取り敢えず建国した俺は暇を潰すため敢えて裸になる事にした。
『アックスプラント王国:アックスプラント城:王の間』
「……やっべぇ……マジやっべぇ……」
俺は頭を抱える。
「ふうむ……。確かにマズイかも知れんのう。今のままでは……」
ゼギウスが髭を撫でながらも同意する。
「だろ? このままじゃあ、せっかく建国したってのに――」
そう。
俺はここ、《ユーフラテス公国》の端っこの端っこの超端っこ。
草ぼうぼうで蜘蛛の巣だらけで全く手入れもされていない砦。
ていうかすぐ横にある山岳に頻繁に現れる山賊達が勝手に根城にしていた場所。
そこを周囲500UL。つまりはその『山岳』も丸々。
約10億Gの資金を投入してユーフラテス国王から買い取ったのは良いのだが――。
「……ここって衛生状態は悪いし、山賊達は何度追っ払ったっていなくならねぇし……」
「それも仕方無かろうて。奴らは古代の『ゴブリン族』の生き残りじゃ。行く当ても無く、山岳地帯を根城にして生活しておるのじゃから」
「なんだよゼギウス、その言い方は……。それじゃあまるで俺がそいつらを城から追い出したみてぇじゃねえかよ」
「フォッフォッフォ。そう聞こえたのならばそうなのじゃろうな」
ゼギウスは笑いながらも髭を弄る。
「お前……大臣の癖に……。……まあいいや。もう何十回もこのパターンは繰り返したし……はぁ……」
俺は王座で胡坐を掻きながらも溜息を吐く。
・・・
あの勇者……確かゲイルなんちゃらって言ったか。
あいつが魔王軍による『王都襲来』の最中、《精霊王》に取り付かれて大暴れしてから早9ヶ月が経とうとしている。
襲われたアゼルライムス城は既に完全復旧を果し、その後も魔王軍に大きな動きは無い。
勇者軍も風の便りでは、あの頭の固いアゼルライムス王が新法律を施行したとかで今は進軍の気配も無い。
要するに、戦争に何ら関与していない平民達にとって見れば、ある程度の『平和』が続いているとも言えるのだが。
「何とかならねぇかな……この貧乏生活は……はぁ……」
俺がさっきから困っているのは、まさしく『金』の事である。
この土地と砦をユーフラテスから買い取るのに10億G。
そして砦を即席の城として修繕するのに2億G。
さらには総勢9名。
俺、ゼギウス、ルル、レイさん、アルゼイン、セレン、変態紳士、リリィ、タオ。
この9名の生活費、この城の維持費。
で、一番金が掛かるのがアルゼインとセレンの酒代、レイさんの洋服代、俺の趣味費用etc……。
ゼギウスの鍛冶費用も金は掛かるが、それは依頼者から報酬が出ているから俺達の武器や防具のメンテナンス分くらいは稼いで貰ってはいるが……。
「なあ、もっとさあ……。こう、めっちゃ原価を安く仕入れた素材で作った武器とか防具を、めっちゃ高く売ったりとか出来ねぇの? ゼギウス爺さんよぅ?」
「無茶を言うでないわ。そんな商売しとったら客なんて誰も来やせんわい」
「えー? そこはほら、『伝説の鍛冶職人ゼギウス・バハムート作!』っていう広告をだなぁ……」
「……お主はワシの顔に泥を塗るつもりか?」
「良いじゃん、別に泥くらい付いたって。元々キタネェ顔なんだし」
言った瞬間、鍛冶道具のハンマーが飛んで来る。
俺は神の如き早業で片手でハンマーの柄を掴み激突を免れる。
そして『したり顔』を小汚い顔のゼギウスに向ける。
「……そう言えばワシ、小便に行ってから手を洗っておらんだわ」
「きたなっ!!」
勢い良くハンマーを地面に叩き付ける俺。
「そういう小学生みたいな真似すんじゃねぇよっ!! ジジイの分際でっ!!」
「フォッフォッフォ。甘いのぅカズハは……。どれ、茶でも沸かすか」
「手ぇ洗ってからにしてえええぇぇ!!!」
俺の叫び声が王の間に木霊する。
◆◇◆◇
王の間を出た俺は、顎に手を乗せながらも城の廊下を当ても無く歩き、考える。
建国前にはあれだけ使い道が無くて困っていた金があっさりと無くなってしまった。
というか俺の所持金では建国費用には到底追いつかず。
あれから丸3ヶ月間、みっちり高報酬のクエストをギルドで片っ端から達成させ荒稼ぎ。
そしてようやく溜まった金は建国と同時に全て吹き飛んじまった。
それから約半年は、取り敢えずは平和になっちまった世の中で高収入のクエストが出てくる筈も無く。
何とかチマチマそれなりのクエストを受けたり、他国に『義勇軍』として参加したりしながら生活費を稼いでいるのだが……。
「うーん。うーーーん。何か……何か無いか……? こう、ぱぱっと短い期間で金が稼げる短期バイトみたいな奴……。ブツブツブツ……」
どん。
「キャッ!!」
俯きながら廊下を歩いていたら誰かにぶつかった。
「あ、ごめんリリィ。ちょっと考え事してて……」
尻餅を付いているリリィに手を差し伸べる俺。
「もう……。でも私も魔道書を読みながら歩いてたから人の事は言えないんだけど……」
リリィは立ち上がりスカートを払いながらそう言う。
「……で? 女王陛下様はどのような事をお考えになられていて、前方不注意であられましたのかしら?」
「……なんかムカつく……。そのわざとらしい敬語……」
リリィはふふ、と笑い「嘘よ」と舌を出す。
再び歩き出そうとする彼女を俺は呼び止める。
リリィなら何か良い知恵を授けてくれそうだが……。
「なあ、リリィ。なんかさぁ、こう、パパッと簡単に金を稼ぐ方法とか無いかなぁ……」
「お金? ……ああ、成程。女王様は我が国の財政難を分析中で御座いましたか」
「……お前らが何も考えてくれないからだけどな」
「あらら、心外な事を仰る。でも……。そうねぇ……」
リリィは考える仕草をした後、笑顔で俺に顔を向けた。
「お! その顔は何か思いついたか!」
「ううん。何も思いつかなかったわ」
「・・・」
「冗談よ。……例えば今、カズハは『超有名人』じゃない?」
リリィは俺のじと目を無視し先を続ける。
「『戦乙女カズハ・アックスプラント』。この知名度を使うってのはどう?」
「知名度を使うって……。一体、何をすれば良いんだよ俺は……」
「うーん、そうねぇ……。例えば……何処かの大富豪に取り入って※※※な事を※※※しちゃう、とか?」
「・・・」
「冗談よ」
「お前なんか……もしかして『腹黒キャラ』か?」
「何が?(ニコッ)」
「あ、いや……何でも無いッス……」
俺は踵を返し、怖い笑顔で立っているリリィを見ないように歩を進める。
あれ?
あいつって……あんなんだったっけ?
そういや、変態紳士……グラハムも、俺が『女』になってから前世の時と態度がまるで違っているのは気付いてはいたが……。
(……リリィもあの馬鹿と同じく、俺が『女』だからって前世と態度が変わっちまってんのかも知れないなぁ……)
『男』で『勇者』であった俺。
『女』で『女王』になった俺。
何だか色々とまた面倒くさい事にならなきゃ良いけど……。
そう考えてしまった俺は取り敢えず――。
――ゼギウスのばっちいハンマーを触ってしまったのでついでに風呂にでも入ろうかと大浴場へと向う。




