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戒告の盾  作者: ヨシ
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空いたままの館

第一章 空いたままの館


 使われなくなったこの建物は、数十年前にある会社の経営難で倒産してから誰もいない雰囲気になっている。周りも森で生い茂っていて地方にして周りは人がたびたび見かけるほどしかいなく、ただこの建物のことを知っているのはここの地元の人達しかいない。何十年も前にバブルがはじける前まで活気に満ち溢れていた工業の一つだったがバブルがはじけてこの工場も倒産に追い込まれた過去があった。それから誰もこの建物を使う人はいなく、知っているとしたらここの工場の近所でもある戦後高度成長期に立ち上げた会社の従業員たちもしくは立ち上げた時の元従業員の人たちしか知らない。

この建物はもちろんのこと誰も使っていないため、錆が所々ついている。立ち上げた当時の面影と変わらずただ中は何にもなく空だ。窓ガラスやドアもそのまま当時のままで何も変えられていない。それなのになぜかこの建物は今も建材している。

 誰もいないはずのこの建物の中に何人か黒い服の着た人たちが立入禁止を無視して中に入り何か作戦会議みたいなことをしている。

 十数人ぐらいの人数だろう、謎めいたなんだか不良の集まりのように怖そうなどくろの仮面をつけた人達男女がこの館に集まってきて時間通りに来ている。建物の中の二階一室の部屋を借りてその数十人全員が周りを見渡しながらドアを閉めて本題を誰かが話し始めた。

「これで全員か?」一人の男が言った。

「はい、もうじきボスが来る予定です」近くにいた男が返した。

「この人数だけでも団員全員に後で報告できますからね、ボスもそれをお望みでしょうし」ドアの近くにいた男もそう言った。

「ボスの機嫌を損なうわけにもいかないからな。気を付けて動けよ」

 そう言っている間もないその時、ある背の高い若い男が二階に上がってくるのが見えた。コトンコトンと足音がだんだんでかくなるとこちらに向かってくるのが分かった。皆はドアの方に目が自然と向いた。

 ドアが開いた。がっちりとした体格に身長が高く茶髪で鼻の高いイケメンの男が部屋に入ってきた。黒い上着でマジシャンみたいな恰好の良さそうなすらりとした姿である。入ってきたときの皆の様子は気を引き締めちょっとした緊張もありながらこのボスにおじぎをした。「どうだ?例のもの持ってきたか?」全員に向かって言い放った。

「はい、もちろんのことここにあります」「出せ」「あ、はい」

 ボスの早い反応に一人の部下が少し焦りながら黒い鞄を机の上に置き中から取り出した。

 

 その黒い集団がその建物にいることをまだわからずただ二階に明かりがついているのを数メートル離れた会社で残業している男がちょうど気づいた。最初はただの管理している人が点検にでもしに来たのだろうと思っていたが、待てよと二度見した。管理人ならついさっきまで点検しに来ているところを俺は見たのだ、それを最後に鍵を閉めて出て行ったところを見たはずだ。その後真っ暗になったというのに、管理している人など見かけたことないのに…珍しいことだ、誰かいるようだ。一体この時間になんの用だ?…まさか不良の若者が悪戯で何か遊びにでもきたというのか?ここに入ってきてはいけないと書かれているというのに、ついに無視して入ってきたのか…。

 ちょっと怒ったこの従業員は、パソコンを閉じて鞄にしまい込んで外に出てスマホのライトを照らしながらその館まで一人で向かった。

 ほとんどの周りが漆黒の暗闇だったがスマホの明かりを頼りに何も考えることなくただ明かりのついている部屋のところまで歩いていくしか考えずに歩いた。若者の悪戯でまた何かやっているんだろう、会社のこの男はカンカンになっているまでではないがそう冷静になりながら注意しに行こうとしていた。二度とここへ入ってはいけないと俺からも注意しておかなければ。そう思いながら建物の近くまで歩きようやくたどり着いた時、なぜか門は開いている。あれ、管理人は閉めて帰ったんじゃないのか、一回首を傾げて門を横に恐る恐る引いた。なぜだ、じゃあ管理人があそこの部屋に入っているというのか?まだだれかが中に入っているということなのか?おかしいなあ、全員が出て鍵を閉めて帰っていたところを見たはずなのに。

