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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第二部 カズハ・アックスプラントの初めての建国
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取り敢えず建国した俺は暇を潰すため敢えて仮眠する事にした。


『エーテルクランの街:酒場』



「Zzz……」


「むにゃむにゃむにゃ……。マスタぁ……。カクテル……」


「・・・」


 結局朝になりました。


 右には腕を組みながら意外に綺麗な姿勢で寝ているデボルグ。

 武士かお前。

 左にはだらしなく服がはだけながら何やら寝言を言っているルーメリア。

 乳隠せお前。


 こいつら2人は帰りたがる俺を中央に押さえ、乳揉んだり乳押さえつけてきたりでどんな乳祭りやねん状態で夜が明けた。


「……お客様。締めて2万5千Gで御座います」


 マスターがお勘定の紙をテーブルに置きそう言った。


「…………うん」



 ――その後俺は恨みの籠もった張り手を2人にかまし、強制的に店から連れ出しました。




◆◇◆◇




「ってぇなカズト……。別にビンタで起こさなくたってよぅ……ててて……」


 大きな紅葉が出来た頬を擦りながらデボルグが後ろをついて来る。


「マスタぁ……。おかわり……むにゃむにゃ」


 何度張り手しても起きなかったルーメリアは仕方なく俺がおんぶし運んでいる最中。

 おい。俺の頭に涎を垂らすな。


「お前等、マジで飲みすぎだろ……。どうやったら2万5千Gも酒が飲めるんだよ……。あの店、ここらじゃ格安の酒を出す店で有名なのに……ブツブツブツ」


 すっかり寂しくなった財布の中身を見て溜息を漏らす俺。

 これじゃあ一ヶ月近くある闘技大会中の生活費もままならない。

 くぅ……! 以前の金が有り余ってた時代が懐かしいぜコンチクチョウ!


「おかわりくだしゃぃ……」


「ねぇよもう! てか起きろ! 重い!」


 おぶったまま前後左右に揺さぶってみるが一向に目を覚ます様子の無いルーメリア。


「ふん……。大して飲めねぇ癖に俺様に対抗心燃やすからこういう事になるんだよ……けっ」


「お前さあ……。どうしてそんなにルーメリアが嫌いなんだ? 昨日初めて会ったばかりなんだろう?」


 普通に嫌悪しているとか言うレベルでは無い気がする。

 というかそもそも『女嫌い』なのかも知れないが。

 ・・・。

 あれだけ俺の乳揉んでたら『女嫌い』はねぇか……。


「そんな事ぁ俺だって分らねぇ。気に入らねぇモンは気に入らねぇ。ただそれだけだ」


「あらかっこいい」


「……犯すぞてめぇ」


 すんごい迫力でメンチ切られました。

 あっちの世界だったらちょっとした暴走族のリーダーとか出来るかもね。



 中央広場まで出た俺は広場に聳える時計塔で時刻を確認する。


「まだ少し闘技大会開催式までは時間があるか……」


 流石に徹夜明けはキツイ。お肌的に。

 少し仮眠してから参加した方が無難だろう。

 問題は――。


「なあ、デボルグ。お前、ルーメリアの宿とか――」


「知るわけねぇだろうが」


「ですよねー」


 ……どうしよう。

 こいつ絶対に目覚めない気がするんだが……。


「取り敢えず俺は開催式まで一眠りするぜ。酒、旨かったぜ。次は俺が奢ってやる」


 そう言い北門の方角へと踵を返すデボルグ。

 たぶんあっちの方角にある宿でも借りているのだろう。


「お、ちょ……。こいつどうすんだよ!」


 俺は立ち去ろうとするデボルグに背中のブツを向ける。


「知るか。お前に任せた。じゃあな、カズト」


「ちょ、おま――」


 俺に背を向け颯爽と去っていくデボルグ。

 くそ、あの背中にドロップキックかましてやりてぇ……。


「むにゃむにゃ……」


 気持ち良さ気に俺の背中で眠るルーメリアの鼻先を軽くデコピンする俺。


「仕方ねぇなぁ……。俺の宿に連れて行くか……」



 そして俺はトボトボと自分の宿に歩を進めた。





◆◇◆◇




「……ズト」


 ……ん?

 誰かの声が聞こえる……。

 あ、そっか。

 俺、宿に帰って来てからそのまますぐに眠っちゃって……。


「カズト、もうそろそろ開催式が始めるわよ」


 目を開けるとルーメリアが俺の身体を揺らし起こしている最中の様だった。

 

 裸で。


「うおっ!? ルーメリアっ!? お前、なんで裸なんだよっ!?」


 視界一杯に肌色が浮かんだせいでビビッて飛び起きる俺。

 え? 何かした? お前俺に何かしたの!?


「なんでって……。シャワーを浴びて来たからに決まってるじゃない」


「何でシャワーを浴びたっ! 俺に何をしたっ! 正直に言いなさいっ!!」


 身体に異変が無いか調べる俺。

 ヤダ怖い! 夜這怖い!


「はあ? 私は朝シャン派なんだから仕方無いじゃない。なんで私がカズトに何かしないといけないのよ」


 納得の行かない顔を俺に向け、濡れた頭をタオルで乾かすルーメリア。


「そ、そうか……。すまん……。色々とトラウマがあってだな……」


 今まで何度こういった状況に置かれた事か。


 目を覚ますと裸のレイさんが横に眠っていたり。

 目を覚ますと裸のレイさんが俺に馬乗りになっていたり。

 目を覚ますと裸のレイさんが俺の服を脱がそうとしていたり。

 目を覚ますと裸のレイさんが――――。


「大丈夫、カズト……? 物凄く顔色が悪いけど……。貧血?」


 ルーメリアが蹲る俺を心配してくれている。

 ……大丈夫そうだ、こいつは。

 ていうかレイさんが異常過ぎるんだ、きっと。

 後にも先にもあんな女に出会った事は無いからな……。

 あの『性癖』は未だに俺には理解ができん……。


「……さあ、泣いても笑っても今日から闘技大会本番よカズト」


 服を着たルーメリアが俺に手を差し伸べて来る。


「昨日は色々とお世話になっちゃったけど……。今日から私達は『ライバル』ね?」


 そう言いニコッと笑ったルーメリアは昨日までの娼婦のような妖艶な笑みは何処へやら。



「……だな。手加減はしないぜ? ルーメリア」


 その手をしっかり掴み起き上がる俺。





 ――まあ『手加減しない』ってのは嘘なんだけど、ね。


















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