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5.0話 出発

 結局、金属、鉱石探しは、山の集落に頼ることにした。

 水車の目標も、時間制限もあるため、こちらでは手一杯ということもあるし、少し探した分では微々たるものだった。

 これから商人になり、向こうへ行った時に、「ここら辺に多いかもしれません」と焚きつけるのもいいかもしれないと思っていた。


 そんな打算をしつつ、たまに来る商人に、それとなく精錬の知識を教え始めることにした。

 交易してそれらが手に入るようになれば、こちらもまた負担も減るだろうと思ったからだ。

 教えたとしても基礎的な木炭、石炭、風を送る鞴などだ。


 こちらでもファズがその気になって色々と焼き始めたこともあり、カモフラージュは出来た。

 鞴は膨らませた革袋を潰して風を送っただけ、木炭は事故を装い、石炭は間違って投げ入れただけであるが。

 ファズには申し訳ないが、この辺には鉱石はあまり無いですとは言えないし、まだもう少し続けて欲しかった。

 なので、比較的砂金が多い所を、偶々見つけたと装って、時々紹介した。



 しかし、山の集落は違った。

 鉱脈を見つけたのか鉱石が豊富なようで、鞴は動かし続けるために木の板を付けるなど、改良され始めた。

 最初に銅や金を見せてから2年後、早くも銅のナイフが交換する品に出来てきた。

 改良の話はその時に聞いた。

 ファズはその時打ちのめされたか、焼くことは控えるようになった。本当に申し訳ない。



 ならば、やはり水車を準備しなくてはならない。こちらの集落もその段階である。山の集落に対して、紡織は既に打ち止めに近い。

 銅という新たな生産を獲得した集落から交易でそれを得るための、増産する麦、保存食、天然石の工芸品などの効率化を考えるべきであった。

 また他の集落への交易のためにもそうしなければならない。これは自分自身の問題になるが。

 もしかして、こういう時に奴隷が出来たのだろうか?道徳的にそれは抵抗があるが、どちらにせよ人は集める必要があった。

 自分一人で道具を作るのも限界はあるし、手が届かない場所は多い。



 折よく、そんなことを願う時にその水車は一通り組み上がり、設置することが出来た。


 自分は12歳。来年には成人となり、商人としてこの集落を離れるときが多くなる。

 既に決定していたことだ。そこから逆算して色々と動いた。

 途中、鉱石という寄り道をしたおかげで、思ったより時期がずれてしまったが、大人たちの承認や援助、そしてイーサの援助も貰えたことで、何とか作り上げることが出来た。



 水車を置く場所は小川だ。自分の膝付近まで浸かるその川から、水路を作り、落差が付くように水車の部分は掘り返して、また小川に戻す。

 必要のない時は止めれるよう、水路は大きめの木の板で、堰き止めれるようにした。手伝ってもらっていたイーサからは「何かズルいな」と言われた。

 その場所には、簡素に木組みの小屋と藁の屋根を作った。


 一通り基礎を作った後は、黙々と木を伐り、木材をこしらえた。

 時間は無かったので、どの作業でも“増幅”を要所要所で使った。


 作っている物の大きさを見かねたか、大人たちも援助してくれるようになった。木炭と木の板、石の面に神子が使うインクなどで書いたそれで、全体像を伝えた。

 そうでなくても、もともと設計図なんてモノはなく、全て現物合わせで作ってきた人らだ。見本となる木の部品を用意すれば、ほぼ同じ物を作ってくれたし、手も早かった。


 そうして出来上がった水車は、隣にいる父オゥディの背を超える。

 それでも少し小ぶりな気もするが、能力は十分であろう。

 軸もある程度伸ばしてある。


「あとは水路から水を流すだけか」


 そのオゥディがいう。

「そうです。ここまで助けてくれてありがとう」

 オゥディ、イーサをはじめ、周りにいる大人たちに感謝を伝える。


「トーラ、お前にはうちらも助けられているんだ。これもそうなるんだろう?なら、うちらが手を貸さないわけないさ」


 ファズがそう言ってくれる。ケイルも他の大人たちもそれぞれに笑い、頷き、「そうだぞ」という声も聞こえる。

 さすがにこの光景は照れ臭い。


「上手く回ればいいんですけど・・!それじゃあ水を出してきます!」


 逃げるように、川にある板を外しに出かけた。ドンと構えるのは苦手である。


(頼むよー・・!!)


 知識はあるが、本格的なものなんて作ったことは無い。祈る気持ちで水路の板を外す。小川から水が分けられてくる。水路を満たしていく。

 目で水を追っていく…


「ザザッ」


 水がかかる音がして、水車はゆっくりと動き始めた。


(どのくらいだ!?)


