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支天神話 ― 片翼の大神に目を付けられた僕は妹の未来のために足掻き続ける ―  作者: ゆきと
0章  予言の子

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セレーマ

ユウキは突如として炎の消えた右腕に驚いたが、すぐに自分のやるべき事を思い出して魔導具を身体の炎に押し当てた。

まずは左手、先程の反応を期待していっそ持ち替えてしまいたかったが、治癒の光がまたリセットされてしまうと致命傷を負いかねないので踏み切れなかった。

赤黒い炎と青白い治癒の光は争う様にせめぎ合ったが、しばらくすると炎は追い出されるように消えて行った。

炎が消えると横に移してまた同じことを繰り返す。

最初に右腕の炎がすべて消えた事は大きい。

これだけでセレーマの扱いが格段に楽になり治癒の効果がかなり改善されている。


断末魔の様にいつまでも燃え残る炎に苛立ちを覚えながらも、その感情さえタルタロス・サーキットに沈めて単純ともいえる作業を繰り返した。



◇◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 



探索者にとって『人殺し』は避けて通れない宿命の様なものだ。

長年、過酷なコルドランを行き来していれば襲い掛かって来る者を返り討ちにする事もあるし、動けなくなった仲間を手に掛けた者も少なからずいる。

皆その傷を心の奥に仕舞い、あるいは乗り越え、場合によってその傷の毒に身を痛みながら生きて行く事になる。

それでも『必要であれば人を殺す』覚悟を持ち続ける者だけが探索者としてコルドランに挑むことが出来るのだ。

だからゴーザが身を削る程の思いをしてまで威力を抑えているのは『殺人者』の汚名を恐れたわけではなく、ただ目の前の人々が自分と同じ神族の被害者だと言う同情心からに他ならなかった。

だがそれもユウキの命に代えられるものではない。

石の様に身体を丸めて耐えているが、大人でも無事では済まない程の暴力を受けているのだ。

現にユウキは徐々に弱っていて、目の前の人間を葦の如く一太刀で刈り取らなければ間に合わない程状況は悪くなっていた。


「止むを得ん。許せ!」

手首を捻り、峰を返すと小さく引いて横なぎに振る。


しかし振ろうとしたその直前の事、ユウキの手から眩い光が射したかと思うと右手の炎が弾け飛び、身体の傷が見る間に消えて行った。


「癒しの力だと!?」


直後に振り抜かれたゴーザの手にはいつの間にか峰を戻した刀があり、目の前の人間を―――今までより多少強くはあるが―――優しく吹き飛ばした。




ゴーザは驚きと感嘆を持ってユウキを観ていた。

もちろん身内の者が暴行を受けているのだから怒りや憎しみの念が治まる事はない。

だが、ユウキの振るう治癒の効果は高く、与えられた怪我は瞬く間に消えてしまうので致命的な状況は脱していた。


「あの光は・・・リューケンの鏡?いや、儂が付けさせた吸精樹の古木から採ったエリアルか。」

ユウキの持つ治癒の魔導具は『吸精樹のクルヴィ・リュクノス』と呼ばれている。


小さな吸血ツタが神素を蓄積して人の背丈ほどになると第2のエリアルを生成して吸精ツタとなり、更に成長すると株の中心から幹を生やし、3つ目のエリアルが出来て吸精樹となる。

そして、吸精樹として成長を続け、樹高が5シュードを越える大樹になると幹に檻の様なウロが出来て捉えた獲物を確保する様に成り、そして更に年月を経て周囲に頭蓋骨の山が出来る頃になると,獲物を少しでも状態の良い―――吸精樹にとって美味しい状態―――にしておくために治癒の効果を持つ第5のエリアルが生成される。

このエリアルは淡い燐光を発するので檻のランプ(クルヴィ・リュクノス)と呼ばれている。

魔導具に利用しても強いセレーマを受ければ淡く光るが、あくまで月のない夜に辛うじて判る程度のモノ、ゴーザでもあのように目も眩むほどの強い光を放つなど聞いたことがなかった。

しかも、その光に押されるように炎が勢いを減じて行く。


「何が起こっているのだ。」


ゴーザの疑問も当然だ。

自身もその身に受けたから解るがあれは神威が炎の様に見えているだけで物理的な法則に縛られるものではない。

ましてや、エリアルが発するとは言え光などに影響されるとは思えなかった。

だが更によく見れば不安定に揺れる光と押される炎は動きが一致していなかった。


「あれは・・・セレーマか!オーバーフローしたセレーマが炎に干渉しているのか。だが、そんなことが可能なのか?」


神が顕現するときには神素で顕現体を創る事が判っている。

神威もまた同じだろう。

だから神素を拒むセレーマであれば理屈の上ではあれを壊す事ができる。

だが神威は仮初めの身体とは言え顕現した神が造り出した物、個人のセレーマ程度でどうにかできる筈はない。

現に、300年前に邪神の1柱が顕現して暴れ回った時には10万人もの人間が3日3晩祈りを捧げ、その力を込めた神具で神威を破りようやく顕現体を退けている。


あの炎は人を媒介しているのでそこまで強さはないが、ゴーザでさえ神素を打ち消す魔導具の力を使ってようやく炎を消したのだ。

セレーマだけで圧倒している状況は目の前で観ても俄かには信じられなかった。


「だが全てはユウキの安全を確保してからだ。」


速度を増したゴーザに加えてエリグマ達の加勢もあって程なくユウキに危害を加えていた暴徒は排除された。




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