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異世界ダイブ!  作者: 黄田 望
第一章 【 癒しの歌姫 ディーバ 】
12/95

11話 【 イレギュラー 】


 『ダイブ異常発生。 繰り返します。 ダイブ異常発生。 繰り返します。 ———』


 何度も繰り返されえる警告音サイレンと機械アナウンスの放送が流れて10分の時間が経過しようとしていた。 

 日本ブレイブ本部施設、及びダイブシステム管理室は今大勢の従業員が緊迫した様子で管理室を行き来していた。

 そんな中、1人の男が管理室に入ってきた。

 着慣れたスーツに身だしなみを整えられた髪で速足で管理室に入ってきたのは、日本ブレイブ本部施設における長官職にいる柏木長官だ。

 柏木長官は真っ直ぐと大型スクリーンのすぐ目の前に設置されているデスクに近づき机を力一杯に叩きつけた。 

 その音で緊迫して動いていた全従業員がその場に視線を向けて息を呑み込む。


 「これは一体どういうことだ」

 「そんな事アタシが知りたいくらいさ」


 柏木長官が低い声で問いかけた相手は、日本ブレイブ本部施設において最高責任である女性。 

 本名は誰も知らず、人は彼女の事をマッドサイエンティスト。 

 またはその名からマッドと呼ばれている。


 「ならば今の状況は? それぐらい、お前ならおおよその予想はできているだろう」

 「う~・・ん。 そうだなぁ」


 マッドは高速で打っていたタイピングを止めてこの異常発生が発令されてからかけた黒縁の眼鏡をかけなおす。


 「まず今回ダイブするはずだったブレイバー、及び適正試験合格者の新ブレイバーの全員は無事だよ。 ダイブをする際、何故か彼らはダンジョンにダイブすることなく、その場にいたからね」

 

 マッドはエンターキーを1度軽く押した。


 「一応彼らの身体のチェックもすぐに行ったけど何も異常はなかった。 もちろん、貴方の娘さんもね」

 「む・・・」


 柏木長官は1番心配していた事を当てられて少し動揺する。


 「ゴホンッ。 ・・・それではこの異常音の原因はなんだ? このことに報告に来た従業員はまだ状況を理解できていない様子だったが」

 「・・・あぁ。 そのことなんだけど」


 マッドはすでに冷えたコーヒーを一口飲むとマウスを操作してディスプレイにある画像を表示させた。 

その画像には本来、異世界ダイブをするブレイバーの顔写真、個人情報、及び身体検査結果を記載されているデータだったが、そのデータには顔写真も身体検査結果も記載されていない。


 「なんだこれは? この何も書かれていない個人データがどうかしたのか?」

 「個人情報の名前をよく見て」

 「名前?」


 もう1度表示されたデータを見る。


 「―――――」

 

 すると柏木長官は目を見開いて体を固らませた。


 「どういう・・・ことだ・・・?」

 「分からない。 でも、私達が理解できてない状況が起きているのは確かだね」


 マッドはポキポキっと指を鳴らして口角を上げて小さく呟いた。


 「面白くなってきた!」


 柏木長官が体を硬直させてデータを眺めている時、2人の少年少女が管理室に入ってきた。


 「柏木長官! これは一体何が?!」

 

 最初に入ってきたのは数少ない5本の剣バッチを保有しているブレイバー、阿良々木光輝が駆け足で柏木長官の下に近寄る。


 「やぁやぁ阿良々木くん! 無事で何より。」

 「マッドさん。 一体何が起きたんですか?」

 「ん~? それよりその後ろにいる子は・・・」


 マッドは阿良々木の言葉を遮りすぐ後ろに何かを流している様子で顔をキョロキョロと動かしている少女に気を向ける。


 「あ、初めまして。 私は―――」

 「あぁ! 君がこの柏木長官の娘さん?! いやぁー可愛い子だねぇ! 今すぐに食べちゃいたいくらい!」

 「え? え?」


 舌を出しながら指を滑らかに動かすマッドに戸惑いを見せたのは、今回ブレイブ適正試験に一発で合格した新人ブレイバー、柏木桜月だ。


 「あ、あの・・・」

 「うんうん。 分かる! 分かるよ~! 今回体験とはいえ初めての異世界ダイブに異常がでたらそりゃぁもう戸惑うよねぇ~!」

 

 マッドは1人で勝手に納得していると、今度は桜月が気強い言葉で「あの!」と声を上げる。


 「ん? どうしたのかな?」

 「あの、ここに私の幼馴染が見学に来ていたはずなんですけど・・今どこにいるか知りませんか?」

 

 その質問に反応したのは柏木長官だった。


 「桜月・・」

 「お父さん? どうかしたの?」


 長官である父の仕事姿は真面目で厳しい事は娘である桜月もよく知っていた。 

 だから普段から身のこなしに気を付けて仕事中は常に不機嫌そうな顔をしていることも。 

 しかし、この時の父の顔は仕事姿の父ではなく、家にいるときの優しい父の姿だった。 

 だけど、それも少し様子がおかしい。

 

 私は何かあったのか父に尋ねようと近づいた時、先ほどまで父が見ていたパソコンに表示されていた画面に目線が向いた。

 そこには顔写真も何も書かれていない個人データだったが、一か所だけ個人情報欄の所に書かれてある名前を見て顔を青ざめた。


 「宮本・・・勇士?」


 そして、その画面にはもう1つ表示されている文字があった。



 ————ダイブ実行中――――




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