魔王は人間と仲良くしたい。
魔王は人間と仲良くしたい。 @短編その44
タイトル変更しました(2020/07/16)
タイトル右の名前をクリックして、わしの話を読んでみてちょ。
4時間くらい平気でつぶせる量になっていた。ほぼ毎日更新中。笑う。
魔王を倒す勇者の話・・・
魔王は人間が持っていた一冊の本を読んだ。
そこに出てくる魔王は、人間を痛ぶり、魔物やモンスターの餌にして、残る人間を奴隷にして死ぬまでこき使う。
魔王は先ほど生まれた。
前の魔王が、人間に討伐されたからだ。と言っても何百年も前の事だが・・
魔王はどうやって生まれるか。
時間を掛けて澱んで溜まった、人の悪意と呪いから生まれるのだ。
悪意と呪いで生まれた魔王を倒すことによって、世界を覆っていた悪意が消えて、清浄化される。
そしてまた、何百年と掛けて悪意と呪いが溜まって、魔王が生まれる。
この繰り返しなのだ。
だから魔王を完全に倒すのは不可能なのだ。
魔王が生まれると不思議な事に、勇者と聖女も現れる。
勇者と聖女は生まれる、もしくは異世界からやってくるのだ。
倒した後、勇者と聖女が結婚して、めでたしめでたし。
これがエンドレス。
魔王VS勇者&聖女の、不毛な戦い。そう、魔王からすると不毛なのだ。
俺を倒してふたりはハッピーエンドって。俺は?ねえ俺は??俺にはハッピーは無いの?
「そんな世界・・ぶっ壊してやる!!」
と言って、はたと気がついた。
それじゃ今までと同じだ!!
俺はこの輪廻をぶっこわす!!そうだそれだ!!
世界をぶっ壊しても仕方がないんだよ、余計に恨まれちゃうよ。
「俺は良い魔王になるっ!!」
さて。
良い魔王っていうのは・・人を殺さない、害なさないって事だね?
人間の友達を作るのはどうか?如何なものか?
友達作るのに良い場所・・・
「学園だ!!!」
そうだ、学園に行こう・・・
そして、友達百人出来るかなを実践するんだ。
この世界の支配層である、貴族の子息と仲良くしてみせる。
俺は姿を変化させ、人間の格好に変化させた。
好かれたいから、人間好みの姿になった!!8歳の少年に変身だ!
美形!美少年!!可愛い!!!はわぁ、自分でも見惚れる愛らしさ・・・
頭が良くて、有能で、魔法も使えるキャラにしとくか!
そして貴族に偽装しておこう。平民だと旨味無さそうだしな。
準備万端、俺は人間の国へと下り、王立学園に入学を果たしたのだった。
この学園は8歳から入学、15歳で卒業する。
1年から4年までは、基礎学問と剣技などを学び、残る5年から最終学年は、進路に合わせた学問を習得するスタイルだ。多くの貴族が将来営むであろう領地の運営と経営の為の専門学習、騎士になる者は武術や兵法など、専門学科を学ぶこととなる。最終学年、通称『最』は修学旅行が実地訓練にもなっているので3ヶ月もある。
「思いの外面白そうだな、学園生活は」
学園に入学した俺は、先生方にも注目される生徒となる。
そしてクラスメイトとも・・・まあ、ぼちぼち仲良くした。
王子様と公爵令嬢がいて、ふたりは婚約者同士だとか。
このふたりから勝負を掛けてこられるようになって、返り討ちにしてやっていた。
「ふはははは!!話にならんな!!」
「くっ・・・くそぅ」
「悔しい・・!」
ハンカチ噛んでキーーーです。初めて見ました。
今日も魔法で勝負を申し込んできたので、頭をチリチリにしてやった。
よくも懲りずに毎日挑んでくるなぁ。根性は認めよう。
でもこいつら、本当仲がいい。
将来の王と王妃だからかな?
