取り敢えず建国した俺は暇を潰すため敢えて参加する事にした。
『アックスプラント城:大浴場前』
「ああ、これはこれは……。麗しき我が女王陛下様。ご機嫌麗しゅう御座います」
大浴場の前でグラハムと出会う俺。
「……あのな、グラハム。気持ち悪いからその丁寧語とか止めてくれねぇかな」
「きも……!」
心臓を押さえ苦痛に顔を歪めるグラハム。
なんか面倒臭そうだから俺は敢えて触れずに浴室へと足を踏み込む。
「・・・」
「・・・」
「……おい」
「はっ!」
「・・・」
「はっ?」
俺の声掛けの意図が分らない、といった様子のグラハム。
またその顔がいちいちムカつくのだが……。
「ここ、女湯」
「……はっ」
変な後ずさりでわざとらしく逃げて行ったグラハム。
男の癖に女湯に入ろうとは……。
ていうか風呂場の前でうろうろしてたのは女湯を覗こうとかしてたんじゃねぇだろうな……。
俺はあいつをこの国の警備兵長のままにしておいても良いのだろうか……。
・・・
大浴場には誰もいなかった。
てかこんな真昼間っから風呂に入ってる奴なんていねぇか。
俺は服を脱ぎ大浴場の扉を開ける。
「おや、カズハも風呂かい?」
……いた。
真昼間っから湯船に浸かりながら酒を飲んでいるアホンダラが。
「どうだい? あんたも一杯」
「お前、何で脱衣所に服が無いのに風呂に入ってんだよ」
「服……? そんな物は部屋で脱いで来たが」
「全裸でここまで来たのかよっ!! グラハムがうろうろしてたのはお前のせいかアルゼインっ!!」
つい手に持っていた桶を地面に叩き付けてしまった。
「まあまあ、そんなに細かい事を言わずに、女王陛下様」
「……お前ら……何かあったら『女王陛下様』って言えば俺が収まるとでも思ってねぇか?」
「ああ」
「認めた!?」
くそ、みんなで俺の事を馬鹿にしやがって……。
見てろよいつか……ブツブツブツ……。
俺は桶を拾い上げ洗い場へと向う。
「……で? その顔は何か悩みでもある顔とみた。話してごらん。このアルゼインが聞いてやるぞ」
風呂に浸かりながらこちらに身を乗り出して来るアルゼイン。
その体勢は全国の青少年には宜しく無いから止めて下さい。
「お前らの生活費が掛かり過ぎて財政難に陥ってるんだよ」
「ああ……これはまた……。グビビ」
「お前らの生活費が掛かり過ぎて財政難に陥ってるんだよっ!!」
「?? そうか。……グビビビ」
「『そうか。……グビビビ』、じゃねえっ!! その昼間っから飲んでる酒の事とかを言ってんの俺はっ!!」
これ見よがしにそのままの姿勢で酒を飲むアルゼイン。
実に甘美で淫靡でバンビーなお姿で酒を飲むのですね。
お前にも《緊縛》掛けたろかコラ。
「まったくもう……。けしからんけしからん……ブツブツブツ……」
これ以上は目の毒なので身体を洗い始める俺。
「しかし……『財政難』と来たか。国を栄えて行くのも大変な事なのだな」
「そうだよ。だからお前も仕事しろ」
「……何処かの大富豪にでも囲って貰うか」
「発想がリリィと同じかアホっ! 闘技大会2位だったお前は……何処行っ……た……?」
・・・。
そうか……。
その手があった!
