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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第二部 カズハ・アックスプラントの初めての建国
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取り敢えず建国した俺は暇を潰すため敢えて炎上する事にした。

 壇上に上がった11名の戦士達。


 場内アナウンスで盛り上がる会場の観客達。


「はうぅ……。お腹が痛くなって来ましたぁ……」


 場内の空気に当てられたのか。

 急にお腹を押さえてエルフ耳がだだ下がりのエアリー。


「ところで」


「あん?」


 俺の横には赤髪のヤンキーが鋭い眼光で俺を睨む。


「……なんでお前は俺の断りも無く勝手に俺の尻を触ってるんだ?」


「そこに尻があるからだろ」


「……もう何も言いますまい……」


 思いっきりその手を抓る俺。

 声を殺しながらも痛みを堪えるアホデボルグ。

 お前いつか捕まるぞ。


「ふん……。カズトのお尻なんかより私のお尻の方がぷりっとしているのに……」


 なんか対抗心を燃やしている娼婦がいるのですが。

 ていうかルーメリアっていう《夢幻魔道士ゼロ・ウォーロック》が。


「カズトはデボルグの様な男が好みなんだね……。ちょっとショックかな」


「なんでそうなるんだよ……」


 表情に影を落とすユウリだが結局は爽やかなままだ。

 デボルグとユウリ。

 まるで《火》と《水》の様だなとか勝手に思ってしまう。

 まぁ、完全に見た目での判断なのだが。


「いいケツしてんな」


「もう触んないで!」


 主審がこちらを不審そうに見ている。

 俺はまた見えないように、今度は思いっきり爪を立ててデボルグの手を抓る。

 というか指の2、3本くらい折ってしまおうか。

 そしたらもう勝手に触ろうとか思わなくなるだろ……。


「私のお尻も――」


「お前は黙ってろエアリー!」


「はうぅ……」


 もうやだ。

 なんで俺の周りにはこんな癖の強い奴らばかり……。

 ……。


 なんか、ルルやタオがいつも言っている口癖の理由が今、分った気がします……。



『――それではさっそく! 11名の選ばれし戦士達による! 優勝決定戦を開催したいと思います!』


 場内アナウンスが終了する。

 歓声に沸く場内。


(……さて、と。さっさと優勝して金貰って、エリーヌに公式に面会して……)


 そしたらレイさん達やルル達と一度連絡を取ったほうがいいだろうな。

 緊急事態じゃないから《魔法便》は使わないとして。


「おっし」


 気合を入れて壇上を下りる俺。




◆◇◆◇




 そして1回戦から俺の試合が始まる。


「はぁ……」


「あンだよ、その溜息はよ」


 腕を組みながらガンを飛ばしてくる赤髪のヤンキー。

 デボルグ・ハザード。

 ある意味本当に危険ハザードな奴。


『第一回戦はいきなりの好カード! 予選ランキング1位でシード権を獲得したカズトVS暫定ランキング3位のデボルグ・ハザードおおおおぉぉぉぉ!!』


 観客の歓声が木霊する。

 いいぞ。

 まだ誰も俺が『カズハ・アックスプラント』だとは気付いていないみたいだ。

 髪伸ばして眼帯するくらいで分らないとは……。

 女って化けるのが得意な人種なんだなマジで……。


「(おい……。あの《大剣》……。なんだか見覚えないか……?)」

「(え? あ……そういえば……)」


 ……。

 大丈夫……だよね。

 ……うん。


『それでは――――始めえええぇぇぇぇ!!』


 試合開始の合図が鳴り響く。

 取り敢えずは様子見――。


「腹ががら空きだな」


「え」


 下から聞こえたデボルグの声。

 え?


「《ブラスター・ボディブロー》!」


「ちょいまち――」


 完全に意表を突かれた俺。

 ズンッ! という鈍い音が会場に響き渡る。


「うげぇ!」


 そのまま上空にすっ飛ばされる俺。

 い、息が……。


「やっぱ固ぇなおめぇは」


「なっ――」


 今度は背後からデボルグの声が――。

 てかここ上空だぞおいいいいいいいいいい!


「《デリンジャー・エルボークラッシュ》!」


 ガンッ! という音と共に俺の後頭部に鋭い痛みが走る。

 そしてそのまま急降下。

 何が起きてるんだよ一体……!