いつも共闘して俺に掛ってくる。面白い。仲がいいな、と言うと、
「な、仲なんか良くない!!」
「王子が力不足だから手伝ってるだけだし!!」
「なにをぉ、このチンクシャ公女!」
「なによぉ、この目ボクロお色気王子!」
「ははは、やっぱり仲がいい」
「ちーーーがぁーーーうぅーーー!!!」
「ハモってるくせに」
どうせ卒業したら夫婦なんだから、仲良くしとけよ。
こうしてあっという間に4学年を終え、5学年となった。
5年からは、専門学習を選ばなくてはいけない。
王子と公女がいないとつまらん。喧嘩をふっかけられないと、なんか1日が終わった気がしない。
なので、二人と同じ学問を選ぶことにした。
外交術と国政、領地の平定他という、高位貴族が学ぶ学科だ。
これ、俺にも少しは関係あるんじゃね?と思ったんだ。根城付近の土地、馬鹿っ広いんだ。
こうして相も変わらず、王公カップル(こう呼ぶとテレ怒りするのが楽しい)が突っかかってくるのをバッサリだ。
最近はディスカッションしたり、一緒に議題を考えたりもする友人となっていた。
5年生となって・・・俺のクラスではない、総合クラスの事だが、
「みなさん、編入してきたバーバレアさんです。仲良くしてくださいね」
聖女が学園に入学してきたのだ。この時の俺は、全く知らない情報だった。
そんなこと知らず、相変わらず王公カップルと大騒ぎ。
だがなんだかんだ言って、俺も王公カップルも、しっかりお勉強をするわけだ。
このクラスは海外へ行って外交を体験する授業がある。
ネゴシエイターのロビーイングを今回は学んだ。面白い・・・根回し大事。
王公カップルと同級生たちと共に海外へ行っている隙に、なんと勇者も学園に編入していた。
こいつは騎士専門学科に入ったようだ。
俺も聖女も勇者も、全く顔を合わす事なく・・・最終学年、『最』となった。
ようやく『最』になって、漸く聖女と勇者を知ったわけだ。まだ顔は見ていない。
・・・・・・・・・・・・・今更?
俺、もう王子と公爵令嬢、王公カップルと仲良しだよ。二人も結構ラブラブだよ。
そして他の高位貴族達とも、名前呼び、あだ名呼びの仲だよ。
はっきり言って、みんな仲良しだよ。
さて、勇者の力・・・・ふうん?そんなもん?俺、ステータス見れるからね。
そして聖女の力・・・ほお。その程度。
ふたりで力を合わせて、俺と戦うと言う訳か。
ふん・・・・・・・
カマーーン!!かかってこいやぁ!!
いやいや、俺は戦わない。今は、な。
だって俺、いい魔王になるんだもん〜。殺されない、輪廻から外れるんだもーん!
それからの授業は、本当に楽しいものだった。
外交の場に立ち、王公カップルの補佐をして、高位貴族と協調して進める。
修学旅行は、隣の大国、ゼブライ王国だった。
ゼブライ王国の王子、ギルブリットと対談し親交を深めたり、騎士団練習場で彼の護衛と擬似訓練をしたり。
友好を誓い、1ヶ月の修学は終了して帰国したのだった。
そして卒業式。
楽しい学生生活が、ついに終わった。
先ほど卒業式を終え、今から卒業パーティーだ。
俺はダンスのパートナーに、王子の姉と出席。とても美人。
こうして俺は人間の中に混じって、7年間の学園生活を終えたのだ。
つまり、結論・・・
人間、最高!!
俺は人間の悪意と呪いから生まれた。
でもこの数年で、人間の良さを堪能した。
俺の中にある悪意や呪いは、ほら。ほとんど無くなっているのだ。
たまに故郷?の根城に帰るのだが、魔物も出ない、モンスターも減った、魔族がなんかいなくなっている。
俺の魔力的なエネルギーで、あいつらは増えて育つから、それがなければこの通り。
だから俺が良い魔王になれば、もう大丈夫なのだ。
今はまだ王公カップルにも内緒だが、いつかは・・・俺が魔王だと教えたい。
「お前は魔王らしくないな」
そう言って笑ってくれるといいな。学園時代のように、付き合えると良いな。
王公カップルは半年後に結婚式だそうだ。
その時に伝えられたら良いな。
俺達、親友だから。
・・・・ああ。
夢、か。
卒業式のパーティーの時、俺が思っていた事・・・
やっぱり、人間とは、分かり合えなかった。
もう魔物の数も減った。モンスターも弱体化した。魔族はほとんど目撃されなくなった。
でも、聖女と勇者は魔王を倒す為、討伐の旅に出たんだ。
そして俺の根城を見つけたんだ。
部下など一人もいない、俺だけがいる城に、あいつらはやって来て、無抵抗の俺に聖なる光を浴びせたんだ。
俺は体がボロボロになり、全力の力が出せなくなっていて、そこを勇者が斬りつけたんだ。
変化していた俺の体は元の姿に戻って、そして・・・体の奥底にあった悪意と呪いが吹き出した。
また聖女が光を放ち、悪意と術を消し去った。
5日後は・・王公カップルの結婚式だったのに・・
行けなくて・・御免よ・・・
魔王だったものの手から、一通の招待状が落ちた。
それには王家の蝋印が捺印されていた。
結婚式より一月前に、魔王は友人に手紙を送っていた。
『やあ、元気か?俺だよ、俺。
お前ら結婚すると思ってたんだ。
おめでとう!
