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支天神話 ― 片翼の大神に目を付けられた僕は妹の未来のために足掻き続ける ―  作者: ゆきと
0章  予言の子

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駆けて来た少女

白に花柄のワンピースを着た女の子は「やっぱり!」と言いながら息を切らして駆け寄って来た。

何処かのお嬢様っぽいのだが、ユウキには会った覚えがない。

「だれ?」

あまりの勢いに、つい半歩下がるとその動きで察してくれたのか、相手は1シュード(大人の身長程の長さ)程手前で立ち止まった。

「えっと、憶えてないか、な。一応ユウキくんとは親戚になるし、前にキャラバンの家族が集まってバーベキューをした時にもお話しをしたのだけど・・・。そっか・・・憶えてないのか。」

酷くがっかりしているので何だか悪い事をした気になってくる。

確かに、ゴーザのキャラバンのメンバーと家族で、バーベキューをした憶えはあるが、その頃は両親に冷たくされ始めていたので周囲の事を気にする余裕はなかった。

少女はしばらくの間、一人で落ち込んでいたが、やがて自分の頬をパーンと叩くとユウキに向き直った。

その仕草は最初の印象と異なって、男っぽくさえあった。

「よし、じゃあ、初めまして。ジョージ・シュプリントの娘マリーンです。前に一度会っていますがそれは忘れて下さい。私も忘れます。」

過去を切り捨てて『初めまして』と言う思い切りの良さは凛々しいと感じさせる。

若干気圧されながら、なんとか挨拶を返した頃にはお互いに可笑しさが込み上げて腹を抱えて笑い合っていた。




大まかな事情を説明して適当な話をしていると、皮鎧を着た男が店の前に立った。

ユウキ達より5~6才年上だろうか。

どことなく稟と張りつめた雰囲気があり、その背伸びした様な所は大人と呼ぶには危うい感じがする。

男は『視線で焼き払えるなら跡形もなく灰にする』とでも言う様に、露店の端から端まで見渡して『ふんッ!』とバカにしたように息を荒げて見せた。

ユウキにとっては、”たまたま覗いた露店”が”見ず知らずの他人”にバカにされても何も困る事はないのだが、剣呑な雰囲気で目の前に立たれるのは居心地が悪い。

早くどこかに行ってほしかったが、男は立ち去ることなく、こちらを向いて口を開いた。

「おい、お前!馴れ馴れしく近づくな。とっととお嬢さんから離れろ!」

突然怒鳴ったと思ったら、剣を抜いて斬り付けてきた。

『いきなり剣を抜くかなぁ。あー、その太刀筋だとあんたのお嬢さんの腕を斬るぞ。』

ユウキとマリーンを引き離そうとして二人の間を斬り付けたのだろうが、そこにはマリーンが上げかけている腕がある。

このままだと両断はしないまでも深く斬られる事になるだろう。

ユウキはドールガーデンで軌道を見切るとマリーンの腕を掴んで引き寄せて剣をやり過ごす。

ドールガーデンは少年が睨んできたときに既に展開していたものだ。

ユウキにすればマリーンを助けただけなのだが、相手の男にすれは『剣で脅したにも拘わらず、嘲笑うかのようにマリーンの腕を掴んでを引き寄せた』様に見えた。

「きさまー!」

頭に血が上った男は大仰に構え直すと、ここが街の往来だと言う事も忘れて殺気を振り撒きはじめた。

周囲にいた人々が悲鳴を上げて離れていく。

隣で露店を広げていた男は逃げるか、商品を護るか決めかねて中途半端な所でオロオロしている。

『オッチャンは三歩下がって商品を諦めるか、棒でも持って三歩前に出るか決めた方がいいな。』

およそ関係のない事を考えているが、マルチロジックサーキットを使ったユウキにはこれで普通だ。