 体勢を立て直し、地面に激突寸前で受身の態勢を取る。

 そして上空のデボルグに視線を向け――。


「おめぇ、並大抵の鍛え方をしてねぇだろ」


「うわ!」


 背後から声が聞こえつい叫んでしまう俺。

 なんだ……?

 もしかして……瞬間移動・・・・――?


「《デビルラッシュ》!!」


「お、ちょ、たんま! おい! くそ……!」


 次々と繰り出される拳。

 速い……! 速過ぎるだろこれ……!

 なんなんだよこいつ……!


最初に・・・あの酒場で・・・・・お前の身体を・・・・・・触ったときに分った・・・・・・・・・。お前……随分と《力》を隠していやがるだろ」


 ラッシュをかけながらも鋭い眼光で俺を睨むデボルグ。

 くそ……! 舐めてたぜ……!

 こいつ……脳筋に見えて実は結構『策士タイプ』なのかよ……!

 えげつねぇ……!


「《グランディア・バースト》!」


「しまっ――」


 一瞬の隙を吐かれ、俺の死角に回りこんだデボルグ。

 拳が赤く燃えている。

 やっぱこいつ……俺と同じ《火属性》が得意な――。


「ぶっ飛べカズト!」


 渾身の右フックが俺のわき腹に炸裂する。

 と同時に腹部に着火。

 ドオン、という爆発音と共に俺の全身は炎に包まれる。


 そして反対側の壁に激突し、場外カウントが審判より刻まれる。


(やべぇ……! 頭クラクラするし熱いし燃えてるし……!)


 カウントが10までなされれば俺の負け。

 場外負けなんて格好悪過ぎるじゃん俺えええぇぇぇ!


『……3……4……5……』


 うーん。

 でもどうしよう。

 てかデボルグのあの動き・・・・は一体何なんだ?

 俺の目で捉えられないってのはちょっと考えられないし。


『……6……7……8……』


 魔法だとしたら、あいつの得意属性の《火魔法》にはそんな魔法は存在しないし。

 俺いまは使えないけど《火魔法》は既にマスター済みだったから全部知っているし。

 ならば可能性としてあるのは――。


『…………9…………』


「よっと」


 カウント9で立ち上がりすぐさま壇上へと戻る俺。

 この日のために新調した洋服がボロボロだし。

 マジで勘弁してくれよ……。


「……やっぱり効いてねぇか。ちっ、分っていたとはいえ凹むなこりゃぁ」


「どうも」


 唾を吐き睨んで来るデボルグ。

 でも痛くなかった訳じゃないよ。

 というかすんごく痛かったよ。


「……お前さぁ……。得意属性は《火》と《気》だろ」


「ほう……。よく分ったな」


 やはりそうだ。

 攻撃系は全て《火属性》のスキルか何かだろう。

 自身の得意属性を魔法としては使わずに《スキル》として特化させて使用する。

 攻撃アタッカータイプの戦士が良く使う戦術だ。


 そしてあの瞬間移動。

 たしかリリィの講義の中でも《気属性》にそんな感じの魔法があったと聞いたことがあった。

 もしくはそれを応用した《スキル》か。


 いやぁ、勉強ってしておくモンだよな……。

 リリィ先生! 助かりました!


「で? 俺の動きの正体が分った所でおめぇ……対処は出来ンのかよ」


「うーん」


 対処はまあ……おいおい考えれば出来なくはなさそうなんだけど。

 しかし俺が気になるのは――。


「お前さぁ、何か企んでるだろ。戦闘とは・・・・別の何かを・・・・・


「……何のことだか」


 表情を変えずにそう答えるデボルグ。

 しかしその返答自体、既におかしいのだ。

 

 何故、俺の質問に素直に答える?

 この時間を使ってラッシュを掛ければいいのに。

 俺が目で追えていないんだから、対策を考える余裕を与えない戦法を取ればいいのに。



(『デボルグ・ハザード』……。意外に喰えねぇ奴なのかもな……)



 奴の鋭い眼光とにらめっこをしながら俺は――。



 ――取り敢えず思考を戻し、奴の『瞬間移動』の対策を練っていた訳で。



 














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