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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第一部 カズハ・アックスプラントの三度目の冒険
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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず暇を潰すことでした。

 ……うん。

 あれ……? なんか俺、すっげぇドMっぽくね?

 どうしてこんなにワクワクしてるんだろう……。

 『縛り』っていう言葉を聞くと胸がときめくこの感覚――。


 いやいやいや、待ちなさい。

 これは俺の性癖とかじゃなくて、職業病みたいなもんだから。

 だって二回も勇者やってたんだよ?

 勇者なんて王様の命令を聞いて国のために命を投げ出す超ドM職じゃないですか。

 自由気ままに生きていける冒険者とは大違い。

 束縛されるのが嫌だったら勇者なんてやってられないですよ。 


 というわけで、あと一つ、縛りを付けたいんだけど……。

 うーん……。

 ……。…………。

 そうだ! アレがあるじゃん!

 ええと、それだと、もう一回やり直さないと駄目かぁ。

 面倒臭いけど、これも縛りプレイのためだ。

 ああ……。なんか考えているだけでも、だんだん気持ち良くなってきた……。

 

 ウインドウを操作し、今使ったばかりの『SPポッド』を取り出す。

 それを口の中に放り投げて飲み込むと、空だったSPがたちまち最大まで回復した。

 次にスキルの項目をタップし、『二刀流スキル』の画面に切り替える。

 その中で『ツーエッジソード』を選択し、使用した。

 SPが空だとスキルが使えないからね。

 これを使ってから、もう一度SPポッドを使って、と……。


 『ツーエッジソード』とは、その名の通り使用者に諸刃の剣を付加するスキルだ。

 具体的に言うと、武器の攻撃力が二倍になる代わりに敵から受けるダメージも二倍になるっていうスキル。

 使いどころが難しいんだけど、上手く使えば有利に戦闘を進めることができます。

 例えば二刀流だと、武器を両手にそれぞれ装備できるじゃないですか。

 その武器の攻撃力が二倍になるのだから、同じ武器を二本装備したとしたら、単純に攻撃力が四倍になるわけですよ。うん。もうすでにチート。

 ちなみに武器を二つ装備するには、二刀流スキルをマスターしないと駄目だから、この『ツーエッジソード』が本領発揮するのは二刀流スキルをマスターした後っていうことになりますね。

 

 で、敵から受ける二倍ダメージの対処なんですけれど。

 魔道士が使用できる防御力上昇魔法とか、耐性魔法とか。

 敵に使う弱体魔法とかを使えばどうにかなります。

 敏捷力を上げて攻撃そのものを受けないようにするとかも良いですね。

 まあ俺ぐらい強くなっちゃうと、防御力が半分になったって雑魚相手には大して変わらないという現実があるんですが……。


 とか言いつつ、真・魔王との戦いで死にかけたんだけどね☆

 奴の放った『全魔力解放』を二倍のダメージでもろに受けて……。

 はは……。笑えねぇ。


 まあ過去の話は置いておいて。

 今、俺が装備している武器はゼギウスの爺さんに作ってもらった偽物の大剣です。

 大剣はめっちゃ重いから普通は両手でしか装備できないんですよ。

 これに『ツーエッジソード』を使ったわけなんだけど、これがどういうことを意味するのか――。


 大剣の正体は『木の棒』です。

 攻撃力が1しかない、最弱の武器です。

 これを両手で装備して、スキルの効果で二倍の攻撃力に上げました。

 よって攻撃力は2に上がりました。

 ……うん。見事なまでに意味がない!

 でも敵の攻撃は二倍のダメージとして受けちゃいます。

 ああ……! これぞドM仕様……!


「よし。じゃあ行きますか!」


 闘技場入口から戦いを終えた冒険者らが待合所に戻って来るのが見えた。

 そろそろ俺の出番だろう。

 俺はソファから立ち上がり、無駄に重い大剣を肩に担ぐ。

 あ、そうそう。ちなみに俺がどうしてゼギウスの爺さんに、数ある武器の中から大剣を作ってもらったのかというと……。

 俺が最も苦手とする武器が、この大剣だからです!

 重いしノロいし、小回り利かないし……。

 すばしっこい敵には攻撃が当たらないしで、過去に散々な目に遭ったんだよ!

 俺はもっと、こう、スピーディな攻撃を求めます!

 ……でも今回は『縛る』のが目的だから、あえて大剣を選びました。胸がときめいちゃう!


「次! エントリーNO.13246、カズハ・アックスプラント! 前へ!」


 審判の補佐っぽい人に呼ばれ、俺はスキップで舞台まで向かう。

 大剣が重すぎてぎこちないスキップになってるけど……。

 ガッチャンガッチャンうるさいな! スキップ止めよう!


「はしゃぐな! これから真剣勝負が待っているのだぞ!」


「むい」


 舞台に着いたら主審っぽい人に怒られました。

 いいじゃん、ちょっとぐらいスキップしたって……。 


「カズハ・アックスプラント! 武器は『ツヴァイハンダー』、防具は……無しで良いのか?」


 主審が手元の資料を見て驚きの声を上げる。

 俺が返事の代わりにピースをすると、般若みたいな顔になりました。


「貴様、試合を舐めているな……? これだから女という奴は……」


 ブツブツと文句を言う主審だったが、時間が押しているのか、俺の対戦相手のほうに向きなおり武器と防具の確認を始めた。

 俺はその間にストレッチをして、気分を高めておく。


 あ、そうだ。俺の名前のこと、話してなかったっけ。

 本名は慄木和人おののぎかずとって言います。

 この異世界での名前は、一周目と二周目がカズト・アックスプラント。

 ……たぶん『おののぎ』だから『斧』と『木』で『アックスプラント』なんだろうね。


 で、三周目になったらカズハ・アックスプラントになってました。

 『ト』がちょっとずれて『ハ』になっただけっていうね……。

 もう適当なんだろうね、この異世界。

 さすがに慣れたからいいけどさ……。


 そんなこんなで、俺の一回戦が始まります。

 100位入賞まで先が長いけど、暇つぶしにはちょうど良いかな。


 ほんじゃまあ、適当に頑張りますか!




NO.13246 カズハ・アックスプラント

武器:ツヴァイハンダ—(※木の棒/攻撃力1)

防具:なし

装飾品:ドレインバッジ【呪】(※SP自動回復不可)

スキル効果①:ツーエッジソード(※武器攻撃力二倍)

スキル効果②:ツーエッジソード(※被ダメージ二倍)

状態:SPポッド使用によりSP値がゼロ

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