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PROLOGUE:ブラック企業によろしく

 俺が介護職の道を志したのは、学生時代に何となくやってみたボランティアでお年寄りの人達と触れ合った機会を通じてだ。俺は俺の好きなことを見つけた。



 俺は小さい頃からお爺ちゃんとお婆ちゃんが好きだった。しかし自身の祖父も祖母も俺が高校生になる頃には亡くなってしまった。お爺ちゃんもお婆ちゃんも酒呑みで酔っては周りに迷惑をかけるぐらいはっちゃけるものだった。



 俺はそんなお爺ちゃんとお婆ちゃんが愛おしかった。



 何となく入学した大学では文芸サークルに入ってロクに小説なんか書くことも読むこともなく毎週開催されている飲み会に参加しては退屈な時間を過ごした。勿論勉強なんかに精もださず、生活費を賄う為のアルバイトも1カ月やってみてスグ辞めたものだった。



 俺なんかに続けられる仕事なんてあるのかな……



 机に立てかけたお爺ちゃんとお婆ちゃん、その間にいる幼い俺。



 俺はいつもその写真を眺めた。頬を真っ赤にして俺の頬を引っ張るお爺ちゃんとお婆ちゃん。黒歴史になる筈のその写真が俺にとっては何よりの宝物だった。特に入職の内定をとってからはそれまで以上に光り輝いてみえた。



「お爺ちゃん、お婆ちゃん、行ってきます」



 俺は笑顔で写真に手を振ってアパートを出た。




 俺は兒島嘉男(こじまよしお)。平仮名読みすると明らかにわかると思うが、俺はこの名が上も下もすごく嫌いだ。それはかの有名な1発ギャグ芸人を彷彿とさせるからだ。



 学生時代は飲み会の度に()()()()()()()()



 でも周囲のウケは良かった。お陰様で友人もたくさんできたし、彼女もほんの少しの期間だけどできた。



 だけど俺はすごく苦痛だった。本当はすごく苦痛だった。




「そんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ!!」




 当の本人でもないのに周囲はバカウケした。俺は最初の頃はまんざらでもなく楽しんでやっていた。しかし周囲はそれを飽きることもなく、むしろそれが定着してしまって俺は逃げられなくなってしまった。



 それが悪夢の学生時代の始まりであり、終わりでもあった。



 そして俺がデイサービス職員として働き始めて10年の年月が経った――




「そんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ! そんなの関係ねぇ~!」




 悪夢は再び始まっていた。



「わっはっは! 面白い! 面白いわ!!」

「あら! 松平さん! 立ったじゃない!」



 俺の一発ギャグのお蔭でデイサービス利用者さんの全員がスタンディングオベーションをかましてくれたようだ。中には立ち上がりが困難な御方も居た。



 こうなってしまったのは、丁度勤務10年目を迎えた俺が職場に着いた時の事。



「兒島さん、こちら新人職員の塚地さんよ。御挨拶を」

「え? 兒島? あの兒島か!?」

「あら? お知り合いなのかしら」

「え? え? え……」



 塚地勝、その男はまさに俺に1発ギャグを仕込んで俺の暗黒時代を築かせた男。まさかの運命だった。営業マンとしての挫折を経た彼は介護業界に新天地を見いだして俺の職場にやってきたらしい。



 ほどなくして俺の隠し芸が職場で暴露された。周囲の職員をはじめ、署長まで俺にアトラクの一環で「やりなさい」と命令までしてきた。そして実行した結果……思わぬ効果を発揮した。



 でも何故だ。何故俺の胸はこんなにも痛みつけられるのだろう。



 俺の1発芸は反響に反響を呼び、遂にはテレビ出演の話まで頂く運びとなった。



「凄いことじゃない。コレ、全国の介護士のみんなに勇気を与えるわよ」

「あの、黒崎さん、そのことも踏まえてお渡ししたいものが……」

「渡したいもの?」

「はい。これです」

「どうしたのよ?」



 オカ……オネェ系の上司、黒崎に渡したのは「退職願」だった――



∀・)あけましておめでとうございます!!改名致します「いでっち51号」を本年も何卒宜しくお願い致します。本作は全14話??で現時刻より1時間ごとに更新してゆきます。ぶっとんだ男のぶっとんだ人生をとくとお楽しみください☆

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― 新着の感想 ―
[良い点] おつかれさまです! 掴みがヤバいです(笑) 生い立ちを真面目に話すくだりから、まさかの某芸人のイジり。 オープニングでこれから始まるのに、いきなり退職願。 続きが気になります(^^…
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