正面に集中しながら、周囲の観察をしつつ戦略を練る。

場違いな感想はそのオマケに過ぎない。

『逃げてもイイかな。』

怒鳴っている感じではマリーンの関係者のようだし、露店は・・・店主も適当でいいと言っていたから大丈夫だろう。

石鹸の代金を預かっているが、後でもう一度くればいい。

方針を決めていざ逃げ出そうとしたが、相手がガマンしきれなくなる方が一瞬早く、大きく踏み込んで横なぎに斬りかかってきた。

『だから、お嬢さんを一緒に斬ちゃうって・・・』


ゴーザとの訓練の結果、今のユウキはドールガーデンで相手の筋肉の僅かな動きも感じとれる様になっており、ある程度動きを予測する事が可能になっている。

相手の踏み込みから予測した一連の動きでは、例えユウキが避けなかったとしてもマリーが斬られる事は間違いない。

このまま自分だけ避けるのは簡単だが、そうするとマリーンは致命傷を負う。

仕方なくマリーンの腰に手を回すと、マリーンも退避させるべく引っ張ったのだが、マリーンは突然腕をまわされた事に驚いて引かれた力について行くことが出来ない。

その結果その場で倒れる事になって剣の間合いから外れる事が出来なかった。

しかも姿勢が低くなった事で首元に剣が向かう最悪の事態を招いてしまう。

ユウキは剣の軌道を意識しつつ、もう一方の手でマリーンの側頭部を押して横倒しに頭を下げさせた。

女の子の頭を地面に叩き付けるような格好になってしまったが首が無くなるよりましだろう。

『!』

辛うじて間に合い、剣はマリーンの直ぐ上を通り抜けた。

髪の毛が束で斬られた様だがそこは我慢してもらう。

剣が露店の細い柱を斬り飛ばすと日よけの幌が落ちてきてユウキの姿を隠した。


「にげるよ。」

一時的に姿が隠れた瞬間、マリーンの手を引いて立たせ様とが、当のマリーンには訳が解らない。

戸惑いと恥ずかしさから幽か(かすか)に抵抗する。

「ちょ、ちょと待って。何か誤解があるけど、アリオさんも説明すれば分かってくれるから。」

ユウキの腕を押して拘束から逃れようと足掻いていたが、掌の感触に気づいてマリーンが動きを止めた。

マリーンの手はユウキの血で真っ赤に染まっていた。

「ち、血が・・・」

「さっきあいつに斬られた。」

「そんな・・・」

そんなどころではない、下手をすればマリーンの首が無くなっていた所だ。

本来なら、マリーンの頭を押した時点で剣の遙か下を潜り筈だった。

ところが、剣は避けた方向に軌道を変えて更に下がってきた。

止むを得ず地面に押し倒すまでしなければならなかったのだが、その最中に剣がユウキの腕を斬り裂いて行くことになったのだ。

そして、その瞬間ユウキには、はっきり観えた。

斬り付けた相手は思いがけない結果に驚くのではなく、わずかに口角を上げて笑おうとしているのを・・・。


生半可な腕では、振り切る途中の太刀筋を変える事などできない。

そして、そんな事が出来るならマリーンに当たると分かった時点で方向を変えて外せばよかったのに、わざわざ追いかける様に軌道を変えてさえいる。

『こいつはマリーンを斬る事を喜んでいる。』


マリーンは状況が理解できないらしくユウキの怪我を見てオロオロしている。

今は事情を説明している時間が惜しい。

右目を閉じてタルタロスサーキットを開くと痛みと身体の上げる悲鳴を遮断、限界以上の力を振り絞るとマリーンを抱え上げて走り出した。

早く、早くと思っても、水の中を進む様に遅々として前に進まない。

それでも一歩二歩と足を動かして、あと少しで通りを外れると言うところまで来る事は出来た。

だが、そこまでだった。

ユウキと襲撃者を隔てていた幌が無残にも斬り裂かれ、残忍な笑みを浮かべた男がまさに走り出そうとしていた。

