幕 間
————私は死んだ。 ・・・・いいえ。 殺された。
あの頃の私は歌手になるのが夢で毎日を必死に生きてきた。
両親に頭を下げて音楽の専門大に通わせてもらい、迷惑をかけたままじゃいけないからバイトをして学費を稼ぎ、夜はどこかの路上でライブをして、多くのオーディションを受けていた。
そして、専門大を卒業してから2年の歳月を得て、私はついにプロになるチャンスを掴んだ。
ある有名なスタジオ事務所に私のオリジナルソングが耳に入り契約してほしいと話がきた。
嬉しくないわけがなかった。
私はすぐに両親に涙を流しながら連絡をして、友人にお祝いしてもらい幸せな日々の中にいた・・・はずだった。
プロになる事から最後の路上ライブとなったその日。
青になった歩道を歩いていると1台の車が何のためらいもなくツッコんできた。
両耳にヘッドホンをつけていた私はすぐ目の前まで車が近づいてきている事に気が付かず、そのまま追突して意識を失った。
だけど私は見た。
車にはねられた体が吹き飛び空中に浮いた時だ。
顔は分からない。
ただ男の人が私を見て気持ちの悪い笑みを浮かべていた事を。
この男が元々私を狙って車をツッコんできたと一瞬で理解した。
しかし、私はその後すぐ地面に頭をぶつけて意識を失った。
(うそ・・・私、こんな所で終わりなの?)
目の前の視界には何も見えない。
何も感じない。
ただ真っ黒な世界がずっと続いていた。
(怖い。 いやだ。 出して・・ここから出して!)
だけど私は声どころか口の感覚もない事にこの時気が付いた。
(いやだ! いやだ! いやだ!!)
ようやく長年の夢だった歌手になれたのに。
両親を喜ばすことができたのに。
応援してくれた人達に恩返しできたと思ったのに。
私の人生は・・・ここで終わってしまった。
————それなら君に良い提案があるよ!
何処からか誰かの声が聞こえた。
私は途切れそうになっていた意識を何とか堪えて声のする方に視線を向ける。
するとそこに真っ黒な空間に円状に青く光る球体があることに初めて視認できた。
————もしも君がボクのお願いを聞いて叶えてくれたら元の世界に生き返らせてあげる!
(・・・本当に?)
————もちろん! ボクは嘘をつかないさ!
誰かも分からなず嘘くさい口調だったが、その時の私はまともな思考ではなかった。
ただやり直したい。
それだけが頭の中でいっぱいで私は2つ返事で受け入れた。
————ありがとう! それじゃあ君を今から異世界へ転生させるから!
(・・・異世界?)
————そうそう! それと君にだけの特別な能力も一緒に着けてあげるから! それで世界を救ってきてよ!
その言葉を最後に、真っ黒な世界は一瞬で真っ白な世界へと変わり円状に青く光っていた球体はまるで青空のように綺麗な色をした球体になっていた。
そして私は気が付けばディーバと名乗る1人の少女として生まれ変わっていた。