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支天神話 ― 片翼の大神に目を付けられた僕は妹の未来のために足掻き続ける ―  作者: ゆきと
0章  予言の子

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炎の呪縛

嵐の様な連撃の合間を突いて辛うじて距離を取ったアグリオスは悔しさに顔を歪めていた。


「何故だ!俺は神になったんだぞ。何故、神が人間如きに勝てない!」


「何を言っている。古来より人に討たれ封じられる邪神の話など幾らでもあるではないか。それにお前は神になってその力を使えるようになったかもしれないが、神が何なのかは気づいていないのだろう?」


「何のことだ。」


「神は『人に支えられる』存在だ。『上前を撥ねる』『寄生する』と言ってもいい。お前の様に支えてくれる人間がいない神ほど脆いものはない。」


話しながら間を詰めて斬り掛かるが、アグリオスは剣を実体のない炎から片刃肉厚の元の形に戻し、辛うじてゴーザの太刀を受け止める。

炎の剣では触れた瞬間に霧散してしまい、打ち合う事さえできないのだ。

それでも止めたと思ったゴーザの斬撃は一瞬で翻り、手や足を斬り捨てて行く。

それを再生すること自体は造作もないがその度に失われて行く自身の存在力が無視できない量になっていた。

トードリリーの様に仮初めの身体に宿って顕現しているのであれば現世の肉体を失っても存在が危うくなる事は無いが、今のアグリオスは神となった本体そのもの。

最悪の場合は消滅する事もあり得た。


「くそ!こんな事はあり得ない。こんな・・・こんなに差があるなど認められるか―――!」


うぉぉぉぉぉ―――と叫ぶとその身に纏う炎が勢いを増して燃え上がる。

自暴自棄になったのか、力を集中しての短期決戦に賭けたのか、残り少ない力を更に減らして気勢を上げた。

驚いた事に周囲にいた者に灯っていた炎がアグリオスの叫びに応じて勢いを増した。

その影響は広場の半分ほどまでに及び、強制的に火勢を上げられて数百人が苦しそうに身悶える。


ゴーザの顔が僅かに歪められる。



アグリオスはトードリリーの眷属となって、その権能の一部を使う事ができた。

アルマ・ダーロスもその一つ、今起こしている想念の強制搾取もトードリリーが切り札として考えていたものだ。

支配下にある人間を使い潰す可能性すらあるので多用できる能力ではないが、その効果は甚大だった。

減り続けたアグリオスの存在力は瞬く間に満たされ、身に纏う炎は勢いを増して能力を大幅に向上させた。


アグリオスの攻撃に徐々にゴーザが追い込まれて行く。

更に苦水の纏う黒い霧が減り、斬りつけた部分の崩壊も小さくなっている様だった。

あきらかに苦しそうなゴーザを見てアグリオスは笑みを浮かべていた。


「おまえ、トードリリー様の炎が着いているな。」


表面的には炎を消し、傷はユウキの治癒の力で癒したが、ゴーザの心には暴徒達のドロドロとした感情が流れ込み続けていた。

それはゴーザの心に炎が燻り続けていた事を意味している。

直ぐに対処したので全てを支配されはしなかったが、『その声に従いたい』と言うロジックサーキットの決断を別のロジックサーキットで打ち消し続けなければならなかった。


ゴーザの戦闘スタイルは変幻自在の2刀と予備動作無く放たれる魔導具の攻撃なのだが、ロジックサーキットを満足に使えない状況では戦い方は大幅に制限されてしまう。

全力のゴーザであったなら最初にアグリオスの剣戟を受け止めた直後に左の鞘で叩き、翻した右の水切りで両断して全てを終わらせることが出来た筈なのだ。


アグリオスが火勢を強めるとゴーザの顔が苦しそうに歪められた。

そして左腕から炎が閃き、直ぐに押し込まれる様に消える事を繰り返す。

余裕を取り戻したアグリオスは嬲る様に火勢を上げ下げし、苦しむゴーザがそのたびに左腕の炎を抑え込むことになった。

もはや一つのロジックサーキットでは抑え込むことが出来なくなり、意識の大部分を流れ込む声に抗う為に向けざるを得なかった。


そして、遂に息を乱したゴーザが膝を着き、動けなくなってしまった。

身じろぎひとつするだけで全てを支配されてしまう、そんな危うい瀬戸際まで追い込まれていた。



「そうだな。お前が家族を殺せ。さっき奥に逃がしたな。あの小娘と女を殺し、その上で小僧を殺せ。俺が手を出すよりも盛大に絶望して、さぞいい顔をしてくれるに違いない。」


「・・・だ、誰がそんなことをするものか!」


「その意地もいつまで続くか見ものだな。人間はその炎の呪縛から逃れられない。だが、いつまでもグズグズされても面倒くさい。お前の気が変わる様にもう少し派手に燃やしてやろうじゃないか。」


掌に炎を乗せたアグリオスはゆっくりと、苦悶に喘ぐゴーザに手を伸ばした。




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