 少し疑う気持ちがよぎった。一体どうなっているんだ?じゃああそこの部屋に誰が…。

 周りに誰もいないことを確認したあとこの男は恐る恐る中へと入っていった。中にいる人に気づかれないように慎重にして建物の中へと入った。

 一階のフロアに立ってから上の階から声が聞こえているのがわかる。やっぱり誰かがいや、数人がいることが分かった。一体誰だ、数人でここで何してるんだ?こんな暗い中に一体…。慎重にゆっくりと階段を登っていくと声がだんだんと大きくなってきている。見つからないように工夫しながらどんなことをしているのかを慎重に眺めてみた。

 「神威様、お茶でもいかがいたしましょうか」一人の男がボスに聞いていた。

「おい、かずと、ここはただの空き地だろ?なんでこんなところでお茶を飲まなきゃならないんだ?」ボスらしき人がわざと低い声で怖い雰囲気を演じるかのようにわざとそう話した。

「申し訳ございません神威様」潔く恐る恐るとお辞儀をしながら誤った。

「神威様、これをこの導線につなげればあとは持っていける段階にできます」この女性が言った。

「いいだろ、これで準備が出揃ったじゃないか。明日からでも動けるんでは」この茶髪のボスは言った。「はい、やはりここにはまだ使える道具があってよかったですね。これでいつでも動けるのではないかと」別の男が言った。

「よし、では皆それぞれ侵入のルートを守るように。各自やることはわかっているな、その通りに動け、万が一誰かに見つかったとしてもその場で銃で脅せばいい、傷つけてもいいそこから逃走はできるようにしろ、いいな?」皆ははい!と大きく返事をしていた。そこを聞いていた会社員の男は階段のところで隠れていた。何?銃で脅せばいい?この人ら一体何を考えているんだ?いや、こいつら危ない連中じゃないか?もしそれが本当なら完全にやばい。

ここからどうするべきだ。侵入しろと言っているのは泥棒をしろとでもいうのか、それに逃走はできるようにしろとも言っていたよな?やはりこいつら、泥棒の連中か?

 だったら、すぐに警察に電話入れたほうがいい、でもこれだけの情報では有力な情報がつかめられない。もう少し聞き込みをしよう、スマホで盗聴をするもいいだろう。

 会社員の男はスマホの盗聴器のアプリを開いて盗聴を図った。それを奴らに見えないようにして手を差し伸べるようにしてかざした。

「あの大学の教授は今何している?あの有名な研究者のことだ」椅子に座り込んでそばにいた男に聞いた。

「有名といいますと、ヴィジョン教授のことでしょうか」そう返した。

「そうだ、あいつは俺と縁を切るように言われたな、もうお前の友人でもないと。…もうあいつのそばには近づけないとな。近づいたらある意味対策をとると…そんなこと言っていたが今あのヴィジョンは何してる?」神威というこのボスは続けて近くの配下の男に聞いた。

「聞くところによれば盾の研究を続けているとのことが。脅威から身を守れるための強靭な盾が必要であると」

「ほう、強靭な盾…ヴィジョン、笑わせてくれるなあ、その盾というのは誰に向けて盾をつこうと?」神威は足を組みながら聞いた。

「我々であり、神威様でありましょう」部下の男は間を開けずにそう即答した。

「…宣戦布告と言っていいだろうな。この俺に対してどう勝とうと考えているんだ?ヴィジョンは間違った選択をしてしまったようだ。強靭な盾?どう止めようってんだ?」

 ボスの神威は自分たちがつくった兵器を見ながらそう余裕な表情で話した。

「神威様、もしそのヴィジョンが盾の開発を続けようとなるなら争いは免れませんな。我々の動きに邪魔をはかる天敵でしょう、一刻も早くに動かねばならないのでは?」もう一人の部下の男がボスにそうゆっくりと話した。おそらくこの男がメンバーのナンバー二の男だろう、体格が広くある意味強面な顔つきだ。