良い王様とお妃になりやがれ。
今お前らに結婚プレゼントを用意しているんだ。
だからそっちに行くのが少し遅れる。
それと、今まで黙っていたんだけどな。
俺、魔王なんだ。
お前らの敵だったんだけど、人間と仲良くなりたくてさ。
お前らみたいな友人も出来たし、この機会にカミングアウトだ!
なあ、やはり魔王は怖いか?
だったら、俺は人間から離れて暮らすよ。
でももし、学園にいた頃の友情を感じてくれるなら、結婚式の招待状を送ってくれ。
それが届いたら、お前らの式に行かせてもらう。
じゃあな。
返事はこの手紙を届けた俺の使い魔に渡してくれ 』
この手紙に、王子も公爵令嬢も、大層驚いた。
だが、この手紙を受け取ったふたりは、すぐに招待状を送った。
だが魔王は来なかった。
一月後。
魔王を倒したと、意気揚々と戻った勇者と聖女は、お城にやって来て報告をした。
王子も王太子妃も、顔を真っ青にし、拳を固く握って震えながら聞いた。
そしてついに我慢できず、王太子妃は大声で泣き出したのだった。
王子も彼女を抱きしめ、くぐもった声で泣いた。
国王も、王妃も、息子である王子の親友が、魔王である事を息子から聞いて、彼ならばと結婚式の出席を快く許可していた。高位貴族の友人達も、それを聞いて『あいつなら魔王、ありえる』と納得し、笑い合った。
彼が来たら、サプライズをして・・・そんな計画も立てていた。
彼のよすがを思い出せば、いつも明るく笑う少年だった。息子の親友だった。
「今、この世は泰平だ。討伐などお前達に命令をした覚えは無かった。なぜ、勝手に行った!」
王は愚かな二人を侮蔑の目で睨んだ。
勇者も、聖女も、なぜ自分達が睨まれるのか分からなかった。
魔王を倒した自分達は、英雄だと褒めそやされる。大勢の人達に喜んでもらえ、褒美もたんまり貰える。
そう思っていた彼らはただ驚くばかりだ。
「お前達は、心優しい良い魔王を殺したのだ。人間と仲良くしようと、歩み寄ってくれた魔王を・・もうそんな優しい魔王は現れない。大事な友人たらんとする、彼を殺したのだ」
王は厳粛に述べた。王の席がある壇上から、冷たい視線で見下ろしたままだ。
王子は涙をポタポタと溢しながら怒鳴った。王太子妃は、王子の胸に顔を埋めたまま、掠れた声で詰った。
「あいつは貴様らを攻撃したか?しなかっただろう?!何もしなかっただろう!!この・・人殺し!!」
「私達の親友を、返して・・・彼を、返して・・・」
御目通りした後、勇者と聖女はどこかの塔に閉じ込められ、数日後に国から追い出された。
誰もその後の二人の行方を知る者はいない。
王子と友人の貴族は、魔王の根城に赴き、彼の遺体を埋葬した。
王子達へのプレゼントは、大きな飛行船だった。
多分、これに乗って結婚式に参加するつもりだったのだろう。
そして今、一冊の本がある。
タイトルは『優しい魔王と親友達』という。
人間と仲良くなるために、学園に入学した魔王と友人のお話だ。
こうして良い魔王は、人々に語り継がれているのだった。
ほぼ毎日短編を1つ書いてます。随時加筆修正もします。
どの短編も割と良い感じの話に仕上げてますので、短編、色々読んでみてちょ。
pixivでも変な絵を描いたり話を書いておるのじゃ。
https://www.pixiv.net/users/476191




