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15.0話 母として

※昆虫食が少ーしだけ出てきます。

 翌朝。


 薄い光が暗い視界を明るくし、自分は目を覚ました。

 空は青を取り戻しつつあった。


 腕に重みを感じ、ぼんやりとした目でその先を見ると、エレスに腕枕をして添い寝するような形になっていた。


 そう確認して気が緩む、と今度は足が硬いと感じはじめる。

 エレスのいない側の足だけ少し動かしてみる。やはり痛い。昨日酷使しすぎた。


(今日は休息日だな…)


 このまま歩いて長引かせるより、ここで休んでしまった方が良い。まだ道のりもある。

 また、エレスも昨日倒れてしまったばかりだ。

 そうしようと決めることに抵抗は無かった。



「……ん…?」


 少しのその動きに、エレスが目覚め始めてしまった。

 脇をこそこそとエレスが擦り、こそばゆい。

 やがてエレスが目を擦りながら、こちらを見上げ、



「…おはよう、エレス」


 そう言って、新しい朝を迎える。


「……おはよう……トーラ…お母さん……」


 それはまだ眠そうな声で、そう応えてきた。



 エレスは上体を起こして、周りを見渡す。

「あ…」と声を漏らして焚火の残りを見る。少し哀愁が漂っている。


 自分もあちこち痛む体を起こし「…ちょっと、待ってて」と言い、ヒョコヒョコとその中身を見に行き、「大丈夫だ、温め直そうか」そう言うと、エレスは笑顔で応えた。



 ―――



 …そうして朝の食事を終える頃に


「エレス、今日はこのまま、ここで休むことにしない?」


 そう提案した。


「…え?」


 しかし、エレスがキョトンとした顔で疑問の声を出した。

 エレスは朝起きても、けろっとしていた。痛みもなく昨日の疲れはあまりないらしい。

 エレスのその反応に、少し戸惑う。

 歩きたいのだろうか?これまで手も貸りずに歩いていたことを思い返す。

 しかし無休で歩くのも良いことはない。昨夜は断念した説き伏せることに決めた。


「無事に辿り着くにはこういう日も必要なんだ。そうしないとまた倒れてしまうから…」


「…でも」


「エレスのためでもあるんだ。歩くことが出来なくなる前に、今日は休むだけだ」


 少し脅迫めいている。もう少し良い言い回しはあるかもしれない。

 今現在は、自分の状態が悪いのが主な理由である。


「……うん、わかった」


 了承はしたが、エレスはやはり、少し俯いてしまう。


「そのかわり、今日はいっぱいお話をしようか」


「…うん!」


 母親なりの飴を使う。遊ぼうとは言えない。自分が辛い。

 彼女はそれに笑顔で応じてくれた。



 それから自分の知っている、この世界のことを教えていった。

 自然、食べ物、動物、道具、出来事等々。

 見えるもの、そこに在るものは、それを使って話していった。

 ある程度は知っていたため、それの答え合わせという節も多々あった。

 エレスは昨日とは打って変わって、よく聞き、よく話し、表情も豊かになった。

 自分も「トーラお母さん」と呼ばれ続けて、そう接するようになれた気がする。…なれてしまった気がする?



 …人や集落に繋がるものは極力避けた。

 それは踏み込んでいい部分だと、まだ確信は持てなかった…



 陽が高いお昼頃には虫料理に挑戦した。

 朝の食事の際、「虫は食べないの?」と言われてしまった。

 エレスと自分が近くで捕ってきたそれらで色々と試した。

 …エレスは最終的に喜んでくれていたし、もちろん自分も食べた。

 食糧事情もあるため、良い発見でもあった。



 ―――



 午後にあたる残った時間は、川辺に移動しての授業だ。

 遊んで良し、習うのも良し。…注意は必要であるが。


「冷たーい…」


 エレスはそう言って、足元を見ながら川に入ってくる。

 自分は既に川の浅い所に入って待っていた。少し不安になりながらそれを見ていた。


「滑るから気を付けてな」


「うん!知ってる!}


「はいはい。でも転ぶと痛いから、転ばないように」


「うん!」


 水を足でかき分けて、エレスがゆっくりとこちらに歩いてくる。それでも、少し早いように思えて仕方がない。

 …すぐに隣まで来れる距離で心配をしすぎているだろうか?


「はい、よくこれました」そう言ってエレスを褒める。「これくらいできるもん!」とエレスは笑顔で当然だと言わんばかりに応えた。



 手ごろな岩に腰かけ、足を川に浸し、授業を始めていく。

 水の中にいる生物、川がどこから来るか等を教えていく。

 川の先には膿があることも教えた。

 あくまでもこの世界で聞いた話だけであり、教えれることは少ない。


「へぇー、川からそのウミまで行って、帰ってくるなんてすごいなー」


「聞いただけだけどね」


 最後に、前世からのその魚の知識も教えた。それはこの世界ではまだわかってないし、いるかもわからない。

 母親を探すこの旅に、何か感じるものがあればいいと思ったからだ。少し縁起は悪いかもしれないが…



「ねぇねぇ、トーラお母さん?!」


「なんだい?」


「またあのお魚、食べない?!」


 授業が終わったところで、エレスがはしゃぐようにして、川の中のそれを指差して聞いてきた。

 指差す方向を少し見る。少し離れたところに、前に捕ったのと似ている魚がいた。


「あー、時間はかかるけど、待てる?」


「ううん、私がとる!!」


「…ん、そうか。あまり深い所へ行かないように」


 これからは水遊びの予定だった。興味を持ってくれただけ、ありがたいと思った。


「うん。すぐとれるから、大丈夫!」


「…危ないことはするなよ?」


 その言葉に何か危険な雰囲気を感じたので、もう一度釘をさす。




「うん!見てて!」


 そう言うや否や、エレスは座ったまま、おもむろに片腕をその魚に向ける。

 見覚えのあるようなその姿に、まさか、とそう思う前に、


 エレスの手から、微かな光が魚に向けて放たれた。


 水面にわずかに波紋が立つ。

 ほんの数瞬で、その魚は薄く光っているよう見える。周りの魚たちは一斉に逃げ出した。

 光を纏った魚は、体の向きもそのままに、強く抵抗する素振りも見せず、こちらに吸い寄せられるように、ゆっくりと近づいてくる。

 やがて魚は川面から出て、その身を浮かせ、体を横を向いたまま、エレスに向けてゆっくりと宙を泳ぐ様に近づいてくる。


 その先で笑顔で待っているエレス。その両手で掴む、と同時に魚に纏っていた光が霧散する。


 その途端、魚が思い出したかのように暴れ出した。


「きゃっ!…あっ!……あーあー」


 エレスが慌てて力を入れるが、その手からは魚はするりと逃げて、また川に戻ってしまった。


 自分はそれらを、複雑な思いを抱きながら見ていた。

無休で歩かせてなかった?…サーセン。

もっと詰めてから進めないと厳しいですねぇ。

ちょっと煮詰まってきちゃいました。。

食事シーンはお見せできなくなるかな~?

虫がこれから毎回献立に入ります。

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