 小屋では「おおーー!!」と歓声が上がるが、自分はその能力を注視する。



 早くなっていき、ある程度の能力が認められてようやく。


「ヨシッッ!!」


 よかった。

 もしこれを失敗すれば、この先の自分の知識は縮小せざるをえなかった。山の集落に託す他なかった。来年商人となる自分を置いて、完成できるか不安であった。

 強いプレッシャーは感じ、不安があった。しかしその重荷は外される。




 ――――――――――




 水車が出来上がった翌年の春。


 自分は成人した。神子の家で簡素ながら祝福を受ける。

 儀式は次代が引き継いでいるが、まだあの老獪な神子は健在であり、その儀式を見守った。

 孫ともいえるさらに次代の神子も産まれている。

 いくつなんだろうか?



 その後、朝の冷え込みが緩む時期から、商人として活動し始める。


 出発前の日、打合せと心積もりを、父オゥディと話し合った。

 この集落のこと、抑えるべきラインなど、どこまでやっていいかの打ち合わせだ。


 ある程度詰めていったところで

「ところで、さ。ここに来たいという人らがいたら受け入れてくれる?」

 そう切り出す。

 オゥディは

「まぁ、そうだな。交易が決まったら、お前の判断で呼んでくれていい。決まらなければ、せいぜい2、3人というところだろうな」

 そう言ってくれた。


「ん、わかった」と言い了承する。


 交易をしていっても、基本的に人手が無くては品は作れないし、負担は大きくなるばかりだ。

 集落の人も増えないわけではない。ここ5年、出産する夫婦は多かった。義兄ケイルのとこも子供が産まれた。

 しかし、亡くなる人も少なくは無い。ケイルの両親も心配な歳ではある。

 そう言った意味でも、活動できる大人は一時的に少なくなる時期でもあった。



「あとは何かあるか?」

「今はこれ以上は特にないかな…」

「そうか、ならこれを…」

 そう話を切り上げると、オゥディが手に握っていたペンダントを渡してくる。

 それは白く、部分的に黄色い模様の入った、天然石のリングがついていた。

 それを受け取り、見てみる。

 うねるようなラインと黄色い模様が綺麗だ。手が込んでいる。

「これ…」と感嘆の声を出そうとすると


「お前に祝福があらんことを」


 オゥディはそう言って祝福を願ってくれた。

 それは素直に嬉しく、父に感謝した。



 出発日になる。

 家族を先頭に集落の人らが集まってくれた。

 母ヘスやイーサが、自分の首にかかっているペンダントを握り、祝福を願ってくれた。

 父を始め、家族や集落の人らには転生した自分にとって、世話になりすぎている。


「ありがとう、それじゃ行ってきます!」


 一通り祝福の言葉を受けた後、そう言って品物を載せた馬を引き、外の世界へ歩き出す。


 水車は動き出した。

 脱穀の装置は作ってきた。歯車、カム、リンクなどの原理は教えておいた。

 イーサや大人たちが何か作っているかもしれない。


 商人となって各地を巡りそれが必要な集落を探す。

 すんなり見つかればすぐに帰れるが、長い期間かかるかもしれないものだ。

 しかし、外の世界でのいざという時の補給はあまり望めないだろう。

 行き倒れる可能性もある。


 自分が倒れても、集落には最低限のことはしたつもりだ。

 逆に生き残る術を集落の人らからもらっている。


 売り歩くこれもほとんどは集落の人が作った物だ。

 自分が持っている物は全てが集落の人で出来ている。

 所詮自分は道具を作り、少し楽になった程度に過ぎない。


 まだ見ぬ食材等を求めて、この集落を潤すのに必要なものを持ち帰るために、大事に売ろう。

 そう思いながら、後ろから祝福を願う言葉に押されて、集落を出た。


 駆け足ですみませんが、集落はこれで終わります。もう少し色々入れた方がいいかもしれません。

 女っ気なく、ただ開発するのもスパンが長いのでちょっとなぁという所です。

 下掛け水車の能力で脱穀機っていけるかなぁ?鉄の刃の代わりに骨を使う想定ですが…折れそう…石臼挽きに切り替えようかな…製作期間がつらいな…


 商人とは言え、一般的なファンタジーの行商人とはまた違い、受注を取ってくる営業マンというべきでしょうか。名前変えようかな?…交渉人?ちょっと違うな…

 なので感動的な家族の送り出しとかはちょっと違うなということで少し盛ってさっくりとしました。正直、受注いっぱいとっても、集落の人らが奴隷のごとく働かされかねないし…。


御意見お待ちしております。

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