ってんのかよ。もっと楽にした方がいいぜ」坂本が言ったことに準司は少しキレそうになった。怒った顔になりそうだったが、ここは自分で押さえつけた。
「もうそろそろ来ないかな?ヴィジョン先生は」将吾は全員に聞いた。
「午後1時からだからもう来るはずなんだけどね」葵は時計を見て言った。
「でも来ねえよな?」坂本が腕時計を見て言った。
「あれ?この足音まさか、来たんじゃない?ヴィジョン先生」葵はドアの方を向いてじっと見つめた。準司は後ろを振り向いてドアの方に視線を合わせた。
だんだんと足音が近づいている。コトンコトンと廊下から聞こえてくると研究員達もドアの方を向いた。
すると研究員達はそれぞれの席に座り始めヴィジョン教授の到着を待っていると、工藤が中へ入ってきて「はーい、席に着いて下さい」と言って残りの研究員達が外から入ってくると着席していった。準司も葵の隣に座り、ヴィジョン教授の到着を待った。
またコトンコトンと足音が聞こえてきた。中へ入ってきたのはヴィジョン教授本人である。
ヴィジョン教授が教卓に立つと皆はシーンと静まり返った。
「いよいよ出発の知らせを言わせていただくが、いつもの忠告と伝言を言う。一回生諸君は今回が初めてだろうからしっかりと聞いておくように」ヴィジョン教授は厳しめに言った。
「これから移動するが敵に見つからないようにするためにどこに行くのかは皆に知らせはしない。変わりに目隠しとヘッドフォンをつけて何台も止まっているがバスで移動してもらう。バスもどこに止めてあるかは敵に見つからないようにするためにまた別の場所に止めてあるからそこまで行くことだ。いいな?時間もきたからすぐに移動する。はい、例のあそこまで行ってくれ。ミス工藤、皆を目的の場所まで案内してやってくれ」ヴィジョン教授がそう言うと工藤は直ぐ様「はい!」と言ってすっと立った。
「はい、私が先頭に立って歩くから皆さんは私についてきて下さい。私服の格好のまま慎重に行きますので気をつけて歩いてください。じゃあ今から行きます!」工藤が説明すると研究員達も席から立って三回生は直ぐ様工藤の後ろを並んだ。続いて二回生はだらだらとしながら三回生の後ろに続いた。
準司達一回生はタイミングをはかって二回生の後ろに並んで進んでいった。
暫く歩いていると駐車場のさらに奧にあるバスの駐車場があり、バスが何台も止まっていた。大きさは様々だが、大きいバスは三回生が乗る用、それより少し小さいバスは二回生と一回生が乗ることになっている。
ヴィジョン教授が考えたのだろう、私服でバスに乗ることでどのクラブやサークルが乗っているのかどの人達が乗っているのかを相手から見て分からないようにして隠れながら移動するということなのだろう。三回生と二回生は慣れているため事情は分かってはいたが、準司達四人は初めて拝見している。
工藤はそれぞれ乗る場所を三回生から乗っていった。そして三回生のリーダー達はヘッドフォンと目隠しを一人ずつ渡していきそれをはめていった。
二回生が乗るバスのところにも同じヘッドフォンと目隠しを渡し皆全員はめていった。
準司達四人が乗るバスは少し小さいバスだったが、二回生の人達と同じく乗車した。準司はバスの後ろの後部座席に座り、隣に葵と座ることにした。そして前の座席には将吾と坂本が座った。そして工藤が準司達の乗っているバスに行きヘッドフォンと目隠しを渡しに乗車した。
「はい、ここにいる皆さんも目隠しとヘッドフォンをつけて下さい!今から一人ずつ渡していくんでお願いします!」工藤がそう大声で言って一人ずつその2つを渡していった。
