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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第二部 カズハ・アックスプラントの初めての建国
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取り敢えず建国した俺は暇を潰すため敢えて躾をする事にした。


「んん……。あれ……?」


「よう。目が覚めたか」


 小一時間ほど気を失っていたエアリーが目を覚ます。


「私……! か、カズハ・アックスプラント様っ!!」


 ばばっとベッドから飛び起きるエアリー。

 さすがエルフ族だけあって身軽そうだなー。


「何か飲むか? 冷たいレモネードとかならあるけど」


「うぐぅ……。レモネード……。頂き、ます……」


 恐縮した様子ではあるがちゃっかりと自分で椅子を引きテーブルに寄って来るエアリー。

 こいつ……。食べ物系には目が無いタイプだよな絶対……。


 俺は水筒からコップにレモネードを注ぎ、かち割り氷を入れエアリーに渡す。


「ほらよ」


「す、すいませんですぅ」


 こく、こく、と飲み干すエアリー。

 結構のど渇いてたんだなこいつ。


「おかわりを頂きたいのであります」


「……礼儀は弁えているけど遠慮知らずなのな、エルフ族って」


「? ……! はわわ……! つ、つい、いつもの調子で……! ごごごごめんなさいぃ!!」


 ずず、と椅子ごと後ずさり両手を前に合わせて謝るエアリー。

 なんか面白いかも……こいつ……。


「いや別に良いんだけどよ」


 俺は飲み干されたコップにレモネードを注ぎ直す。

 すぐさま水を得た魚の様にテーブルに駆け寄ってくるエアリー。


「はっ、はっ、はっ」


 舌を出し、今か今かとレモネードを待つエアリー。

 完全にどっかのペットだろコレ……。

 

 エルフの耳が犬耳に見えてきて目を擦る俺。


「お手」


「はっ」


「・・・」


 物凄い反応速度でお手しやがったぞこいつ……。

 やべぇ……面白ぇ……。


「おかわり」


「はっ」


「まて」


「ぐぬぅ……」


 ……何だろう、この気持ち。

 凄く愛らしいというか、凄く従順というか…。

 俺そう言えば昔、犬とかすっげえ飼いたかった時期とかあったよなぁ。

 親に反対されて飼えなくて、大人になったら絶対に飼ってやるとか思ってたっけ……。


「よし」


「きゃうん///」


 何か歓喜の声を上げホクホク顔でレモネードを飲みだすエアリー。

 なんだろう……。

 今すぐこいつに《緊縛》を掛けて、俺専属のペットにしたい衝動に駆られてしまう。

 

 ……いや、そんな事をしたら駄目だぞ、俺。

 『絶滅危惧種族』に認定されてるって事はあれだろ、『天然記念物指定』みたいなもんなんだろう?

 だったら勝手にお持ち帰りとかしたら絶対怒られるよな。

 

 ……魔王は持って帰ってもルルとタオくらいにしか怒られなかったけど。



「ぷはあっ、ご馳走様なのですぅ///」


 二杯目も飲み干したエアリーは恍惚の笑みを浮かべている。

 やヴぁい。

 首輪とか付けてぇ……。


「うん? ……どうかされましたかぁ? カズハ様ぁ?」


 小首を傾げるエアリー。

 俺はその姿を見て、飼い犬と成り果てたエアリーを想像してしまう。


「あ、いや、なんでもねっす。いやホント、流石に手ー出せねっす」


「?」


 心の声がつい表に出てしまった……。

 俺は頬を掻きながらも苦笑いをして誤魔化す。


「あ、そうだ。その、カズハ様は何用で《アゼルライムス帝国》に向われるのですかぁ?」


 話題を振ってくるエアリー。

 もう『おかわり』と言って来ない所を見ると満足したのだろうと推察する俺。


「あー、うん。ちょっとうちの『国』がさぁ。財政難っつうかー、馬鹿ばっかのごく潰しばっかりだからさぁ。ここは一丁、女王自ら一肌脱いじまおうかなーなんて」


「すとりっぷですか」


「違ぇよ!」


 ついエアリーの頭にチョップを入れてしまった俺。


「あ、すいません! ん”ん”っ! ……『Stripper』……ですかぁ?」


「発音の仕方を注意したんじゃねえっ!!」


 流石に二度目は机を叩き立ち上がってしまった俺。

 しかもちょっと格好良く発音出来てドヤ顔してるその姿が俺の突っ込みに拍車を掛けた。


「来週開催される『闘技大会』に出場する為に来たの! 優勝して1000万G欲しいから参加するの!」


 俺はそのまま叫ぶ。


「え? カズハ様も参加されるのですかぁ? うわわ、私、目の前でカズハ様の御勇姿が見られると言う訳なのですね!」


「そうだよ! だからエアリーも俺の戦いっぷり、を……? ……へ? カズハ様『も』?」


「はい。私もエルフ族を代表して参加させて頂く事になったのですよぅ。《エーテルクラン》の闘技大会に」


 えんばり、と胸を突き出すエアリー。

 いちいち仕草が犬っぽい。


「へぇ……。確かに今大会から『参加可能種族』の枠が取り払われたみたいだからなぁ」


「そうなのです。それにその大会の成績如何では『勇者』を目指す為の『補欠候補』スタートで、かなりのアドバンテージを得られるそうですから……」


「え? じゃあエアリーは『勇者』を目指す為に闘技大会に参加するのか?」


 確かに闘技大会で良い成績を残したものは、『補欠候補』から『勇者候補』へと出世するのが早くなる。

 しかもエリーヌの手紙には、今度の『勇者』は『女』でも『人間族以外』でも実力次第でなれるように法律を改訂した事が記載されていたし。


(……あの偏屈親父もようやく改心したって事なんかな……)


 あの日、グラハムとリリィを引き抜く為に再度《アゼルライムス》へと向かい、直接アゼルライムス王と交渉した日。

 確かに『女』である俺を見る目が前回の『謁見』の時と比べて大きく変わっていたのは事実だ。

 しかも俺は《アゼルライムス》の出身者で、さらに一度王と謁見し門前払いを喰らった経歴を持っている。


(……『女』に国と城と皇女を救って貰ったとあっちゃぁ……。そりゃあ考え方も変わるか)


「? カズハ様?」


 エアリーが不思議そうな顔で俺の顔を覗き込んで来る。


「……何でも無いよ。でもそっかあ。じゃあ俺とエアリーは『ライバル』って事だよな」


「う……。それを言われてしまうと緊張して足ががくがくってなってしまいますぅ……」


 恐縮するエアリー。


 そうか。

 エルフ族が参加を決めたって事は、ドワーフ族やらゴブリン族も参加する可能性があるな。

 しかもその結果如何では、二代目勇者は『人間族以外』になる可能性だってある。

 もちろん『女勇者』もだ。


 

 俺はチラチラとこちらの様子を伺ってくるエアリーを見やり、この先の展開にちょっと好奇心という名の期待感を高めてしまっていた――。


















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