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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
閑話 カズハ・アックスプラントとゆかいな仲間達
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カズハの緊縛体験。(前編)


『アックスプラント城:王の寝室』



「うーん……。うーーん……」


 俺が……俺が悪かった……。


「うーーん……。うーーーーーん……」


 いやマジで……! ホントごめんって……だから……!


「皆で寄ってたかって俺を『水攻めの刑』で苛めるのはやめてえええええ! …………あり?」


 勢い良く飛び起きる俺。


「……目が覚めたか」


 ベッドの横には腕を組みながら椅子に座っている、過去2回もぶっ殺しちゃった元魔王さん――セレンの姿が。


 俺はそのままベッドの上で何かのヒーローのようなポーズで構えを取る。


「……おい。カズ――」


「今度はなんだっ!? おっきな『海竜』の次は『闇のドラゴン』かっ!? それちょっとかっちょいいけど俺はまだ喰われたくねえぞっ!!」



「・・・」


「・・・」



 辺りに静けさが舞う。

 俺の額に冷や汗が流れる。


 まさか、セレンが自分で、『前世』を思い出しちまうなんて……。


 良い感じにスルーになってた話題だったから俺的にヒジョーにラッキー、且つ言い訳も思いつかなかったから封印しておこうと思っていた所だったのに……。


「・・・」


「・・・」



 のそり、とセレンが椅子から立ち上がる。



「ビクゥッ!」


 一歩後ろに後ずさる。

 これ以上下がるとベッドから落ちる。


「――次は………黒銀の翼が生えた邪龍達の王、《暗黒邪龍バハムート》を召喚する」


「バハムートきたあああああああああ!! どっかのジジイと名前一緒だけど超こええええええええ!!」


「…………嘘だがな」


「嘘かよおおおおおおおおお!!」


 ふっ、と表情を崩したセレン。


 いや……まだ安心は出来ない。

 なんせこいつはめっさ腹黒い超顔が渋い怒ると超怖いあの『魔王(♂)』だったのだ。

 前世を思い出したというのであれば、過去の悪逆非道の数々だって思い出しているのかも知れない。


「……で、何処まで思い出しましたかね、セレン殿」


 一応恐る恐る聞いてみる俺。


「……聞きたいか?」


 ニヤっと笑うセレン。


 え? 何この笑い?

 え? 凄い怖い。

 色々思い出しちゃったぜこれから見てろよこの勇者かぶれが! みたいな悪い顔。


「……聞き、たいです……」


「ならばそこに正座しろ。今すぐに、だ」


「…………はい」



 それから俺は2時間ほど。

 どれだけ『前世』での出来事で、セレンが俺を恨んでいたのか。

 

 俺はみっちりこってりもっこり絞られました……。




◆◇◆◇




『アックスプラント城:王の間』



「いつつつ……。くっそ、超足が痺れた……。セレンの奴……! 2時間も正座させやがって……! ブツブツブツ……」


 ようやく解放された俺はびっこひきながら王の間の王座までひょこひょこ歩いて来た。


「フォッフォッフォ、カズハよ。なんじゃ、また何かやらかしたのか?」


 王の間の横のスペースで鍛冶仕事に勤しんでいる鍛冶屋のジジイ。


「……なあ、ゼギウス」


「?? ……なんじゃ?」


「……名前……変えた方が良いかもね……」


「??」


 訳が分らん、といった顔つきのゼギウス。

 俺は構わず王座へと座る。


「……ところでゼギウス。何度も言うが、ここでチンコンカンコンするのは止めてくれないか」


 国王が王座に座った矢先に背を向け鍛冶仕事を再開するジジイに苦言を呈する俺。


「仕方なかろう。この無駄に広い部屋しかワシの鍛冶道具が置けんのじゃから」


「無駄に広いんじゃねぇよ! ここは『王の間』だっつの!! さりげなく失礼な事言った今っ! お前大臣にした俺馬鹿だった!!」


 俺の突っ込みに腹を抱えて笑うジジイ。

 いやそこツボに入って笑うとこ違うから。


「あああああああ!!/// ここにいらっしゃったのですねえええええ!!/// カズハ様ああああぁぁぁぁ!!///」


 向こうの廊下から物凄い速さで走って来るメイドの姿が見える。

 こんな馬鹿は一人しかいないから敢えて紹介しない。


「はぁ……。ようやくセレンの地獄の説教から解放されたら、今度はこっちかよ……」


 まるで獣を狙うような目付きで駆け寄ってくるメイドに背を向け溜息を吐く俺。


「ほう……。グランザイムと何かあったか、カズハよ」


「いやそれがさぁ……」


 俺の周囲で何やら騒がしいレイさんを無視し、ゼギウスに事情を話す俺。


「ほうほう、とうとうばれてしもうたか、お主の秘密が」


「えええ!?/// カズハ様の『秘密』ですかああ!!/// ま、まさか……! カズハ様は本当は『ふたな……むぐぅっ!!」


「そこまでにしようレイさん。貴女は生きている事自体が自主規制みたいなモンだから」


 俺は咄嗟にレイさんの口を手で塞ぐ。

 そしてまた、今レイさんが言おうとしていた言葉があながち大ハズレで無い所が痛い。


「レロレロ///」


「あっ! 汚ねぇ!! 人の指をペロペロすんじゃないっ!! しかも何だその恍惚の笑みはっ!?」


「カズハ様のお指……/// 美味しい……/// ハアハア///」


「おーーい! 誰かあああ!! ここに変態がいまぁぁぁす!! 警備兵呼んで警備兵っ!!」


 と、忍者の様に王の間に飛び降りて来た一人の男。


「お呼びですかな、国王。ここは《警備兵長》たる私めが王を陥れようとする悪漢……? こ……これは……!! ふつくしい女王の指を恍惚の笑みでしゃぶり尽くしている美少女メイドのお姿が……! こんな美味しい場面……いや、失礼極まりない態度をするメイドめにはこの私、グラハム・エドリードが、一夜掛けてマンツーマンで説教をぶはあっ!!??」


 飛び降りて来た方向にそのまますっ飛んで行く馬鹿男。


「長ぇしキモい」


 拳を振り上げたまま短くまとめる俺。


「カズハ様ぁぁぁ///」


 俺の勇士に目を輝かせる変態メイド。


「ふうむ……。いかんなぁ……。どうにも年を取ってからは満足行く作品が出来上がりゃあせんわいのぅ」


 俺らを無視し、また隣でチンコンカンコン始めるジジイ。



 そう――。


 建国したばかりで申し訳ないが――。



 

 ――この国はもう…………色々と駄目かも知れないと、俺も、思う。



















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