プロローグ1
(あぁ、飽きたな流石に暇でしょうがない。)
見渡す限り周りに何もない空間で、そう思考する者がいた。
いや正確には、黒く塗りつぶされている空間の周りに、青白く輝きを放つ無数の物や色々な球体が浮かび上がった物がある中でだ。
(ここは何もないからする事も無いし、ただ単純に見ているだけだからな。)
その存在は、心の底から静か気に呟く。
それこそ本当に飽き飽きしたという様子であった。
(確かに観測は良いが、そろそろ退屈である意味死にそうだな。……そうだな、実際に現地に行くのもありか?ありだな。)
そうその存在が意気込んだ後に、何やら膨大なオーラらしき物を纏った魔法陣が展開され、その存在は一瞬にして消え去った。
その存在が居なくなった事により、その周りの空間は更に静寂を纏う事になった。
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20XX年6月上旬の金曜日、とある○○県○○市の○○高等学校の一学年の一クラスの若者達が親しい人達と会話をしつつ、担任の先生が来て朝のHRが行われるまで待っていた。
その中で、仲の良い友達と話込む者が多々居るが、何人かが自分の席に座り、次の授業前の授業の予習復習やら携帯を弄り、親しい者同士での会話やゲームや動画鑑賞を行っていた。
その内の一人が、最上星夜という者で、今もなお自分の席に座り自分の趣味である読書に夢中でいた。
(ふむ、この小説は面白いな。いや~この発想が中々。話の展開や内容も良いし、高評価取るだけある。)
本人は一般的である小説・エッセイなどの文芸から実用書・専門書など、そしてコミックまでも幅広く読み更けていて、本人も自覚しているが読書中毒者と表現されても良い程、自分の自由時間には読書をしている。
そして当たり前かの様にサブカルチャーにも精通しており、ゲームやラノベといったジャンルまで趣味の範囲内であった。
そして本人の悪癖なのか、他人よりもかなりの頻度で自分の事、より正確的に言えば自分の趣味を優先するので、他人との関わりは余りおらず、小学生の頃からぼっちに近い状況であった。
大半の者達がそんな様子である最上星夜に関わらずにいようとする中、中にはそんな様子に面白く無いのかそれともただ単純に絡む相手にしたいだけなのか、最上星夜に絡む者もいた。
「おう最上。相変わらずしんみりしているなぁ?」
「…何だ後藤?今本を読んでいるから邪魔しないでくれ。」
「あ?どうせ碌な物読んでいないんだろ?はははっ、うけるなぁ?お前達もそう思うだろ?」
「そうだな後藤!というか陰キャな最上に、一般的な本はもったいねぇーの!」
「それは受けるな斎藤っ!ていうか寧ろ本を購入しているなら、その分俺達に金くれよぉ?そっちの方が有効活用できるっからよ。」
といった感じに、何やらたかる気満々というか完全にゲラゲラと笑い、笑い者扱いにしていた。
その主な人物は、後藤大介・斎藤武・井口孝太郎の3人であって、入学当初から少し時間が経つと、よく最上星夜に絡み、事ある事にしょっちゅう話のだしにしたり、金をたかったりしていた。
最上星夜からしたら相当迷惑な話である。
まあ、最上星夜の趣味だけが絡まれる原因だと言いきれず、あと二つ程原因があり、一つは本人のスペックの高さであり、顔立ちや体格面的にかなり平均値より高い所か、かなり優れていると評するほどのイケメンに体の引き締まりであり、かなり外見からも良く見られる。
そして授業の成績も、試験は一度しか行われていないが、相当良い成績を取っており、それがある意味嫉みや逆恨みの原因であった。
そして最後の一つが……
「あっ、おはよう最上君。」
「ああ、おはよう大生院さん。」
「ごめんねちょっとどいてね……。最上君、な・ま・え?」
「ああすまない、花蓮さん。」
「うん、よし。」
今最上星夜の前にやってきた少女が3つ目の原因というか大半の原因であり、本人は周囲の様子なんて関係ないと言わんばかりに積極的に最上星夜へと話掛ける。
大生院花蓮は腰まで届くかという程の艶のある黒色のロングヘア―で本人の身長は女性の平均より少々高い位であり、顔立ちは可愛いと称されるよりも美しいと言ってもいいような美形である。
体付きもそこそこあり、まさに女性の理想だと称される程であった。
