【世の中にはバカがいる】ほか
【世の中にはバカがいる】
世の中には、理屈の通じないバカがいる
話せばわかるというのは
幻想だと悟った今日このごろ
悲しいことだが仕方がない
ボクはもうあきらめた
情けないことかも知れないが
神さまは、きっと許してくれるだろう
だってボクは、ガンジーでも
マザーテレサでもないのだから
だからバカとは、もう話し合わない
心の中で無視するか、表立って戦うかのどちらかだ
繰り返していう
世の中にはバカがいる
「お前がな」と、いまディスプレイの前でつぶやいたヤツ
お前のことだよ
-------------------------------------
【机の小人】
机の上を小人が歩いている
何人も何人も歩いている
彼らは机の奥の
本棚のすき間から次々と沸いてくる
しかし彼らが野に放たれる事はない
彼らが机から飛び降りようとすれば
ボクは一番うえの引き出しをあける
その中は溶岩で煮えくり返る焦熱地獄
彼らはそこへダイブして
ジュッという音とともに焼け溶ける
でも焦げるニオイが嫌なので
ボクは一番うえの引き出しを閉めた
次にボクは2番目の引き出しをあける
そこには鋭い針の山
飛び降りた小人たちは
団子のように串刺しになっていく
死骸はすぐに消滅するが
血のニオイがたまらないので
ボクは2番目の引き出しもすぐに閉めた
最後にボクは一番下の引き出しをあける
そこには川が流れていて
落ちた彼らは引き出しの奥へと流されていく
彼らの悲鳴は聞こえるものの
嫌な臭いは全くしない
ボクは、ただ
彼らが見えない暗闇に吸い込まれるのを
机に肘をつきながら延々と見る
悪い事をしているとは思わないさ
だってボクがそうしなければ
小人たちは世に放たれてしまうだろう
そしてこの世は彼らのものとなる
だからボクはヒーローなんだ
誰にも知られることはないけれど
ボクがこの世をまもってる
----------------------------------
【前向き】
前向き、後ろ向き
どちらが前か後かを
どうやって判断するのだろう
どちらが前か後かわからないのに
どうして前向き、後ろ向きと言えるのだろう
いまワタシが思っている「前」は
私が決めたものなのか
それとも世間が決めたものなのか
はたまた
世間が決めたものを
自分が決めたものだと
錯覚しているだけなのか
ワタシにとって
なにが前で、なにが後か
それを決められるのは
誰とも無関係な
ワタシだけだ
-------------------------------------
【幸せの重み】
青春の昔
二人で乗る電車の中
寄りかかかってくる彼女の重さが
うれしかった
だけど、いま
それはもう、物理的な重さでしかない
現実という名の電車の中
絶望へと向かう二人がいる