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異世界ダイブ!  作者: 黄田 望
第一章 【 癒しの歌姫 ディーバ 】
19/95

17話 【 元凶 】


 さっきまで普通に会話をしていたはずのディーバが目の前で何の前触れもなく石化していた。


 それは突然の事でしばらく頭が目の前の現実を理解するのに時間がかかった。


 「お、おい・・ディーバ?」


 呼びかけた相手は何も反応を見せず見た目通り石造になっている。


 「なんだ? 一体何が起きたんだ?!」


 俺はすぐに店の店員さんを呼び掛けた。

 しかし何度呼び掛けても店員は奥の厨房から出てくる様子がない。


 「すいません! 誰か人を呼んで――――!?」


 痺れを切らして自分から厨房に顔を出すと、厨房にいた店員2人もまるでその場で時が止まったように石化していた。


 「なんだ・・・なんだよこれ。 一体どうなってんだ?!」


 状況がまったく呑み込めず1人で色々と考え込んでいると、背後から俺よりも背の高い影が現れた。


 よかった! まだ他にも石化してない人がいる!

 そんな安心感を抱いて後ろに振り向くと俺に向けて剣を振り下ろそうとしている屈託の男と目があった。

 屈託の男は俺と目が合った瞬間、力一杯に剣を振り下ろす。


 「どわぁぁぁああああああ!?」

 「・・・チッ。 外したか」


 なんとかギリギリ剣を避ける事が出来たと同時に聞き覚えのある言葉が耳に入った。

 確かここは俺が知ってる世界とは別の異世界。

 日本語を話せるのは転生したディーバだけのハズ。

 

 それなら・・・それならこの男は一体何者なんだ?!


 俺は避けたと同時にバランスを崩して倒れ、転がりながらディーバが石化しているテーブル近くまで移動した。


 「お、お前もまさか・・日本人?」

 

 男は俺の質問に対して唾を吐きながら汚物を見るような目で睨んでくる。


 「 (もと) ・・だ。 俺は前世が日本人の()()()だ」


 男は剣を振り下ろした際に床に突き刺さった剣をいとも簡単に抜き出して俺に剣を構える。


 「それよりもテメェ・・・よくも()()()に手を出してくれたな・・」

 「・・・俺の・・・嫁?」


 一体誰の事を言っているんだ?

 まったく心当たりのない発言に俺は怪訝な表情で男を見る。


 「ふん。 しらばっくれるか。 あぁ嫌だ嫌だ! 何処の世界の男っていうのはなんでこうも人の物を取る事が好きなのかねぇ? 俺には全く理解ができねぇよ」


 男は深く溜息を吐きながらまた俺を汚物を見るような視線を向ける。


 「その子はな。 ディーバはこの俺の未来の嫁なんだよ!」

 「・・・・?」


 真剣な眼差しでそういった男に俺は頭を斜めに傾ける。


 「え? なに? あんたらやっぱりそういうご関係だったの?」


 俺はディーバと男を何度も見返しながら質問する。 

 すると男は急に大声で笑い始めた。


 「そうなんだよ。 俺とディーバはずっと昔から心が通じ合っていた相思相愛の関係なんだよ! だけどな? ディーバはひどいんだぜ?」


 男は急に大声で笑ったと思えば急にしおらしくなり肩を落として涙ぐむ。


 「ディーバはよ。 心が通じ合ってる俺というものが居ながらすぐに別の男と楽しそうにするんだ。 ()()の頃からそうだ。 彼女の事は俺が1番よく知ってるんだ。 彼女は俺だけを見ていないといけないだよ!」


 初めの方の話を聞いてる限りではディーバがかなりの男たらしのように聞こえていたが、男の発言が徐々におかしな方向へと進んでいく。


 「・・・あの。 あんた本当にディーバと恋人とか夫婦の関係だったの?」

 「もちろんさ! ディーバは俺と会うたびに笑顔で挨拶してくれるんだ!」

 「えっと・・それだけ? お互いがちゃんと同意の上で男女の関係をきづいてるんだよね?」

 「同意なんて俺達には必要ない!! 俺達はこの世に生まれた時から結ばれる運命になってるんだ!」


 ディーバがこの男の事が苦手と言っていた理由は、ディーバが見ていない所で不気味な笑みを浮かべていた理由がすべてわかった。

 こいつは只のストーカーだ。

 相手の事なんてお構いなしに自分の好意を押しおつけるタイプの奴だ。


 「・・なぁ。 あんたさっき自分の事、転生者って言ったけど。 もしかしてこの石化の元凶ってあんた?」

 「あぁ。 俺だが?」


 男は悪びれもない顔でそう答えた。


 「本当はディーバまで石化するつもりはなかったんだぜ? 俺の目的はこの世界でディーバと2人きりの世界を創り上げる事が目的だからな? だからディーバが俺と同じ世界に転生してくるまで何百年も人を石化させて待ってたんだ。 だってディーバが生まれてくる時に悪い虫()があまり増えていたら大変だからよ~。」


 ただ話を聞いているだけなのに背筋が寒い。 

 これは死とかそういう次元ではなく、現代の時代でも感じた事がある感覚。 

 ・・・不快だ。

 聞いているだけなのに体が震えるほど気持ちが悪い。


 俺は異世界に来て・・いや、この16年間生きてきた中で初めて相手を心の底からぶっ飛ばしたいと思った。

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