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菜緒と莉久  作者: 雪尾ハク
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菜緒と莉久1

 「私、莉久ちゃんのことが好きよ。もしよかったら……私の恋人になってくれないかしら?」

 目の前にいる、ずっと憧れていた美女から、告白されている。周りの知り合いに言わせれば、「嬉しくないわけがない」と狂喜乱舞しそうな状況にも関わらず。告白された当の私は、顔面蒼白の状態になっていた。


 菜緒ちゃんは年上でキレイいい匂いがする、まさに女神のようなお姉さんだ。頭の回転も早く、気配り上手で仕事もデキる。

 平凡な人生を送ってきた私からすれば、まさに「別世界で生きていそうな人」。

恋愛の相手にも不自由していないだろうに、どうしてこんな状況になっているのか。


 私は昔から恋愛に興味がなく、これから先も誰かと恋愛関係になることはないだろうと思っていた。

 恋愛には「付き合った後にするキスや肉体的接触」が必ずセットでついてくるものだったからだ。何で必要なんだろうとしか思えなかった。

 周りの人たちから言わせれば、「何で必要ないのかわからない」くらい当たり前に恋愛とセットになっている。


 私にとって恋愛やキス以上のことは「嫌いな食べ物」と同じだった。食べたくない、だから積極的に食べようとしないし、メニューにあれば注文しない。


 なんで「嫌いな食べ物」は食べなくても気にされないのに、「恋愛」はしないでいるとおかしいんだろう。何で好きって気持ちだけではダメなんだろう。自分は、人として何か欠けているんだろうか。


 私は高校のときに両想いだった相手に、正直に「付き合ってもキスやそれ以上のことはしたくない」と伝えたことがあった。


 相手は中学生の頃からの長い付き合いで、高校は別になってからもしょっちゅう遊ぶくらい、すごく気が合う友達だった。私にとって、彼女となら心の結びつきだけでも両想いが成立するかもしれない、という希望があったからだ。


 そうしたら相手はひどく落胆した表情になり、「冗談だよね?」と言った。

「莉久も私と同じ気持ちだと思ってたのに……ただの友達としてしか好きじゃないってこと?」

「違うよ、好きだよ!友達じゃなくて、恋愛の意味で好きだと思ってるよ」

「だったら、何で私とキスしたくないの?それって私のこと友達以上に思えないから、したいと思わないんでしょ?好きならしたいって思うのが普通じゃん。」


 したいと思うのが普通。だから、したいと思えない私の「好き」は恋愛の好きじゃない。私の「好き」は、好意として扱ってすらもらえない。


「莉久の好きは、友達の好きと変わらないよ。長い付き合いだし、両想いだって自惚れちゃってバカみたい……」

 それ以来、彼女とは連絡をとらなくなった。


 自分の考え方を変えれば、キス以上のこともしたいと思えるんだろうか。そう思える相手に、出会っていないだけなんだろうか。そう思って、恋愛心理学の本をひたすら読みあさった。それでも、どうしても特別に好きだと思える相手はできても、キスやそれ以上のことはしたいと思えることはなかった。

 

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