開花
シャーマン = 神子 です。
自分はまだ魔術を諦めきれていなかった。
集落を出れば使っている人がいるかもしれない。
どこかで糸口が見つかるかもしれない。と願っていた。
何より、魔術のような感触をトーラは既に体感していた。
(あの時を辿る・・・)
産まれて間もなく行われる儀式をトーラも受けている。
あれは何だったのだろうかと、後日改めて思い出そうとした。
しかし、母に抱かれて外に出たことと、首が痛かったことしか思い出せなかった。
それ以外は非常にあやふやになっていて、催眠術なのかと思った。
しかし、あれが魔法かもしれないという望みは捨てきれなかった。
(最後の機会かもしれない)
様々な感情を混ぜて儀式に臨んでいた。
自分が物思いにふけっている頃、父オウディが
「良かったな、イーサ」
と言い、兄イーサの頭に手を置く。
「えへへ」イーサは照れているかのように笑う。
「おめでとう」と自分も祝福した。「ありがとう」とイーサは感謝を返した。
(許嫁みたいなものだ)
叔父ファズとオゥディの世間話で聞いていた。産まれた順に男女で組んでいくのだ。
イーサは今回産まれた女の子と組まれる順番だった。
もし、トーラの代わりに女性が産まれた場合も、最悪は近親であろうと組んでいたであろう。
ちなみに、ファズの世間話などに出てきていた、次がいつ生まれるかわからない。それは自分の許嫁に直撃していた。小耳に挟んだ程度だが、たぶん適齢期の夫婦が暫くいないのだろう。
医療も何もないこの時代、リスクは取らないであろうなと推察していた。
ちなみに今回の出産夫婦はファズの子、ケイルの許嫁の女の子がいるところだ。頑張ったのか、計画的だったかもしれない。
そうしてイーサを祝福したのち、
「イーサとファズの義妹を守ることを誓おう」
オウディがファズ親子に言う。親戚という間柄である。
「こちらこそ、ケイルとリアナを守ることを誓う」
ファズがそう返し、5人がそれぞれ握手する。
連帯感が強い。
一通り終わった後。集落から人が降りてくる。
出産を助けたり、宴会の残りの準備をしていた人らだろう。
そのうち2人が駆け寄ってくる。母へスと、ファズの妻リズだ。
「産まれたよー!」
そう言ってヘスがオゥディに抱き着く。
「おかえり、よくやったな」
そう言ってオゥディは労う。
出産を目の当たりにして高揚してるのであろう、そのヘスの肩をポンポンと叩く。
暫くそう抱きあっていると、ヘスがすすり泣きだした。
「おいおいどうした?」とオゥディが聞く
「わかんない・・・けど、産んでくれたのが、嬉しくてっ」
最近の二人の子供を産み、出産の辛さはヘスも十分知っている。
強く共感し、応援したのだろうか。
ちなみにファズ夫妻はそうはなっておらず、その様子を暖かく見守っている。
「よかったな・・・。ほら、子供たちも居るんだ」
励ますようにそう言って、ヘスを少し離した。
「イーサ、トーラ」気付いたヘスが涙を拭い、手を広げて招く。
子供が走り寄り、足や腰に抱き着く。
その頭をヘスが撫でながら、「良い子達ね」と言う。幾分か落ち着いたらしい。
その後、ファズ親子を思い出して、少し照れつつ握手を交わしていた。
それから程なくして、儀式の合図が響いた。
両手を組み、祈りの言葉を語りだす。大人たちのゆっくりとしたテンポに合わせて語っていく。
しばらくして神子が見える。語りながらひざまずき、なお語る。
次に母子、夫が下ってくる。出産直後だが、しっかりと歩いているように見える。
(このあたりで眠くなった・・・)
祈りを口にしつつ記憶を掘り起こしている。ここからが重要だと気を引き締めていた。
神子を先頭として祈る人の道の中を歩く。なるほど確かに横姿だ。
視界から見えなくなるが、神子が擦り上げてある、石板の上に乗った音がする。
そして
カッ!!
神子が石板を打つ。祈りの言葉をやめて目を閉じる。…のだが、自分は薄目を開けていた。
兄が許嫁にあたるということで、神子に近い位置だ。少し首を動かせば見える。
(バレたら村八分とかあるんだろうな・・)
神子が赤子を渡されて、前を向く音がする。
少しずつ首を動かす。
誰も目は開けていないはず、大丈夫だ。神子が視界に入る。
神子が空に、世界に向けて朗々と語りだす。聞いたことのない言葉が多い。
私に任せてください、か?
カッ!!
足で石板を叩く。何で叩いているのか。語り口は赤子に向く。
魔法らしさは無い。通る声であるが、あの時感じたものはなかった。
同じように言葉は家族に従え?程しかわからなかった
カッ!!
・・・カッ!!
何度か石を打つ
言葉も断片的にしかわからない。魔法のような気がしない。
そして
カッ、カッ!!
石が二回打たれる。
ハッと気づく、いや思い出す。ここで自分は願ったはずだと。
何故か抜け落ちていた、試していなかった、思いつかなかった。
(“鑑定”!!)
無意識に神子へむけてそう念じた。
すると視界の端に何か表示されている。
『XX』
(…え?)
呆けている間に神子が赤子を差し出しす。首が重力につかまり倒れる。
程なく赤子が泣き叫ぶ。その声なき声でトーラは現実に戻った。
(XXって何だ?)
その表示も消える。再度“鑑定”と念じる。変わらず『XX』が表示される。
赤子が泣き叫んでいることも構わず、神子は熱に浮かれたように語り、上へ持ちあげる。
大きく息を吸い始める。
時間だった。
首を戻して、目を閉じて祈る姿勢に戻す。
「祝福を―ー!!!」
神子が叫んだ。
お目汚し失礼します。
年齢設定と集落の人数、規模に悪戦苦闘。。。
一塊になってるペアが4組になったった。。。
貴重な母の描写。もう少し出張ってもらいたいところなんだけど・・・