「あっ、それから窓際に座っている人はカーテンを閉めて下さい!場所を知ってはいけないのでこれもヴィジョン先生から忠告されてますので外を覗いたりしてふざけることはやめてくださいね。それをした場合退部処分されることもありますので気をつけて下さい!それと、スマホの電源を切って下さい。スマホで写真を撮ることも頑なに禁止されてるのでこれも無断で撮影したりしたら退部処分にされますので気をつけて下さい!」工藤が忠告している間窓のカーテン全て完全に閉めた。葵も窓際に座っているので言われた通りに閉めた。バスに乗っている学生達皆は素直に言うことを聞いてスマホの電源を切って鞄の中にしまいこんだ。準司や葵、将吾もその通りに従ってスマホを切って鞄の中にしまいこんだ。坂本も珍しく素直に従って電源を切って鞄にしまいこんだ。
目隠しとヘッドフォンが準司達まで回ってきた。
「これをはめていけばいいんだよな?」準司は葵に聞いた。
「話聞いてた?この二つを取り付けてしっかりと固定するって言ってたでしょ?」葵は準司を少し馬鹿にしたように言った。
「確認して言っただけだよ。最初から話を聞いてなかったらそんなこと言わないよ」準司は葵にそう説明した。
二回生を見ると全員が二つを取り付けてしっかりと固定していた。坂本も何故か真面目になって伊達メガネを外して目隠しをしその上ヘッドフォンを装着して完全に固定した。将吾も二つを取り付けてしっかりと固定していた。葵も続いて二つを取り付けてしっかりと固定した。準司も二つを取り付けてしっかりと固定した。全く聞こえない真空の状態だった。ただかすかな声と音が聞こえるぐらいだった。
「全部取り付けられたらそのまま目的地に着くまで動かないように大人しくしておいて下さい!窓から覗き見たりしたらさっき言ったように退部処分されるので、必ず固定したまま何も動かないようにしてください!では今から出発しますのでそのまま動かないで下さい!」工藤が大声で注意を説明した後、三回生の乗っている大型バスに乗るためにドアを閉めてから急ぎ足で走って行った。
それからおよそ五分後にようやくバスが動き始めた。バスはゆっくりと動いた後に徐々に速くなっていった。
出発してから一時間はかかった。一体どこを走っているんだろう?しかもみんなはどうしているんだろう?おそらく固定したまま全く動かないようにしなければならないならば、そのまま寝ているしかできないんじゃ?起きたまま色々と頭の中で考えながら準司は思った。隣の葵はどうしているんだろう?寝てるのかな?将吾も坂本もじっとしているんだろうか?将吾は言うことをしっかり聞く人だから問題はないと思うが、坂本が大人しくしているところなど見たことがないなあ。まさかこっそりとスマホを取り出してゲームをしているんじゃないだろうか?そんなことしてたら絶対に退部処分されるぞ。逆のことして調子乗ってるかもしれないしどうだろう?
坂本がふざけたことをしてるんじゃないかと気になってきて目隠しを外そうかとふと思ったが外したら自分が悪いことしたみたいなことになるのも嫌だしとりあえず大人しく寝とこっか。
坂本のことを考えるのもやめるようにして準司は腕を組ながら寝ることにした。
準司が寝落ちしてからどれぐらい経ったのだろうか?準司は目を覚ました。目を覚ました直後男性のアナウンスが流れた。
「長い時間お疲れ様でした。まもなく目的地に着きます。皆様もお忘れものがないよう今一度お確かめください。到着しましたら目隠しとヘッドフォンの取り外しを言いますのでそれまでお待ちください」かなり大きい声だった。ヘッドフォンしてもかすかに聞こえるぐらいだ。どこに着いたのか分からないままバスの中でじーっと居座っていたので暇潰しになれたのか準司は分からなかった。すると隣に座っていた葵が準司に手をとんとんと叩いて聞いた。
「準司、起きてる?」葵は聞いた。
「ああ、うん。さっき寝てたな。葵は?」準司も聞いた。
「ずーっと寝てたよ。夜睡眠取れなくなるかもね」葵は背伸びをしたのだろう。うーんと言っているのが聞こえた。
「将吾、聞こえる?寝てる?」葵は後部座席から前に出て将吾に聞こえるようにして聞いた。
