プロローグ
リフィは冷たくなっていった。
だんだん、だんだん。氷のようになってゆく。
リフィの最期だと悟ったクスレアは、リフィを抱えたダリアに背を向けて
その場を離れた。
雨が降っている・・・
リフィは、もう残りわずかの命をなんとか、1分・・・いや1秒でも長く、
紡ごうとしているようだった。
ダリアに抱かれたリフィのうっすら開いた藍色の瞳は、かすかに揺れる。
なんともいえぬ表情で・・・。
しかし、ダリアの悲しそうな表情や生暖かい兄の涙が自分の頬に流れ落ちたとき、
彼女はそっと微笑んだのだ。
今までのような、太陽のような笑顔で。
雨が降っている・・・
そして、彼女が微笑んだと同時に彼女はあっけなく
終わってしまった。
ダリアは、膝から崩れ落ちた。
妹はもう、この世にはいなくなってしまったのだ・・・
***
雨が降っている・・・
リフィは死を覚悟した。
自分の体が重くなってゆく。ゆっくりと、死が近づいている。
死の間際、リフィの脳内にはテレサや、両親のことを考えた。
そして、最期に微笑んだ。
天国にいる彼らへ向けて・・・。
『あぁ・・・死ぬって、こんな感じなのかな・・・』
そう思った瞬間、リフィの視界はふっと途切れた。