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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
閑話 カズハ・アックスプラントとゆかいな仲間達
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リリィ·ゼアルロッドの魔法塾。(後編)

 魔法の属性は12種類存在すると言われている。


 《火》《水》《風》《氷》《土》《木》《気》《体》《陰》《陽》《光》《闇》。


 更に属性の『カテゴリー』を2つに分けるならば6属性ずつ。


 《精神力》に起因するといわれる《火》《風》《土》《気》《陰》《光》。


 《身体力》に起因するといわれる《水》《氷》《木》《体》《陽》《闇》。


 そしてそれぞれの属性が表裏一体を成し、同等の力を持ち、打ち消しあう事で心身が統一され『生物』としての身体を保つ事が出来ると言われている。




「せんせー。全然意味がわかりませーん」


 綺麗に肘を伸ばし手を上げるカズハ。


「要するに」


 私は一旦ここで止め、名前の通り『教鞭』をビシっとしならせる。


「女王様キターー!」


「静かに」


「……あい」


「要するに、《魔法の遺伝子》が体内に組み込まれている現代の魔族や人間族は、例外無くこの12種類の属性が備わっているという事なのよ」


「せんせー質問ー」


「どうぞ」


 カズハがまた綺麗に手を上げる。


 ……何故手を上げるたびにもう片方の手で脇を隠すのかが分らないのだが。


「《属性》って確か、《得意属性》が2つに《弱点属性》が2つだと前に聞いたんですけどー」


「そうね。その通りよ」


 私は黒板に振り返りチョークで文字を書く。



 この世に存在する全ての生命には必ず《得意属性》と《弱点属性》が存在する。


 そして全ての生命体は《得意属性》として与えられた2種類の《魔法》しか通常は唱える事が出来ない仕組みになっている。


 また《弱点属性》として付加された属性に対し、それと同じ属性で攻撃を受けた際には、通常よりも遥かに大きなダメージを受ける事となる。


 ある研究者によれば、そのダメージを『数値化』するならば、およそダメージ補正値は250%となり。


 いかに相手の《弱点属性》を知り、そこにピンポイントで属性攻撃を当てる事が出来るかどうかが、勝利への近道であるかが容易に想像出来る。



 しかし先程言った通り《魔法の遺伝子》を体内に組み込まれた現代の魔族や人間族には元々全ての・・・魔法の・・・属性・・が備わっている。


 だからこそ、修練を積んだ魔術師の上級職である《大魔道士》ともなれば、それら《魔法の遺伝子》に組み込まれた『全ての魔法の属性』を発現させ、《魔法》として唱える事が出来るのである。




「あー、なるほど。だからリリィせんせーは全ての魔法が唱えられるんですねわかります」


「……真面目に聞きなさい、カズハ」


 既に飽きてきたのだろう。

 カズハは筆を鼻と口で器用に持ちながら頬杖をついて講義を聞いている。


「但し、全ての《魔法》が唱えられる《大魔道士》とはいえ、《得意属性》ではない《魔法》を唱えてしまうと、通常よりも倍以上のSPを消費しますし、また威力も《得意属性》の半分以下だと言われています」


 要は《得意属性》では無い《魔法》はハイコストであるという事だ。


 ざっと見積もっても威力、消費SPを換算して約4~5倍ものリスクをコスト面と威力面の両方で負う事となる。


「でもよう。そうは言ったって『SP』なんて時間が経ちさえすれば自動で回復するし、威力が半分以下ったって、相手の《弱点属性》さえ分っちゃえばダメージ補正250%なんだから、付与魔法エンチャントか何かで減った分の威力を増強出来さえすればかなりの高火力を見込めるのも事実なんだろう? やっぱチートじゃんよ、大魔道士は」


「……貴女が言いますかそれを……」


 たとえカズハが言った事が正しいとしても、だ。


 実際仲間に迎え入れられ、彼女の戦いぶりを眼前で見てきた者が、だ。

 その戦いぶりに唖然とし、今までの自分の努力を無駄な足掻きと思えてしまうほどの『圧倒的な強さ』の前に、色々と投げ出したくなって来るのは仕方の無い事では無いだろうか。



「なんか一生懸命剣術を学んでいってもさあ、最後の良い所は魔法使いに取られちゃうんじゃさぁ。なんて言うか、せっかく一生懸命頑張って来たのに報われないっつうかさあ……」


「貴女が言いますかそれをっ!!」


 ビシッと鞭を撓らせる私。


「……なんか……ごめんなさい」


「……解れば宜しい」


 私は黒板に振り返り、続きを講釈する。


「……後は《魔術禁書》ですかね……」



 『魔術禁書』


 カズハが先の《精霊王》に憑依されたとされる『勇者ゲイル』との戦闘で使用した『禁じられた魔法』もその一つだ。


 世界中に点在していると言われる《魔術禁書》と呼ばれる禁じられた魔法の『コード』が記されている書物。


 《古代図書館》に埋蔵されているのは《光の魔術禁書》だと言われており、《ラクシャディア共和国》に広く普及している《アムゼリア教》の聖書として大切に保管されている。


 その禁書に書かれた《魔法》は絶大なる威力を持ち、一説には使い方を間違えれば一つの国を滅ぼすほどの《力》を有すると言われている。


 今現在、存在が確認されているのは《古代図書館》にある《光の魔術禁書》。


 そして《ユーフラテス公国》に厳重に保管されていると言われる《陽の魔術禁書》だけらしい。


 そのほかの10種類の《魔術禁書》は今も尚、公式には発見されていない事となっている。


 そして、その『禁じられた魔法』を使用した者には対価として――。



 ――今後一生、その属性魔法を使用する事が出来なくなると言われているのだ。




「……貴女はあの日、禁じられた《火魔法》を唱え、その身に宿った《火属性》を消失させてしまったわ」


「うん」


 ……ノリが軽い。


「だって仕方ねぇじゃん。相手は仮にも《精魔戦争》の時代の『精霊王』だった存在だぜ? いくら俺だってそのくらいの『対価』を払わねぇと仕留められる気がしなかったし……」


「……それは本当かしら? 後からレイに聞いた話だと、赤子の手を捻るくらいに圧倒していたと聞いたけど」


「それは違うな。流石に俺も最初っから全力で飛ばしたし、圧倒的に見えたのはそれが俺の策略だったからだよ。あの《精霊王》も現世に復活したばかりで、しかも『勇者』に取り憑いていただろう? だから完全に油断してたんだと思うぜ? そこに俺はつけ込んで、出鼻を挫いてやって自分のペースに持って行ったんだよ。あいつが良い感じに冷静さを欠いてくれなかったら……多分誰か死人が出てたと思うし」


 カズハの表情が沈む。


 確かに、あの状況では誰かが憑依された『勇者ゲイル』に殺されていたとしても何ら不思議は無かったと思う。


 だからこそゲイルは裁判で『無罪』を獲得出来たのだ。


 もしも誰かを殺していたとしたら――。



「……まあ、良いでしょう。そういう事にしておきます」


「うわ、何その『信じてませんからー』発言……。俺だって一応立派なまともな至って普通の人間なんすけど」


「はいはい、じゃあ今日はここまで。私はゼギウスに用事があるから、カズハは残りの時間、しっかりと今の内容をまとめておくように。以上」


「えー? めんどっちいー」


「……テストでもしましょうか?」


「さ、まとめまとめ……」



 私は苦笑し、会議室を後にする。



 

 カズハ・アックスプラント――。



 彼女は一体何者なのだろう。



 彼女と共にいる事で私の知的好奇心は今後、尽きることは無いのであろう。



















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