「おっ、葵か?めっちゃ寝てたよ。たどり着くまで何してたらいいか分かんないんだよな」将吾も背筋を伸ばしながらあくびをした。
「準司、今どうしてる?」将吾は後ろを向いて準司に聞こえるようにして聞いた。
「将吾、俺もついさっき寝てたさ。俺も何してたらいいか分からなかった」準司は前かがみになって将吾に聞こえるように言った。
「…坂本、お前まさか何か余計なことしてたのか?」将吾は右に向いて目隠ししながら聞いた。
「ああ?何も余計なことしてねえよ。まさか何か遊んでたとでも言うのかよ?」坂本は左に向いて将吾に聞いてるのが聞こえた。
「お前、ふざけて窓を見たのか?」将吾は疑った。
「うるせえ奴だな。何もしてないっつうの。俺がそんなことしてたら退部処分されるのは百も承知だよ」坂本は自信持って言った。
「だったらいいけどな」将吾は諦めて言った。
バスがようやく止まった。駐車場に停めるために後ろ向きに入れたのが分かる。
「はーい、大変長らくお待たせ致しました。目的地に到着しました。それでは目隠しとヘッドフォンを取り外しても構いません。忘れ物には気をつけて下さい!では前の人から降りて行って下さい!」男性のアナウンスがそう言うと皆全員目隠しとヘッドフォンを取り外した。ようやく皆の姿を見ることができた。隣にいた葵はまた背伸びしていた。将吾と坂本は降りる準備ができたばかりだった。前の二回生が降りて行くとようやく準司達も席から立って前のドアに向かって歩き出した。
バスからようやく降りるとまるで修学旅行に来たみたいな雰囲気だった。奧に三回生が並んでいて、続いて二回生が順番に並んでいた。一回生四人は一番後ろに並んで待っていた。するとまた工藤先輩が指示を出した。
「はーい、皆さん大変お疲れだと思いますけどこの建物の中に入って行きますので私達に着いてきて下さい!移動した後にヴィジョン先生から話がありますのでよーく聞いておくようにしてください!では中に入りまーす!」大きな扉を開けてから三回生が先に入って行った。ぞろぞろとゆっくりしたペースで前に入って行くと、中の廊下はかなり広かった。まるで国立博物館に来たようなそんな雰囲気だった。工藤先輩が百八十度回って向きを変えると残りの三回生達が工藤先輩と並んで学校の先生になったように列を作った。そして横からヴィジョン教授が現れ片隅に並んでこっちを向いて立っていた。
「はい、ここがヴィジョン先生を始め多くの開発者や研究者達が盾を作っている場所になります。見学する時は順番がありますのでヴィジョン先生の指示に従って動くようにしてください。それじゃあここからヴィジョン先生の説明がありますので話をよく聞いて下さい。じゃあヴィジョン先生、お願いします」工藤先輩がそう説明すると工藤先輩達三回生は端っこに移動し、ヴィジョン教授は真ん中に来て立った。入れ換えをしたようになった。
「皆諸君、長旅は疲れたかな?すまないな、これもイナズマ団に簡単に見つからないようにするための作戦だからバスの移動もああいう目隠しとヘッドフォンをつけてもらう必要があった。ここから、皆に見てほしいことがこの先にある。盾というシールドを開発しているのもここであり、開発したシールドの試験を行ったり、実験を行ったりしているのもここで行っている。厳しくシールドを研究開発を行っているからじっくりと観察してくれるといい。…それともう一つ話しておかなければいけないことがあるのだが、警察もこの日に見学に来る予定にしている。もうそろそろしたらここに来るだろうから挨拶はきちんとするようにはしておきなさい。イナズマ団確保のためにもここに視察するつもりだそうだからそのつもりでいろ。…もうそろそろ来たようだな」
ヴィジョン教授が話している間にさっき通ってきた広い通路から警察の何人かがようやく来たようだ。皆全員ドアの方へ振り向き警察達が入って来るのをじーっと眺めていた。




