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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第二部 カズハ・アックスプラントの初めての建国
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取り敢えず建国した俺は暇を潰すため敢えて確認する事にした。

「お。結果出たな」


 闘技場の受付横にデカデカと張られている順位表。

 その前には沢山の人で溢れ返っている。


「あ、ちょっとすんません」


 人ごみを掻き分ける様に順位表の前まで泳いで行く俺。

 いま誰かの尻を触った気がするけれど仕方無いよね!


「えっと……」


 上から順に奴らの名前を探す俺。

 そして予想通りの結果にニヤリとする。



====================


一位 ユウリ・ハクナシャス

二位 ----------

三位 デボルグ・ハザード

四位 ----------

五位 ----------

六位 ----------

七位 ルーメリア・オルダイン

八位 ----------

九位 ----------

十位 エアリー・ウッドロック


====================




(やっぱ全員残ったか……)


 エアリーが残れるかどうかが一番怪しかったのは事実だが、見た目とは違いかなり力があることは知っていたし。

 うつ伏せ状態とはいえ背中に乗ったエアリーをどかす事が出来なかったのだ。

 あのこしょばいマッサージの時に。


「うあああああああああああん! カズト様ああああああああああああああ!」


 人ごみを泳ぐ様に抜け、奥のソファに座った瞬間、いつもの叫び声が聞こえて来た。


「よう、おめでとう。よく勝ち上がれたな、エアリー」


「わんわん!」


 もう完全に飼いならされた犬のように俺の前にお座りするエアリー。

 やめなさい。

 また変な注目を浴びてしまうから。


「……お手」


「わん!」


 ごめんつい……。

 いま受付譲に凄い顔で見られた……。


「モンブランプリン1個ですね!」


「なんでだよ!」


「え……。だってお手したら餌をあげないと……」


 自分で『餌』言っちゃったよこいつ……。

 本人がペット認定してんじゃねぇよ!


「耳も触っていいですから」


「別に触りたくなんてないのですが!」


「うぐぅ」


 物凄く残念そうな目で俺を見るエアリー。

 エルフ耳をぴくぴくさせて。

 そんな目で俺を見るなよ!


「……仕様がねぇなぁ」


 期待の目に変化するエアリー。

 そういえば俺、エルフの耳を触るのは初めてだよな……。


つん。


「あん///」


「・・・」


 なにいまの。


コリコリ。


「あっ、ああっ!///」


「・・・」


 え?

 なに喘いでるの?

 意味分らん。


「……エルフの耳は……(性感帯なのですよ……。カズト様ぁ……)」


「しらねぇよ! お前が触れっつったんだろおおお! 小声で吐息混じりに耳元で喋るなアホおおおおお!」


 受付譲が隣の受付譲とヒソヒソ話しているのが見える。

 マズイ……。

 このままだとまた、あのめっちゃ怖いギルド職員のおっさんに睨まれる……。


「(おい! そこの感じてる変態エルフ! 場所変えるぞ!)」


「あ……。カズト様ぁ! あれ……? もしやモンブランプリンですか! わーい!」


 なんか勝手に喜んでいるエルフ犬。

 そして流れ的にそのまま闘技場内の食堂へと向かう事に……。


 はぁ……。




◆◇◆◇




「はああぁぁぁ/// 至福の時間でしたああぁぁぁ///」


「……あそう」


 結局5個もプリンを奢らされた俺。

 糖尿病になっちまえ! この甘党エルフ!


「決勝戦はお昼ちょうどからだったよな。シードの俺を含めて11名での勝ち上がりトーナメント戦か……。なんだか懐かしいなぁ」


「懐かしい……ですかぁ?」


 きょとんとしているエアリーを無視し俺は思案する。

 

 俺の今までの最高順位は『2周目』の時の6位。

 たぶん最後までやり続ければ優勝出来たのだろうが、途中で飽きて何も言わずに参加を辞退。

 考えてみればほぼ投げやりな感じで『2周目』の日々を過ごしていたっけ。

 まぁ、エリーヌとの結婚生活だけは満喫してはいたが。


 ホット珈琲を飲み干し立ち上がる俺。


「さあ、そろそろ――」


「やあ、カズト。うん? そちらのお嬢さんは……」


「げ。ユウリ……」


 振り向くと爽やかな笑みの青年が爽やかに俺に声を掛ける。

 一瞬高鳴る俺の心臓。


「おお! 貴方は先日私と対戦なさった方ですね!」


「はは、君もカズトと知り合いだったんだね。彼女、変わっているだろう?」


「はい」


「おい!」


 脊髄反射で突っ込む俺。

 当然ユウリもエアリーも上位10名に入った訳だから、最低1回は対戦しているのだろうとは思っていたが。


「(……おい。エアリー。お前……何も感じないか?)」


 一応聞いてみる俺。

 彼女の様子を見てみる限り、エリーヌと同じくユウリに対する『耐性』を持っている様にも見えるのだが……。


「(……いいえ。さっきは凄く気持ち良かったのです……)」


「(耳のこと聞いてんじゃねぇ! ユウリと面向かっても何も感じないかと聞いてんだよ!)」


「(? はい。別にお顔の綺麗なイケメンさんとしか……)」


 やはりそうだ。

 ユウリの媚薬(?)は全ての女に対し効果を発揮する訳ではないらしい。

 やはり魔法やスキルでは無く、単なるフェロモンの一種か何かだろうか。


「(もしかしてカズト様……。アレですか? 嫉妬って奴でしょうか?)」


「(違う)」


「(あうぅ……)」


 エルフ耳を垂らして落ち込むエアリー。

 どう見ても犬耳としか見えない。


「はは、女性同士のコソコソ話は何だか怖いな。今までそれで何度も刺されそうになったこともあるし」


「修羅場!? お前修羅場をくぐり抜けてきた猛者だったのか!」


 ユウリの魔性に当てられた女の末路。

 うわぁ、考えたくも無い……。


「ユウリさんはイケメンさんなのですから、軽々しく女の人に声を掛けない方がいいかもしれませんねぇ……」


 今いいこと言ったエアリー。

 お前に一票。


「そうだね。今後、自重するよ。……さて。そろそろ試合が始まる頃かな。一緒に控え室に行こうか? お嬢様方」


「……どこか自重してるんだよ全く……」


 爽やかさを振りまきながら振り返り先を行くユウリ。

 一体何しに食堂に来たんだよこいつ……。


「私たちも行きましょうか、カズト様」


「……ああ。そうだな」


 エアリーに促され食堂を後にする俺達。

 大丈夫。

 まだ少し心臓がドキドキするが、面と向かって話しても喋れないほどでは無くなった。

 これもそれも全てはエリーヌのお陰だろう。

 試合が終わったらうんと可愛がってやろう。



 そんな事を考えながら俺は――。



 ――イケメンの後に続き控え室へと向かうのであった。
















 

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