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思考停止

作者: 梨

幸せなことがあると、思考が止まってしまっているのではないか

もう考えることをやめているのではないかと不安になるときがある。

しかし、そう思っていることが

考えていることなのである。という矛盾に多くの人は気が付かない。

ただそういった錯覚に陥る理由としては、例えば以前不幸せだったときに考えていたことと幸せな今考えることは全く違う内容のものであるはずであり、今まで考えていたことを考えていないことから自分の思考が沈黙の状態に陥っていると感じるだけである。それはただの今まで話していた相手の声色が変わったからとその相手が話していないと見なすようなもので、自分の思考の声にもう一度耳を傾けてみると意外と変わらず忙しなくしているものである。


深夜の3時に目が覚める。甘いものが食いたい。特にクリームたい焼きが食いたい。こういうときは口も脳も何を食いたいか両者同意しているようなものなので俺はただ従いそれを提供する他無いのである。

頭の片隅では週末に吸いすぎたタバコを絶っていることから来る離脱症状のようなものだろうとわかったうえで行動している。また片一方では彼女が恋しいから何か口当たり柔らかくて甘いものを求めているのだろうとわかっている。反抗期の子どもの言うことを聞く親はこんな感覚なのだろう。

外に出ると街灯よりも目立つ月が雲の無い空から輝いていた。

ほんの数か月前まで孤独でおびえながらどうにかしてそれを誤魔化そうと歩き回っていたときに比べてやけに情景がはっきりしている。

いかに車が少ないか、人影が無いか、信号が黄色で点滅していること。誤魔化そうとしていた声が大きかったためかそいつとの対話に気がとられていた頃の俺は死人のような顔をして、クラクションを鳴らされ高級住宅街の糞婆に怒鳴られていた俺が今は信号を見て、寒さを感じている。

声が恐ろしく静かになっていることに気が付く。まるで今までそもそも存在していなかったかのように。

喧嘩ばかりしていた手を焼いた相手がもうどこか見る影もなくなってしまったかのような感覚に陥った。

「幸せというものは自身を堕落させてしまうのか」「彼女と過ごす時間が増えてから考える時間が減っているのではないか」という声だけは聞こえた。


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