そもそも、何故積極的に大生院花蓮が最上星夜へと話掛けて来るのかというと、最上星夜からしたら恐らく、中学の頃に危ない事から助けてそれで縁ができただけの認識である。
そもそも大生院花蓮は俗に言う社長令嬢でかなり裕福な家庭であり、本人も顔立ち体系ともにかなり優れていた。
その為か、中学の頃に身代金目当ての誘拐犯に誘拐されたのであった。
その時に偶々誘拐現場に遭遇した最上星夜が通りかかり、ちょっとした手品で誘拐犯を懲らしめ警察へと引き渡し無事助けたのが、大生院花蓮との出会いであった。
そして現在、大生院花蓮は気付いていないが、最上星夜や少し特殊であった為、かなりの細部まで敏感であり、教室内の様子を認識する事が出来ていた。
最上星夜が確認すると、毎度の様に教室内の皆から大半の男性と少数の女性から嫉妬や嫌悪などの感情の籠った目線を向けられていた。
(はぁ~、別に良いか。得に何もされていなし。)
そう思い、最上星夜や大生院花蓮と会話をしつつ自分の趣味である読書をしていたら、横から男性が声をかけてきた。
「やあ、大生院さん、最上。」
「あ、神流光さん、おはようございます。」
「おはよう。」
話しかけてきた男性は、神流光と言って、キラキラネームに相応しいように、高身長で髪色は少し茶色がかった黒色でのイケメンであり、女性からかなりの人気を誇る人物であった。
勿論容姿だけではなく、スポーツ・勉強ともにかなり優秀であり、部活から早期に助っ人として参加し活躍していたり勉強面で言えば、最初に行われた中間試験ではトップクラスの成績を収めていた。
そして、本人はかなり優しく正義感が強く、困っている人を見るとすかさず助けに入る様な、男女ともに頼れる存在であった。
「やあおはよう。大生院さん話があるんだけど良いかな?」
「ごめんなさい、今最上さんと話しているの。後でも良いかな。」
「分かった。邪魔してごめんね?じゃあまた後で。」
神流光は根が優しい為か、大生院花蓮の隣にいる最上星夜には少し良い思いをしていなかったが、素直に引き下がり、自分の親しい者達へと会話をしだした。
それから数分後、学校の始まりを告げるかのように、鐘の音が鳴りだす。
それど同時に、いや若干遅れ最上星夜の担任である先生が教室に入り、教団に行く。
「それじゃあ、席に着けぇっ。おい後藤っ!チャイムが鳴ったぞ?スマホを仕舞え。」
「わーたよ。」
「それじゃ朝のHRを始めるぞ。」
そう担任の先生が告げると、それと同時に自分達の足元にアニメや漫画でよく見る様な紫色に光る魔法陣が現れる。
その事象に、教室いる者達は突然の事で混乱し、何事と声を荒げたり悲鳴を上げる者が現れたり、中にはサブカルチャーに関わっていたのか、「よっしゃー、異世界召喚じゃね?」と喜ぶ者までいた。
そして皆の頼れる神流光は、皆に落ち着くように声を掛けるが、根本的な解決はできずにいた。
その中でも最上星夜は酷く落ち着いていた。
何故かと言うと
(ふむ……、確かにこれは召喚魔術だな。それに一つ異質なエネルギーが混じっている。人間種じゃないなこれは?神か?じゃあこれは勇者召喚の魔術か?)
本人にとって馴染みのある魔法陣であった為、慌てる所かこれから起こる事について考えこんでいた。
「ねえ最上君。」
「ん?何だ花蓮さん。」
「これからどうなるのかなぁ。ちょっと怖くなってきたよ。というか何でそんなに落ち着いているの最上君」
突然の事態だからか、恐怖や冷静さを無くした大生院花蓮が、今もなお混乱しつつ部屋から出ようとして、不思議な力が掛かったように、頑丈で開けられなず出られなくなった様子を確認しつつ、最上星夜に話掛けた。
一人だけ状況が理解できている為か、冷静に見えたからであろう。
「まあ、喚いていても何も変わらないからな。んー、そうだな。詳しい状況は分からないが、まあ、何とかなると思うよ?」
「何とかなるって?」
「あー、取り敢えず。また後で。」
そう最上星夜が呟いた瞬間、教室内は純白な光に包まれた。
そして光が収まると、教室内にいた生徒達は姿を消していた。
今回、この作品を読んで頂きありがとうございます。
誤字脱字や感想や評価なども頂けたら有難いです。
次回はできれば早めに投稿します。
次回もよろしくお願いします。
そして別作品『超越者の冒険録』もよろしくお願いします。(話は繋がっているので読んで頂けたら有難いです。)
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