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神子

 神母の家。

 とは言えここで寝ているわけではないだろうと思う。

 木で組んだ円錐型の低い家だ。多分作業場だろうか。

 左右には壺や石器、短い丸太のテーブルなどが置かれている。


 奥に神母が座ったので、入り口側に座る。

 後ろの宴の声が聞こえる。

 少し落ち着かない。


 神母はこちらを覗くように見て、神妙に語りだす。


「さてトーラ、あんたにはふたつほど聞かなくちゃならんことがある」


「はい」


 盗み見がバレてたのか?と内心焦る。


「お前、神から祝福を受けたのかい?」


 神母はそう聞いてきた。


 素行の悪さを指摘されたようにも聞こえるが、この初期不良っぽい鑑定能力のことかもしれない・・


「受けた、と思います。何かしましたか?」


 前者の意味合いを強くして、とぼけた返答をする。まるで叱られるときの子供だ。


「ちがうちがう。お前は良い子だ。聞いているのは・・・他人とは違う、そう、特別な力を持ってないかいってことだ」


 神母は手を振って正し、聞き直してくる。

 それはそれで神様から不良品渡されましたとは言い出しにくい。

 あと検証もろくにしないでそう言うのは個人的に好きじゃない。


「…持っていますが、今はまだわかりません。」


 悩んだ結果、そう正直に答えることにした。


「それは何でだい?」


「…まだどういうものかわからないからです」


 正直に言う。

 どう答えればいいか自分でもわからない。



 神母は下を見て「んー、ん」と低く唸る。

 考えてくれているのであろう。

 “使えますがわかりません”とは、文法的に変だ。何かごめんなさい。

 まとまったのか目線をこちらに向け、聞いてくる。


「ここで使えんか?」


 そのくらいなら


「使えます」


 と言ってしまう。

 まぁ周りに被害は出さないだろうし大丈夫だろう。安請け合いか?


 神母を見て“鑑定”と念じる。



 視界の、今度は両脇に何かが大量に表示される。


(え?)


 正常に動いたのかと思い、その表示に意識を向ける。

 視界がずれると表示も動く。

 しかし何故か文字は認識できる。

 緑色の文字のような記号のような、見たことのない字体が何列も並んでいた。


(は?)


 最初は文字化けかと思ったが違った。

 知らない文字(?)だった。

 “鑑定”の突然の変化に戸惑っていると、


「使っているのか?」


 と視界の中央の神母が聞いてきた。向こうには見えないらしい。


「はい」


 短くそう答える。意識を表示に向けているため、思考を割く間も無い。

 この表示が見えていないのだろう。

 神母が膝に腕を置き、頬杖をついてずっとこちらを観察している。

 なら大丈夫だろうと、視界の中の“鑑定”を認識して思考することにした。

 相変わらず、わからない。行の末尾数桁はせわしなく動いている


(こちらの世界の文字・・・か?見たこともないぞ?)


 紙や本なんてない世界だ。

 今までこちらで文字を見たことは無かった。

 文字を探したことはあったが見た限りでは無かった。


 神子が頬杖をやめて、


「体を触っても構わんか?」


 そう聞いてきた。

 大丈夫だろうと思ったが未検証だ。あまり気は乗らないので


「おそらく」


 と曖昧に返事をする。

 神子が座ったまま近寄り、自分の左腕をとる。

 手を挟んだり、掴んだりと触診される。

 その間“鑑定”は末尾の動きは激しくなったが、それ以外は変わらなかった。


 次は右手。

 左手と同じように診られていくと、二の腕を掴んだところで


「ここが少し熱いかね」


 神子がそうこぼす。

 え?と思い、掴まれてる部分を見る。

 熱いという感触はなく、掴まれていることしか感じられない。

 温度を測るように手の平をあてられてる。

 手首からそこまで。やがて手の平を放し、一瞥すると


「これ、かね」


 と言い、その部分に指を当てる。


 そこには少し大きめのホクロがあった。


(ホクロ?)


 ホクロなんて、ただのホクロだろう。という感想しかなかった。

 神子が指を放したので、自分の手で確認する。

 確かに少しだけ熱を持ってる気がする。


「それが熱いなんてことは聞いたことがない。もっと大きいものなら、なるだろうがね」


 大きい、出来物とか、膿のことだろうか。

 少なくとも自分もホクロでそんなことは聞いたことが無かった。

 他のホクロを探して触ってみる。熱は持ってない。

 そうやって手をパタパタとしているところに、


「その力を使うとどうなるんだい?」

 変わらない調子で神子が聞いてくる。


 文字が、と言おうとしたところで、その言葉が無いことに気が付く。

 行も、箇条書きなんて言葉もない。言葉を探して伝えようと考える。


「わからない形が左右にいっぱい見えます」


 と答えることにした。子供か。

 神子の顔が険しくなった。

 これ以上は難しいですごめんなさい。


「今も見えるのかい?」


「はい」


 少し身構えてしまう。

 視界の端について回る文字群はまだ見えていた。

 意識をしないと直ぐにぼやけるが。


「ここに彫れるか?」


 土の床を指さす。

 そうか。紙とペンは無くても、土に書けばいい。

「はい!」

 体を乗り出して土に指で大きめに書き出していく。

 書くのは右側に映る、一番上の少し大きめにある6桁の文字だ。

 この文字は変化してなかったし、わかりやすかった

 意識を指と“文字”に切り替えながら土にその形を描いていく。


 そうして、入り混じった曲線と点で構成された1文字が土の上に描かれた。


 体を戻して、“文字”と比較する。少し崩れた部分があるが概ねあっている。


「この形と、他にもいっぱい形があります」


 そう言って示した。


「むー・・・」神子が唸って、険しい顔でそれを見ている。


 もし、神子がこれが何か知っていたら、当てはめていけばいいだけだ。

 集落の長である神子ならば、と願う。


 暫くして、体を戻した神子がこちらを向き言う。



「わしにもわからん」


お目汚し失礼します。

婆だと思うだろ?でも40なんだぜ、これで

シャーマンはこれ!って固定概念が強いので・・・

地球の石器時代を考えると恐ろしい60くらいまで生きる設定です。


言葉は難しいですね。

気を付けて専門用語や熟語は避けてますが、キャラ付けしたい部分では変えてます。

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