表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界ダイブ!  作者: 黄田 望
第一章 【 癒しの歌姫 ディーバ 】
10/95

9話 【 希望、そして絶望 】


 人だと思った人影に近づくと、そこには無数にある人の形をした石造があり俺は恐怖を感じた。


 それぞれの石造にはすべて、まるで何かに怯えながら逃げているような形をしている。

 石造には大人から小さい子供までの石造が草原を一面する範囲で立ってある。

 これだけ数えきれない数の石造を一体なんの為に、そしてなぜ全員の石造が怯えた様子の表情をしているのか。 

 疑問に思える事は沢山あったが、それ以上ただの一般人である俺が考えても何かを思いつくわけがない。


 「確かブレイブ適正試験にこんな試験があるって桜月が言ってたな」


 桜月は超難問と言われるブレイブ適正試験を受ける前からかなり優秀な人材だったのだが、幼馴染である平凡であった為、よく桜月に勉強を教えてもらっていた。

 その時、たまたま世界史の勉強を教えてもらっていた時だ。


 『そういえばね。 ブレイブの試験には異世界で未知な遺跡を見つけた場合の推理を試す課題が出てくるんだって』

 『遺跡の推理?』

 『うん。 ほら、よく考古学者とか石化を見つけて太古の生物がどんな姿をして生活をしていたが考察するじゃない? あんな感じ』

 『へ~。 ブレイブってそんな事までするんだ』

 『そうみたい。 それでね? 毎年少し課題を変えた形で同じような問題がでるんだけど、毎年必ず問われる内容っていうのが――――』


 「確か・・・()()()()()()()・・だっけ?」


 ———人の石造。

 ———怯えた表情。

 ———逃げる姿勢。

 ―――無数の数。


 これだけの数の石造を掘る理由なんてあるのか? 

 いや、それとも何か意味が? 

 そもそもなんで全部の石造が同じ方向に逃げるように立てられている?

 俺は正直見栄を張っても頭が良くない。

 学校の成績も下から数えた方が早くスポーツも得意というわけではない。

 だけど、この時の俺は頭が冴えていたのか、それとも恐怖のあまり不思議と頭の回転が速かったのかは分からないが、何故か1つの考えが俺に確かな確信を得た。 

 ・・・というか俺にはこれしか考えられなかった。


 「もしかしてこれ・・全部本物の、人間なんじゃ・・・。」

 

 よく見るとほとんどの石造にはヒビが入っておりかなりの年月が経っているのが分かる。 

 それに草原の一面に石造はあるが所々まるで何かを避けているように開いているスベースが多数見られる。


 「そしてここって元々は街か国で人が暮らしてた土地だった・・とか?」


 返事なんて返ってこない事など分かりきってはいるが、俺は最初に見つけた男の人の形をした石造に尋ねるように声をかけた。


 「よく見るとこの人、なんか盾?——みたいなのと槍っぽいの持ってんな。」


 もう一度周りを見渡すと他にも同じような武器と体を守る防具のようなものを装備している石造が見られる。 

 しかも、石造のすべては俺が知る現代の服とはかけ離れており、まるで大昔の布を縫い合わせたような服装だ。


 「ここは本当に何処なんだ。 これじゃあまるで・・・ん?」


 一瞬、無数に立つ石造の隙間に何かが動いたように見えた。 

 それほど遠くもない距離ではあるが、俺は目を細め先ほど違和感を覚えた辺りを見つめる。


 「ん~~~~~・・・んん?!」


 そして、石造の背後から覗くようにこちらを見る人影が見えた。

 今度は人の石造ではなく、白いワンピースにズボンを履いており、ハンカチを頭に巻いている少女の姿だ。

 

 「やったぁぁぁぁああああ! 今度こそ! 人だぁぁあああああ!!」

  

 「 !? 」


 あまりの嬉しさに大声で叫んだ俺の声に驚いたのか少女は石造の隙間を慣れた様子で逃げていく。 

 俺はそれに気が付くとすぐに追いかけた。

 

 「ちょっと待って! お願いだ!」

 「——————!!」


 しかし、何度呼び掛けても少女は俺の声に答えない。

 諦めきれず逃げていく少女を必死に追いかけていた。 


 その時だ。


 少女が逃げていく方向から何かが飛んできて俺の頬をかすめた。 

 かすった頬からは血が流れる。


 「・・・え?」


 俺の頬をかすめた物は後ろの石造に当たり地面に落ちる。 

 それは矢だった。

 漫画やアニメとかで見た事がある原始的な作りで木の棒の先端に尖った石が縄で結ばれている。

 

 思わず足を止めた瞬間、俺は心臓が握りつぶされるような圧力を感じた。

 石造の影から次から次へと俺を囲うように人が出てきた。 

 それも剣や弓といった武器を俺に向けて構えて。


 俺は初めて 死 というものを実感した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