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神様?

作者: 尚文産商堂
掲載日:2016/04/30

昔からの言い伝えは、徐々に移り変わって、それから神様が生まれた。


「えー、そんなことって絶対ないよ」

現代では、神はいるかどうかわからない。

姓で神という人はいるらしいが、そうではなくて、不思議な力を持った人ということだ。

「いるぞ、神様はいらっしゃる」

明日そこに行こうと、おじいさんが話すので、俺はしぶしぶ向かうこととなった。


翌日車で行ったのは、手野八幡神社だ。

ここの宮司とおじいさんが知り合いらしく、掃除の最中に声をかける。

「ええ、連絡は受けていますよ」

電話でもしていたのだろう。

どうぞこちらへと、宮司に案内された。


「こちらでお待ちください」

拝殿の中に通され、宮司は建物から出て誰かを呼びに行った。

「ねえおじいさん」

「何だ」

「誰が来るの」

「神様だよ」

何が言いたいかさっぱりだ。


「お待たせいたしました」

そう言って襖を開けた宮司は誰かと一緒だ。

胸のところにドクロマークが入った白い服を着ている男が、ゆっくりと入ってきた。

似つかわしくないと思うのが、第一印象だ。

俺ですら、中学校の制服を着ているというのに、どういうことなのだろう。

「お初にお目にかかります、壺中方(こちゅうかた)と申します」

「壺中さんは、今は住み込みで働いてもらっています」

壺中は、何やら素焼きの壺を持っている。

ただ全体に封印用のお札が貼られている。

「えっと……」

「君が、神秘現象を信じない子かね」

「ええ」

おじいさんが勝手に話を続ける。

「神秘現象?」

「つまりは、超能力やそのようなことだ。じゃあ、早速見せてあげよう」

ああそうだ、と壺中がなおも話す。

「これから起きることを誰かに話したら、君は極めて危険なことになる」

「はぁ」

なんとも言えないそんな警告を受けて、俺は壺中と共に、拝殿のさらに中、本殿へと向かった。


本殿の中は、おかしいほどひんやりとしている。

「さて」

壺を本殿の中心に据えて、俺をその壺に触れされた。

「壺中天、という故事を知っているか」

「知りません」

「知らないか、そうか」

知らないならいいやと壺中はつぶやきつつ、何やら唱え出す。

カタカタと壺が揺れたかと思うと、あっという間に吸い込まれた。

「よろしい、目を開けてもいいぞ」

吸い込まれると思った瞬間、反射的に目をつむったようだ。

開けると、さっきまでいた本殿とは打って変わって、どこかの家の中にいるような感じだった。

今も住んでいるという感じだ。

「ここは……」

「壺の中だ。まあ、そう言っても、すぐには信じないだろうがな」

壺中天に出てくる壺を模して作られたらしい。

その話自体、詳しくは知らないが、かなり有名なのだろうか。

「俺が、何百年と封じられていたんだ。帝も世の中も、相当変わってしまったがな」

「あんたは一体……」

「物の怪さ。こう見えても、昔は名の知れた妖怪だったんだぞ。でもな、当時の陰陽師に封じられて以来、この壺の中で生活していたのさ」

いろいろと手を加えているらしく、床はフローリングだし、冷蔵庫もある。電気をどうとっているのかはわからないが、電気コタツや、テレビやパソコンまで置いてある。

ただ、窓はない。

それがすごく違和感を感じてしまう。

「では出るか」

ひょいと俺を持ち上げると、高く放り投げた。

天井にぶつかるかと思ったら、そこは床だった。

本殿の天井がいやに懐かしく思う。

「言ってた通り、これについては秘密だぞ。お前の血筋がいいから、これを特別に見せたんだ」

「血筋?」

「ああ、お前の爺さんは、先々代のここの宮司のいとこだ。ま、縁者と思えばいい」

この時代の律令は知らんがと言いつつも、俺は今の体験を反芻していた。

誰かに言うことはできない、そもそも言ったところで信じる人はいないだろう。

世の中の都市伝説の一つとなって消えていくのがオチだ。

だから、俺は何も言うことをしなかった。

強烈な体験を、じっくりと味わっていたかったからだ。

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