「ほう、すぐにでも始末をはかれとそう言いたいか赤田。慎重に事をはかるが筋というものだろう。焦る必要もないぞ、今は時を重ねる時だと言わなかったか?赤田」

「申し訳ありません」

赤田というこの男は同時に頭を下げた。自分の考えをそっとしまい込むように切り替えた。

「では神威様、時間を稼いだ方がよいと?」

「それ以外になんの方法がある?」神威はナンバー三の男の意見にそうかわした。

「いいえ、ただ聞いたまででございます」

「ならばそうだまっていろ」

「はい」

神威は座りなおしてまた前を向きなおし、足を組んだ。

「ヴィジョンは道保堂大学の研究所に今もいるのか?竜龐」近くにいた竜龐という男に聞いた。

「はい、理工学部で授業しているかと」

「あいつらしい仕事だな、理屈っぽく考えるくせは必然なんだろうな。かつて俺も理学部でいてた時期があったがあいつの熱心さはすごかったものだ。あのどはまりは気に食わねえな」神威は足組んだまま続けて話した。「学生時代にあいつと話したことがあるが、新たな機械を使って人の役に立つものを作ろうと。あいつはロボット開発に熱心だったのもあって生活に役立てることをしたいとな、熱がすごかったぜあいつのトークは。それだけ熱心ならあいつの仕事は安泰か…あやつめ、そこから俺とは筋違いになったってわけか…竜龐、後それどれくらいで完成する?」

「はい、後二十分かと」

「長いな、十分でできないのか」

「なるべく急ぎますが、その時間までかかるかと」

「仕方あるまいな」数十人がその爆弾の設置に急いでいる。すばやい手さばきでカチカチと組み立てている。


隠れていた残業していた男はスマホをかざしながら続けて情報収集している。そのヴィジョン教授とやらに縁を切られたからこの連中と危険なことをしているとても言うのか?やっぱりこいつら危ない人たちなんだろう。あの作業はまさか、すぐに警察呼ばなければ。

そして気づかれないように階段を降りながらスマホで二階の様子を録画していたその時だった。

「誰だ!」ドアから一人の女子かドクロの仮面つけた一人がいきなり銃を放った。男はあわてて「うわっ!」と階段から転げ落ちた。一階まで転げ落ちてしまい、逃げようと起き上がったが遅かった。敵が銃を構えて周りを取り囲んだのだ。男はその場で固まり敵の連中を見据えた。

「何事だ」上から声がした。ようやくボス自らが出てきた。神威というボスはゆっくりと中から出てきて手すりをゆっくりと右手を添えた。

男は初めてそのボスを見た。

「ほう、我々の話に興味を持ってここにきてくれたのか、こんな暗い時間だというのに関係者以外誰も入ってはいけないという警告は確か言ってなかったか?…そうかそうだったな言ってなかったようだったな」

「お前たちは一体何者かは知らないが二階に明かりがついてたところを俺は見たんだ。ここは立ち入り禁止だというのにお前たちこそここで何してる?下から聞いてたさ、ああ聞いてたとも何か危険なものを作ろうとしてるんだろ?爆弾か?警察に言うのは確かなことだ…」

「熱を入れるのはやまやまだが悪いなこちらもそういう訳には行かないんだよ」神威は余裕な表情しながらゆっくりと話した。

「どっちが早く決着がつくと思う?もしあんたが警察を呼ぶ前に撃たれてしまえばいっかんの終わりだ。そこでだ、命おしけりゃそのスマホでとった動画を消し、警察に通報しないことだ。そうすれば命だけは助けてやろう。それでも正義持って歯向かうならば」そう話しているその時一人の仮面男が銃を放った。

「こういうことだ、どうだ、何も難しいことじゃないだろう?」仮面のした連中は銃を構えたままだ。従業員の男は言われた通りにするかそれとも逃げるか固まったままだ。一体どうすれば…。

「神威様、こやつを逃がしたら後で我々のことを知らされるのでは、今一度ここで片付けねばならぬかと」ボスの近くにいた部下がそういうと皆一斉に銃を構えた。「その通りです、神威様そうした方がいいかと思います」

一体この状況をどうすればいいか頭が回らない。手も足も出ない中でどうすればいい?俺が携帯で電話すれば撃たれるのは必然だ。せっかくの情報もすべて…いやそれどころかこいつら本気で殺ってくるんだろう。大変だ逃げ道がない。

「そうだったな、情報を簡単に削除してくれないのも当然だったな。残念だったな客人、おしまいにしてさしあげよう」

急に変わったことから従業員の男も顔色が変わった。

うわああああっと悲鳴をあげた瞬間に銃声が響いた。


銃で撃たれたと知ったかのように何十キロメートル離れたところに一人の大学生が目を覚ました。

この大学生の名は三田原準司。


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