序章
少し昔までは異世界と呼ばれるジャンルが流行っていたそうだ。
漫画・アニメ・小説ラノベの系統の本で異世界へと転生、または召喚されてチート級の能力を手に入れて異世界を旅したり悪と戦ったりしている物語。
もしも自分が異世界に行けば、どんな人生が待ち受けているのか、当時の人々はその魅力に惹かれて夢中になっていたそうだ。
———異世界なんて碌なものじゃない。
祖父が昔から俺に言っていた言葉だ。
口癖だったと言ってもいい。
祖父はまだ幼い俺の抱き上げながら空を眺めていつも言っていた。
だから俺も異世界は漫画やアニメのように見ていて高揚する展開の物語ではないのだと覚えていた。
―――西暦2220年。———
漫画やアニメ、そして小説ラノベに異世界ジャンルと呼ばれる物はない。
異世界に憧れを抱いている若者も、魅力されて惹かれている者もいない。
だって、今の時代、異世界なんて珍しくもないのだから。
俺は学校の帰り道、いつも祖父が眺めていた空を見る。
そこには広くて青くそして、とても綺麗な青空と空を眺めるなら必ず目に入る大きな青い球体が浮かんでいた。
世界は今、異世界への攻略へ向けて物語が進められていた。