移動していなかったら今ので斬られていただろう。


「きさま、お嬢さまを放せ!」

相変らず訳の分からない事を言っているが『事故でマリーンを斬ってしまった』とでもするつもりなのかもしれない。

雄叫びをあげながら上段に剣を構えて駆け寄ろうとしているその距離、わずか5歩。

剣の長さを考えれば3歩で間合いに入ってしまう。


必死にユウキが稼いだのはほんの僅かな時間にすぎなかった。


『考えろ!ロジックサーキットを使い切れ。』ゴーザの声が聞こえた気がした。


ドールガーデンで周囲の状況を分析:遠巻きにしている人たちがいるが何ら動く様子はない。

相手の様子:最早笑いを隠す気配も消え、一歩目を踏み出している。

マリーンの様子:抱きかかえているので、背後の襲撃者と向き合っており、恐怖に目を見開いている。

隣の露店:店主は腰を抜かして座り込んでいるし、何より既に襲撃者の向こう。


天から矢が降って来て襲い掛かる者に刺さる事も、地から槍が生えて串刺しにする事もない

襲撃者が更に一歩近づく。

残り一歩。


自分の様子:腕にけがはあるが今の所行動に支障はない。

マリーンを抱えている為、動きは遅い。

剣やナイフの持ち合わせはない。

攻撃用の魔導具なし

防御用の魔導具なし

ポケットの財布に少しのお金

普通の服、普通のズボン

胸元にリューケンの鏡、

腰には帰りが遅くなった時に使う灯りの魔導具

ロジックサーキット使用中

タルタロスサーキット使用中

相手に殴り掛かるか・・・相手の腕はかなりのものと思われ、近づく前に斬られる。

相手の狙いがマリーンなら置いて逃げるか・・・マリーンは殺され犯人に仕立てられる可能性あり

叫んで助けを求めるか・・・助けが来る前に斬られる



タルタロスサーキットを開いてる間はユウキに焦りや恐怖という感情はない。

ただ、迫りくる死を冷静に見つめている。


残っているロジックサーキットが妄想に近い事を考え付いた時、襲撃者は最後の一歩を詰めて剣を振り上げていた。

ユウキは身体を捻って後ろを向くと、さっき対応を考える為に使った5つのロジックサーキットを解放する。

残忍な笑みを浮かべた顔が直ぐ目の前にあり、振り上げた腕が下向きにベクトルを変える瞬間、『死ね』と言うつぶやきが聞こえた。

ユウキは腰にある灯りの魔導具に手を伸ばし、手首のスナップだけで前に放り投げた。


5つのロジックサーキットからセレーマを注いで・・・




魔導具は向けられた意識の量に応じて反応し、蓄えた神素を放出して様々な現象を起こす。

意識の量、便宜上これをセレーマと呼んだのは昔の賢者だったと言うが、もっと安易に集中力と言っても間違いではない。

イメージを伴って魔導具に集中する事、それが発動させるカギになる。

今、ユウキは5つのロジックサーキットから1つの魔道具に働きかける。

魔導具は通常の5倍のセレーマに反応し、通常以上の過剰な反応をした。


閃光が周囲を白く塗り潰し、やがて人々の視界を黒く奪ってゆく。

周囲で成り行きを見守っていた人々が目を押さえて悲鳴を上げる。

襲撃者は位置的に目の前でこの光を浴びる事になり、網膜を焼かれて地面をのた打ち回った。


ユウキが振り返った事でマリーンは襲撃者に背を向けていたが、更に顔を胸に押し付けて光を完全に遮断した。

しかし、ユウキ本人は咄嗟に瞼は閉じたがそんなもので防ぎきれるものではない。

やはり視界は失われ、目からは痛みの信号が送られてきているが全てタルタロスサーキットに流して無視する。


阿鼻叫喚の中、ユウキはドールガーデンで観える世界を頼りにその場を走り去って行った。



回収出来るか不安・・・

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