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~第5幕~

 俺はニッコリ警備の制服を着て、トランプビルの玄関口に渡部と立った。



「ミュージック! スタート!」



 渡部が指をパチッと鳴らすと、サイバーパンク系のイケてるBGMがちょっとずつ盛り上がる演出とともに流れ始めた。おい、これ、いくら街中だとは言え、騒音にならないの? そんな俺の心配をよそに渡部はちょっとずつ腰を振り出し、やがてブンブンお尻を回しはじめた! 俺はただ立ち尽くしていた。え? 何? 俺はここで何をしろと言うの? 証明証の確認じゃないのか?



「何している!? 兒島、仕事を始めろよ!!」



 踊りながらも渡部は棒立ちしている俺を怒鳴った。



「待て! 待てって! 音楽を止めて!」



 しかしBGMは鳴りやまない。渡部は目を閉じてダンスに没頭し始めている。



「音楽止めて! 頼むから止めて!」



 それでも渡部のワンマンショーは鳴りやまない。道行く人は指さして俺たちを笑い、通り過ぎてゆく――



 やがて一人の婦人が俺達の所にやってきた。そして証明書をみせた。



「あ、はい、間違いないですね。どうぞお通りください」

「あなたに見せてないです。あなた誰よ?」

「え?」



 渡部がダンスを止めて、彼女の証明書を目視する。そして「かしこまりました。どうぞお通りください」と告げると、彼女はトランプビルの中へと入っていった。音楽もここにきてようやく止まったようだ。



「お前は何をしている!? 思いきりサボっているじゃないか!?」



 いや! それは俺の台詞!! とは言わずに「すいません、でも、何も聞いてなくて。驚いているのです」と返事を返した。渡部は凄く憤っているようだ。



「オリエンテーションがあった筈だぞ!? そこでダンシン警備を見なかったのかよ!? お陰で恥ずかしい目にあったじゃねぇか!」



 恥ずかしいのは俺の方だ! とは言わずに俺は穏便に事を済まそうとした。



「すいません、見てはなかったです。というか、道行く人みんなが指さして笑い合うのを見ると……そりゃあ恥ずかしいのはごもっともかと」

「俺達を笑ってみる人は関係ない。関係あるのはこのビルに関わる人達だぞ?」

「え?」

「このビルにはウチの会社と提携している、大手企業の幹部クラスが出入りする事務所がある。その会社の役員は皆、俺達のダンシンに日々心を癒され、日々の仕事に精をだしている。兒島君が仕事を明日辞めるのは自由だが、今日はあくまでもニッコリ警備の社員として来ているのだろ? ならば今日1日は真剣に俺の真似をしてくれ。オリジナルでなくていいから」

「え? あの? オリジナルが求められているのですか!?」

「詳しい話は休憩時間が来てからだ! それまで適当でいいから踊れ!」

「え? え? え?」



 渡部は目を閉じると、両手をゆっくり広げて動きを静止させてく。そして指をパチッと鳴らして目を見開いた。



「ミュージック! スタート!」



 また始まるのかよ!? これ!?



 しかし俺も背に腹は代えられぬようだ。今日だけ我慢してこのキチガイ業務に付き合い、終わり次第に本社へ電話で辞職する旨を伝えよう。そう気持ちを入れ替えた俺は軽くステップを踏む感じで渡部に続いてみせた――




 10分、30分、1時間と時間が過ぎてゆく。最初はあまりに心苦しく時間を長く感じていたが、だんだんその苦しみは緩和されてゆく。ときにスマホで俺を撮る若者も見られ俺は苦痛だったが、それも自然と気にしなくなった――



 何だろう。意外と俺、この仕事が好きかも? そう思った矢先だ。



「スンマセーン! 遅刻しましたぁ!」



 一人のおっさんが俺達のミュージックを止めた――



∀・)次回、本作注目のキャラクター宮迫さんが登場します!!また1時間後!!

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