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第2話

 自己紹介が終わって、日程表が配られて、それだけでホームルームが終わった。

 初日だから授業はないみたいだ。

 みんな帰り始めて、人はまばらになってきている。


「なあ」


 隣の席から声が聞こえてくる。

 さっき爆睡してた茶髪男子だ。


 しょんぼりしたような、申し訳無いような顔をしてる。


「さっきは……余計なこと言った。すまん」


 そう言って頭を下げてくる。

 この人、実はいい人だったり?


「別にいいよ。気にしてない」


「そう言ってもらえると助かるぜ」


 ニカっと笑顔を向けてくる。


「俺はウィンだ。よろしくな」


「僕はソウタ。これからよろしく」


 握手すると、ウィンが一層大きく笑顔を浮かべた。

 太陽みたいな笑顔だ。


 最初は印象最悪だったけど、案外いい人そうだ。


「ウィンの手、結構ごつごつしてるね。剣を使ってた人の手だ」


「ん? ああ。昔にちょっと剣を使ってたんだよ。よく分かったな?」


「僕も使ったことあるから」


 改めて、ウィンを見てみる。


 ボサボサの茶髪。身長は割と低め。だけど、制服の上からでも分かるくらい体格ががっしりしてる。ムキムキだ。元剣士というのは本当だろう。


 あとは、眉毛がキリッとしてる。イケメンかもしれない。ボサボサの髪と大きめの声が無ければ。


「ソウタも剣士だったのか?」


「うん」


「元剣士同士仲良くやろうぜ」


「こちらこそ、よろしく頼むよ」


「ああ。にしてもよ、気になることがあるんだが」


「なに?」


 ウィンが何気ない様子で尋ねてくる。


「なんでこの学校に入ったんだ? お前、魔力無いんだろ?」


「遠慮無いね!?」


 初対面だよね。さっき自己紹介したよね。

 というか、なんで僕が魔力持ってないこと知ってるの?


「その質問に答える前にさ……どうしてそれ知ってるの? というか、さっきも言ってたけど『千年に一度の劣等種』って何?」


「知ってるも何も、学校中でうわさになってるぜ。筆記試験は主席なのに、魔力が無くて魔法使えない平民が試験に合格したってな」


「それ、冗談とか嘘とかじゃなくて?」


「本当だぜ。入学前からうわさされてたからな。ただ、本人の名前が分からなかった。それで『千年に一度の劣等種』って二つ名がつけられた」


 知らないうちに二つ名を付けられて、学校中に広められてるんだけど。


「自己紹介で顔が分かったから、今頃廊下にいる人はみんなソウタのことうわさしてるだろうよ」


 最悪だ。学校初日なのに、もう学校に行きたくないんだけど。僕はこれから一体どうすればいいんだ。


 ふと疑問が浮かんだ。


「噂されてた時って、僕の名前は誰も知らなかったんだよね?」


「ああ。二つ名だけみんな知ってたな」


「じゃあどうして、それが僕だって分かったの?」


「何がだ?」


「自己紹介の時だよ。魔力を持って無いとか、筆記試験で主席だったとか言ってないと思うけど」


「ソウタは名前しか言わなかっただろ? 貴族ってのは普通、自己紹介はフルネームで言うんだよ」


 なるほど。名前しか名乗らなかったから、僕が平民だってバレたのか。


「でもさ、他に平民の学生がいるかもよ?」


「この学校にはいないと思うぜ? 天下の第一魔法学校だからな」


「え……ここってそんなにすごい場所だったの?」


「お前、知らないで入ったのか?」


 知らなかったので素直に頷く。


 ウィンがあきれたように口を開いてこっちを見てくる。


「王族や地位の高い貴族しか入れない学校だぜ、ここは。多分平民はお前だけだ、ソウタ」


「地位の高い人だけ? 筆記試験の点数は関係ないの?」


「ほとんど関係ないらしいぜ。なんつったってここは魔法学校だからよ。魔法が使えて魔力が多い奴が入学できる。それは分かるだろ?」


「うん」


「んで、知ってるだろうが、魔法の才能は親の影響が大きい」


「優秀な血を持ってる人たち……大貴族とか王族だけが入れるってことか」


「そういうことだぜ。実力だけじゃなくて、いろんな権力も絡んでるらしいけどな」


「うーん」


「どうした?」


「その話だと、魔法の才能がある人しかこの学校には入れないはずだよね?」


「そうだな」


「じゃあなんで僕は入れたの?」


「それは──」


「あなた、うわさ通りの平民みたいね」


 誰かが横から話に入ってきた。誰だよ。

 横を見る。

 女の人だ。しかもものすごく美人だ。

 

 何も言えない僕の代わりにウィンが口を開いた。


「何の用だ?」


 明るい赤髪のルインテールに、同じく赤い瞳。

 ちょっとツリ目。まつげが長い。すごく小顔で、顔全体に幼さが残ってる。

 瞳が透き通っていて吸い込まれそう。


 見惚みほれてしまうくらいに美しい少女が、ツンとした表情で僕を見てきている。

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