俺はついそのまま立ち上がってしまう。
「……もう少し生えた方が良いかも知れんな、カズハ」
「へ?」
俺はグビビ、と酒を煽るアルゼインを見やる。
「……隠せ。前」
「前……」
「グビビ」
「・・・」
「グビビビ」
「嫌ああああああああああああああああああ!!!///」
―――カポンッ―――(※なんかよく和風の温泉宿みたいな所の庭にある竹で出来た音がするやつ)
◆◇◆◇
『アックスプラント城:王の間』
「おれ闘技大会でる」
王の間に戻った俺は相変わらずチンコンカンコンやっているゼギウスとお茶菓子を用意していたレイさんにそう告げる。
「カズハ様ぁぁぁ/// 湯上りで火照った身体のカズハ様ぁぁぁ/// 嗚呼……!///」
変態がにじり寄って来るのを素敵ステップで何とか回避。
「しかしカズハ。お主は既に一国の女王なのじゃぞ? そのお主がわざわざ闘技大会になんぞ参加せんでも……」
「そうですわよカズハ様……。私かアルゼイン様、もしくはセレンさんでも十分なのでは?」
俺の洗ったばかりの髪をクンカクンカしながらそう言うレイさん。
近ぇ……。
「お前らにはグラハム、リリィと共に《ラクシャディア共和国》に行ってもらう」
「ほう……? という事はまた『義勇軍』に参加すると言う事か。忙しいのう、あの国も」
「ああ。俺も良くは知らないんだけど、また何か『重要文化財』みたいなのが見付かったらしくてさ」
「『重要文化財』、ですか? ……もしやまた《精霊王の聖杯》絡みの?」
「……いや、今回は《精霊王》は関係無いみたいだぜ? ……多分」
先日、《ラクシャディア共和国》から届いた文書。
《魔法便》を使って届けられた物では無いから『緊急招集』という訳では無い。
しかし内容的にはかなりの人数を各国から募っているらしいから、そこは俺達《インフィニティコリドル》の出番って訳だ。
「またレイさんをリーダーとして、ルルとタオを『仲間登録』から外して、あいつ等はゼギウスとここで留守番。で、俺は一人で来週から開催される『闘技大会』に参加して優勝賞金1000万Gをぶん取って来るという訳」
ゼギウスはそもそも戦力としては頭数には入れて無いし、鍛冶屋としての仕事もある。
タオにはレイさんの分の城内での雑用と食事係りをやってもらって、その他雑用はルルに補佐させれば良いだろ。
「一応、おれ女王だけど、『他国の女王は闘技大会に参加しちゃ駄目よ』なんてルールは無かったよな? レイさん」
「え? ……ええ、確かにそのようなルールは無かったとは思いますが……」
俺の髪の毛をクルクルと指で絡めながら答えるレイさん。
確かに最近髪が伸びてきたけど、だからといってレイさんが弄んで良いという理由にはならないと思われ……。
「武器は? お主は未だにその《ツヴァイハンダー》しか持っておらんじゃろう? 何か新調するか?」
「あー……。いや、良いよ。この9ヶ月間、俺だってサボってた訳じゃねぇし。もう大分使いこなせる様になって来たんだぜ?《大剣》」
俺は王座の後ろにある、西洋の甲冑を着た置物の手元にある《ツヴァイハンダー》を指差す。
その重量感溢れる容姿とは想像もつかないくらいに最弱の武器。
だって中身は『木の棒』だもん。
攻撃力は1しかない。
「……まさか、またその剣で闘技大会に参加するつもりか? 今度は『優勝』を狙うのじゃろう?」
ゼギウスが眉を吊り上げながら言う。
「ああ、そだよ。でもまあ、今回は真面目に、『縛る』のは《魔法》だけにしておくよ。《スキル》はガンガン使うつもり」
「……一体どこか『真面目』なんじゃ……。まったくお主ときたら……」
溜息を吐くジジイ。
「カズハ様ぁぁぁ///」
いつの間にか勝手に俺の髪の一部分だけ三つ編みで結んだレイさん。
遊ぶなよ人の髪で……。
「と、言う訳で。城の方はゼギウス、義勇軍参加の方はレイさんでしっかり仕切ってやってくれよな」
俺はそう言い残し自分の寝室へと戻る。
久しぶりの一人旅。
ちょっとワクワクもしてたりする。
だってさあ……。
おれ、こいつらと一緒の毎日の方が数倍、『平和じゃ無かった』んだもん――。
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〇『戦乙女』カズハ・アックスプラント
闘技大会に参加する為、1人《アゼルライムス帝国》の《エーテルクラン》の街へ――。
〇ゼギウス・バハムート、ルリュセイム・オリンビア、タオ
お城でお留守番。
〇傭兵団《インフィニティコリドル》
『ギルド登録情報』
【リーダー】
●レインハーレイン・アルガルド(女):〔武〕片手剣〔備考〕前大会ランキング1位
【パーティメンバー】
①アルゼイン・ナイトハルト(女):〔武〕片手剣〔備考〕前大会ランキング2位
②リリィ・ゼアルロッド(女):〔武〕片手杖
③セレン(女):〔武〕片手剣
④グラハム・エドリード(男):〔武〕両手槍
⑤空き
⑥空き
⑦空き
⑧空き
⑨空き
⑩空き
ラクシャディア共和国にて、『義勇軍』として部隊に参加。




