8話 【 謎の石造 】
そこは見慣れない外の世界が広がっていた。
地球の地平線が海ではなく草原で視認できるほど広がっており、周りには木どころか山1つ存在しない。
空を見上げれば青く広がる空に白い雲。
そして青い球体ダンジョンが浮いている。
しかし見慣れたものはそれだけだ。
あと他に見える景色すべてが地球には絶対存在しない景色がずっと地平線に広がっている。
「・・・どこだ・・・ここ・・・。」
俺はさっきまでブレイブ本部の施設で桜月を含めたブレイバーが異世界へとダイブする場面を見学させてもらっていた。
日本ブレイブ本部の統括責任者であるマッドが掛け声と共にパソコンのエンターキーを押した直後、大型スクリーンに映し出されていた映像は急に白くなっていき、思わず目を瞑ってしまった。
そこまでは覚えている。
しかし、ここは何処でなぜ俺はこんな何もない草原に立っているのかどう考えても理解できなかった。
「え~・・・いやいや・・・え~?」
夢を見てる?
・・・いやいや。
それにしてはリアルすぎる。
穏やかな風。
気持ちの良い日光。
そして草原から漂う草の匂い。
「これだけの感覚を伴っていながら夢だったら俺の創造力も捨てたもんじゃないよね!」
———と1人で冗談を言って笑ってみたが、それでも目の前の光景は先ほどまでいたブレイブ本部の施設に変化する事はなかった。
周りには人ところか生き物の姿もない。
ここが何処なのか手掛かりを探そうにもあるのは草原だけ。
一体どうしたらいいのか。
「と、兎に角この辺りを歩いてみたら何かしら見つける事が出来る! ・・・かも?」
このままこの場所に立っていても仕方がない。
それからとりあえず辺りを歩いていた時だ。
遠くて姿までは確認出来ないが二足歩行の黒い影が立っているのが見えた。
「もしかして・・・人!!」
窮地に一生とはこのことだ。
絶望の淵にも希望が見えた瞬間のようにも思えた。
「すいませーん! あのー! ちょっとー!!」
俺は安心して大きな声を出しながら黒い人影に呼び掛けて走って近づいた。
人がいるならここが何処なのか分かる。
それさえ分かれば帰る方法だってすぐに分かる。
今の時代、携帯さえあればネットも使えるし通話も出来る。
最悪あの人に携帯を借りて桜月あたりに連絡すれば迎えに来るだろうと安堵していた。
「おーい! すいませーん!!」
しかし、人影は俺がどれだけ大声で声をかけても気づく様子がなかった。
これだけ広い草原なのだからすぐに気づいても良いと思うのだが・・・。
そんな風に考えているとようやく姿が確認できた距離まで近づいた時、俺は声をかけるのをやめた。
いや、声を出せなかったといった方が性格かも知れない。
軽くジョギング程度に走っただけなのに呼吸は乱れ滝のような汗が流れ出る。
「なんだ・・これ・・。」
人が立っているように見えていた影は、人ではない。
人間の形をした石造だった。
しかし、ただの石造なら俺もこれほど呼吸が乱れるほど取り乱さない。
俺が驚いているのはその先にある光景だ。
「百・・千? いや、もっとか?」
俺が見えていた人の石造は1つだけではない。
近づいて見えた先は無数に数えきれない人の石造。
そして、俺が最初に見つけた石造を含め、すべての石造はまるで何かに怯えながら必死に逃げているような表情と形をしていた。
その景色はまるで世界の終りのような光景だった。