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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第一部 カズハ・アックスプラントの三度目の冒険
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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず束縛することでした。

「じゃあなー、爺さん。また来るからなー」


 ゼギウスの工房を後にした俺は闘技場に向かうことにしました。

 これ・・があれば退屈せずに済むと思うんだよね。

 いやー、楽しみだなぁ。


「本当に不思議な小娘じゃ。しかし、この懐かしい感じ・・・・・・は何じゃ……? ふむ……。やはりあの小娘が言っておったとおり、この世界は――」


 一人残った爺さんの呟きは風に流されて行きましたとさ。





「いやホント、マジで良く出来てるよなぁ。この剣……」


 ゼギウスに特別に作ってもらった俺専用の武器をまじまじと眺める。

 どこからどう見ても普通の大剣にしか見えないのだが、これがまた今の俺好みの加工をしてあってだね。

 素材はこの異世界で最弱の武器である『木の棒』なんだよね。

 つまり『ハリボテの大剣』ってことだ。

 でも持った感じは大剣と同じくらい重いし、店に売っても本物と見分けがつかなくてそのまま買い取って貰えるだろうな。

 ……間違えて買った冒険者のことを想像すると申し訳ない気持ちになるが。


 俺はこの大剣を装備して闘技大会に参加するつもりです。

 え? どうしてそんなことをするのかって?

 決まってんじゃん。手加減するためだよ。

 前回参加したときは、スキルと魔法を使わずに戦ったし。

 そのときよりも今のほうがもっと強くなっちゃったわけだし、さらに手加減しないとアカンやん?


 スキルと魔法を使用するには精神力が必要なんだけど、それも事前に空にしておきます。

 そうすれば間違えて使うことも無いからね。

 でも気を付けないといけないのが自動回復。

 この世界では時間が経つと少しずつ精神力が回復していくんだよね。

 だからそれも封印するために呪われたアイテムも装備します。


 前回は6位まで勝ち上がったけど、途中で飽きて棄権しちゃったからなぁ。

 優勝を目指したいのは山々なんだけど、やっぱり目立ちたくないから100位入賞くらいがベストでしょう。


「あともう一つくらい欲しいな。何かないかなぁ、俺のこの溢れんばかりの力を封印できる物……」


 ブツブツと独り言を言いつつ、俺は大通りを歩いて行きました。





 闘技場入り口に到着。

 結局もう一つの縛り方法を思いつかず、俺はそのまま受付でエントリーを済ませました。 


「今回の参加者は、と……」


 受付嬢に渡されたエントリーリストに目を通す。

 ずらりと並ぶ参加者の名前。

 うーん……。

 たぶん前回と同じ奴らが参加しているんだろうけど、そういえば今までちゃんと確認したことなんて無いからな。

 ていうか多すぎて覚えられんわ。目が疲れるし止めよう。


 俺の目的はあくまで100位入賞。

 ギルドで傭兵登録ができるようになれば、もうここには用は無い。

 で、傭兵として仕事を続けているうちに俺の実力が世界に広まっちゃうだろう。

 でもその頃には建国できるだけの金も貯まっているだろうし、あとは信頼できる仲間を集めれば問題は無い。

 ゼギウスの爺さんにでも大臣を押し付けて、国の運営は全部やってもらえばいいし。

 グラハムやリリィを帝国から引き抜いて、俺の部下にしちゃえばいい。

 そして俺はまったりのんびりと家庭菜園とかして、この異世界で静かに暮らすと。


 ……あとはエリーヌくらいかな。

 彼女も俺の傍に置いておきたいんだけど、今回ばかりは難しいかもしれない。

 誰よりも国を愛し、民を愛する皇女。

 そんな彼女が帝国を裏切り、俺の元に来るわけがない。

 しかも今の俺はよく分からん『謎の小娘』っていう設定だし……。  

 女は勇者になれないし、会って話すことすら難しい状況だ。


 でもまあ、くよくよしたって始まらない。

 俺は俺のやり方で三周目を楽しむだけだぜ!


「よおっし! 行くか!」


 バチン、と両頬を叩き俺は参加者達が集う待合所へと向かった。





 待合所には数千人単位で参加者が順番待ちをしていた。

 これだけ多いと迷子になっちゃうかもしれないから気を付けないとね。

 特に困るのはトイレの順番待ちだ。

 試合前にちゃんと行っておかないと、終了後に駆け込んでも間に合わなくて漏れちゃうかもしれない。

 俺、いま女だから、膀胱の限界がどこにあるのか未知数だし、健康にも悪いからね。

 今はまだ大丈夫だけど、余裕を持って行っておくことを心がけておこう。


 俺は空いたソファに座り足を組む。

 参加者リストを見ると、俺の出番までは少し時間があった。

 今のうちに縛りプレイの準備をしておかないとね。


 空間をタップしウインドウを開く。

 そしてアイテム欄を選択する。

 ずらりと並ぶアイテムの中から『SPポッド』というアイテムを選択し使用する。

 すると途端に力が抜けていった。

 

 『SPポッド』とはスキルや魔法を使用するのに必要な精神力――つまり『SP』を使用者から全て抜き出すアイテムだ。

 そうすることで回復アイテムとして所持し、いざという時に使用して精神力を回復させる。

 通常の使い方でいえば、このあと宿や自宅に泊まってSPを全快させてから冒険に出発したりするんだけど、俺はSPを空にしたまま戦いたいからこのままにしておきます。


 次に同じくアイテム欄から『ドレインバッジ』というアイテムを選択。

 それを具現化し装備品として胸に取り付けました。

 この『ドレインバッジ』は呪われたアイテムで、装備するとSPの自動回復を防ぐ効果があるんですよ。

 普通こんなのを自分自身に使う奴はいないんだけど、今の俺には必要な装備に早変わり!

 

 ていうか、自動回復は本当に厄介なんですよ。

 特に相手が魔道士だった場合、残りSPをそこまで気にしないで魔法が使えるって脅威じゃん?

 魔道戦士なんてもっとヤバいからね。

 最初から強力な魔法を使って先手を打っておいて、SPが自動回復しているうちに肉弾戦で追撃して、SPが回復したらまた強力な魔法を撃って……の繰り返し。

 上級職だからなかなかお目に掛かれないんだけど、俺が一周目だったら土下座して逃げるレベルだね。

 

「よーし。あともう一個くらい縛りをつけたいんだけど、どうしようかなぁ」




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