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アンチテーゼ/アンライブ  作者: 名無名無
第一章 旅の幕開け
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ギルド総本山「スカイジャンクション」

 翌朝。アンナは気持ち悪さと頭痛に苦しみながら目が覚めた。


「うぅ......。最悪......」


 二日酔いというほど酷くはないが、なぜか体調が優れない。

 昨夜はそんなにお酒を飲んでいないはずだが、なぜこんなに体調が悪いのか。

 それに一つ、起きてからしばらくして気づいたことがある。


「......()()()?」


 今自分がいるのは、ネイさんに貸し与えられた部屋のベッドの上。深々とお布団にくるまって、枕に頭を置いてぐっすりと眠っていたのである。

 人間にとっては当たり前のことでも、アンナにとってこれは異常だった。


「なんでウチ......。寝て......」


 眠れない体質である自分が寝ていたという事実に驚く。


(それに夢も見てたような......)



 起きたばかりに夢を振り返ると、少しくらいなら夢の内容を覚えられる。もちろん夢をうっすらと覚えている時に、記憶しようとする意思を持って振り返るのが大事だ。


 人間なら「今朝の夢、なんだっけ」という経験は誰もがしたであろう。そしてそれをもう一度思い返そうと、起きて数時間後にふと思い振り返ろうとしたこともあるだろう。もちろん数時間たてば覚えていないことの方が多い。


 生前に一度、夢の不可思議な仕組みが気になり、目が覚めた後にメモをとって記憶したり、どんな夢を見ていたのか目覚めてすぐに振り返って実験したことがある。すると何故か少しだけなら覚えていられるのだ。


 例えば「トイレに行った夢」の詳細は覚えていなくても、「夢でトイレに行った」ことを覚えることはできる。そういったように抽象的な事柄ならなんとか記憶できる。



 では今回のアンナの夢とは何だろうか。


「確か......。暗いとこに立ってたような......」


 自分の視点では、暗くて何もないところにいて、何故か裸だった。

 その時何を思ったかまでは記憶していないが、今振り返って思うとなんとも不思議で変な夢なのだろうか。


「......頭が痛い」


 これはお酒が悪いのだろうか。寝酒の影響で体調がすぐれない可能性は十分にある。

 しかしアンナの場合、色々と原因がありそうだ。不眠の人間が急に眠ったら、体調だって変に乱れて少しは悪くなるだろう。


「おいネイ、大丈夫か?」

「ぶうぅぅえぇ......。や、やめて......」


「ネイさん?」


 扉の向こう側からデリバーの声とネイさんのうめき声が聞こえてくる。


 気になって彼らのいる部屋に行くと、床にぶっ倒れているネイさんを、デリバーが少し揺さぶったり、どこかに運ぼうとして体を持ち上げたりと忙しそうにしていた。


 デリバーがネイさんを動かすたびに「ゔぅおおぉえぇ」とうめき声が聞こえてくる。

 しかもネイさんの服をよく見ると、昨日の夜に外出した時と全く一緒だ。


 デリバーはいつ起きたのかわからないが、何故かこの街に来た時の服を着ている。あれは仕事や旅用の服のはずだ。


 目の前で繰り広げられる光景を見て「何がどうなってんの?」と独り言を呟くと、デリバーがアンナに気づいた。


「おはようアンナ。いい夢見れたか?」


「お、おはよゔアンナぢゃ......」


 こちらに向かって挨拶をする二人。ネイさんが相当つらそうで見てられない。


「お前はここで大人しくな」


 デリバーがネイさんをソファに運び横に寝かせる。そして薬の入った瓶をネイさんのそばにおき、「水も置いてく。自分で飲めよ」と言ってネイさんを後にする。


「おはよう二人とも」


 こちらもとりあえず挨拶。

 するとデリバーがこちらに来て、「突然だが身支度するんだ」と言う。


「急いでるの?」


「まっ、早めに済ませないと予定が狂うからな。朝飯は食うか?」


「急いでるならいい」と首を横に振り、すぐさま身支度。

 寝癖を直して歯を磨き、今日来ていく服を選ぶために再び部屋へ。

 扉に手をかけたところでデリバーに呼び止められる。


「ちょいまち。今日来ていく服は昨日買った旅用にしとけよ」


「誰かと戦うの?」


「それはお楽しみだな」


 どうやら今日は何かしら大きなイベントが待っているらしい。

 もしかすると久しぶりに体を動かす羽目になるかもしれない。


(準備は周到にしとかないとな)


 部屋に戻り、昨日買った服に着替えて、見落としがないよう入念にチェックする。

 そしてバックパックを背負って、部屋の扉を開け、この服での初陣となる一歩を踏み出した。



「ここは?」


 デリバーに連れてこられたのは、街の中心地区のさらに中心。

 三階建てくらいの大きな建物が大きな広場に立っており、そこから蜘蛛の巣のように連絡通路が至る所に伸びている。


 一層から三階へ。三階から二層へ。色々なところへ通路が伸びており、一眼見ただけで重要な役割を果たしている場所だとわかった。


 しかも外見は見てわかるが横にも大きく、まるで東京駅を目の前にしている気分だ。


 そして多くの人間が至るところにある扉から出入りしており、各々の職業がバラバラであるのも見てわかる。

 これらのことから察するに、すなわち目の前にある建物の答えは。


「これってお役所?」


「惜しい。この建物はもっとすげえもんだ」


 デリバーが目の前の巨大な建物を見上げる。アンナも釣られて上を見ると、空の絵が書いてある大きな旗が伸びており、風に吹かれてはためいていた。


「ここはこの街の交易、依頼、仕事、建設など全てを仕切る権利を持つ。人呼んで——」


「人呼んで?」


「ギルド総本山。固有名は『スカイジャンクション』だ」


 ギルド総本山「スカイジャンクション」。空の交差点および合流点という意味だろう。


「ここでお前の免許を作る必要がある」

「えっ。め、免許?」


 唐突に告げられた免許の取得。話についていけず混乱してしまう。

 そんなアンナを見てニヤリと笑みを浮かべるデリバー。あの笑顔はどういう意味だろうか。


「さあ行くぞ! 中は広いからな、絶対に迷子になるなよ?」

「え、待って、置いてかないで〜!」


 いくつも立ち並ぶ扉の一つに向かって、アンナとデリバーは歩き出した。

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