1話 【 異世界の扉 】
西暦2200年。 世界は今、異世界への攻略で持ち切りだ。
テレビをつけても異世界。
ネットを見ても異世界。
誰と話しても異世界。
どこもかしこも異世界というワードが必ず話題になって飛び出してくる。
それも仕方がないことだ。
今から200年前、人類は夢を見た。
ファンタジーなんて存在は空想上の物語で、実在するものではなかった。
魔法なんてデタラメで愛と勇気のあるハッピーエンド物語なんて人が創造で作り出した妄想だ。
しかし、そんな考えは200年前に人類すべてがかき消された。
当時、空は広く青い空に見えるのは白い雲だけだった。
だがそんな何もない綺麗な青空に突如、空の青さと同じでありながら、そこに何かがあると分かる球体が出現した。
世界は混乱と好奇心で騒ぎが起き、一時的に宇宙人の侵略や世界の滅亡なんて話題が盛り上がっていたらしい。
だが、実際は宇宙人の侵略でも世界の滅亡でもなかった。
政府はこの青い球体を調査する為に軍隊を派遣させて調べ上げ、とんでもない驚愕な事実が判明した。
――― この球体は異世界への扉だ。 ———
当時、世界中の科学者が全員同じ言葉を口にした。
球体の中にはいくつもの異なる世界と繋がっており、そこはファンタジーの世界そのものだと。
この情報だけで世界は震撼したが、驚く情報はこれだけではなかった。
青い球体を調査する為に派遣された軍隊は世界中すべての軍が派遣されていた。
しかし
その軍隊の中でも球体の中に入れたのはたった数十名。
他の軍人兵士は何度青い球体に近づいても気が付いたら球体の外にはじかれていたそうだ。
それでは球体の中に入った数十名はどうなったのか?
科学者達はまとめられた軍からのレポートと映像を見て頭を抱えた。
異世界へ入り込んだ数十名の軍人が摩訶不思議な能力を自在に操っていたのだ。
ある軍人は普通ならあり得ない跳躍で跳ね、またある兵士は何もない場所から炎を発生させていた。
これを見て科学者達はまるで魔法のようだと口にしたそうだ。
世界は歓喜の騒ぎで溢れた。
このつまらない現実に夢が訪れたと。
政府は急遽、首脳会談を行い4つの案を導き出した。
1. 青い球体を【ダンジョン】と命名する。
2. 異世界へ渡れる選ばれし人材を選別する。
3.選別された人材をダンジョンへ向かわせダンジョンの謎を解明して攻略する。
4.異世界へ渡れる人材の組織は【ブレイブ】命名する。
人類はこの時、異世界への第一歩を手に入れた。
—————プツンッ。
テーブルに置かれていたリモコンでテレビの電源を消した。
今年はダンジョンが出現してから丁度200年となる記念の年。
そのおかげで今年になってからずっと200年前の当時の話をまとめた収録番組で持ち切りだ。
ソファーに座ったまま時計を見ると、もうすぐで昼の時間に差し掛かる頃合いだった。
「あ~・・・もうそろそろ準備しないと・・・」
重い腰を上げて大きく背伸びをする。
視線を上げると、ベランダから眩しすぎる太陽の日光と晴天の青空が広がっていた。
『異世界なんて碌なものじゃない』
昔、幼い俺を抱き上げながら空を見上げた祖父の言葉を思い出す。
「爺さんがそう言ってたんだから、そうなんだろうな」
200年前は、天気の良い日は広い青空が一面に広がっていたそうだ。
しかし、突然と現れた青い球体【ダンジョン】によって青空には太陽と並ぶ球体が現れた。
「俺も200年前の青空を眺めてみたかったな」
ピロリンッと携帯のメッセージ音が鳴る。
「え?! もう終わるの?! 予定より1時間も早いな!」
俺は慌ててバックと家に鍵を持ち、家から飛び出した。