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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
閑話 カズハ・アックスプラントとゆかいな仲間達
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セレニュースト・グランザイムの反逆計画。(後編)

『アックスプラント城:城門前』



「……おいセレン。お前一体どうしちゃったんだよマジで……」


 カズハが心配そうな眼差しを我に向ける。


「……」


 我は表情を悟られぬように俯きながらも立ち上がる。


 何故、カズハがこれほどまでの『力』を有していたのか。

 何故、カズハは我の『夢の内容』を知っていたのか。


「お、おいセレン……! どうして剣を抜くんだ……?」


 両方の夢に出て来た3人の勇者のパーティ。


 1人は見知らぬ男の勇者。

 1人は大きな槍を抱えたグラハム・エドリード。


 そして最後の一人はあらゆる魔法を使いこなす大魔道士リリィ・ゼアルロッド。


「……カズハ……。我はようやく気付いたのだよ・・・・・・・……」


「……? 気付いた・・・・……? ……あ。え? えええ!? まさか……!」



 何故・・カズハは・・・・建国と当時に・・・・・・グラハムと・・・・・リリィを・・・・引き抜いたのか・・・・・・・


 そして――。


 ――あの二刀の『最強の剣』を同時に扱える者など、この世に・・・・一人しかおらぬ・・・・・・・



 我は魔剣を抜き、その切っ先をカズハの憎き鼻先に向けこう言った。



「……貴様が……。貴様が・・・……! 我を2度までも・・・・・・・八つ裂きにした・・・・・・・勇者だったのか・・・・・・・……! カズハ……!」





◆◇◆◇






「・・・」


 カズハが口をあけたまま押し黙る。


「……何か言う事はあるか?」


 我は切っ先を向けたまま目の前の少女を、『元勇者』を睨む。


「・・・」


「……ふっ、愚問だったな……。お前のそのふざけた態度は『前世』と何も変わっていないという事か……!!」


 我はそのまま魔剣を前方へと突き出す。


「ちょ、あっぶ……!」


 咄嗟に上半身だけを後ろに反り返らせ直撃を避けるカズハ。


「な? セレン? 話せば分る! な? な? ちょっと色々と複雑な事情もあって――」


『我が身に宿りし《水》の力よ。その根源たる神に魂の導きを――』


 我は全ての魔力を集約させ魔法を唱える。


「おいおいおいおいおいおいおいおい!! セレンさん!? それ《水魔法》で一番やばい魔法――」


 驚愕の表情のカズハが我の魔力に呼応して、一瞬のうちに後退し防御の姿勢をとる。




「――――《荒れ狂う海の悪魔リヴァイアサン》――――」




「海の竜キタああああああああああ!!!!!!!」


 地面から吹き上がる大量の水と共に水龍神がカズハに襲い掛かる。


「ブクブクブクブク……」


 そのまま津波に溺れて行くカズハ。


『ギャオオオオオオオオ!!!』


 波に飲まれていくカズハに大きな口をあけた水龍神が突っ込んで行く。


 

 カズハが既に先の戦いで《火》の魔法を消失してしまった事は分っている。


 『禁じられた魔法』


 12種類ある魔法の属性にそれぞれ用意されていると言われる『魔術禁書』。

 その禁書を手に入れた者にだけ与えられる、一度きりの《極大魔法》。

 それを使用した事による《火魔法》の消失により、水龍神を防ぎ切る術はもはや存在しない。



『ギャオオオオオオオオオオオオ!!!』



 水龍神が一際大きな声で雄叫びを上げた。


 おそらくカズハは丸呑みされ――。



 刹那。


 水龍神の長い胴体が中から二つに切り裂かれる。



「なっ――!?」



『ギュワアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!』



 咆哮を上げる水龍神。

 真っ二つにされた水の神は一瞬にして消滅する。



「セレン――」


 水浸しのカズハが俯きながらも地面に着地する。


「くっ……!!」


 やはり一筋縄では行かないのか……。

 最強の《水魔法》でも仕留められないとするならば……!


「お前あにすんだよっ!! 今おれ海の王者のとんでもねーこえー竜に丸呑みされたんだぞっ!! トラウマになったらどうすんだよっ!! てか既にトラウマ植えつけられちゃったよっ!! こわっ! リヴァイアサンこわっ!!」


「・・・」


「お前さあ、ちょっとは俺の話とか聞いてくれたって良いじゃんかよっ! 問答無用で『ザッパーン!』『ギャオオ!』『ブクブクブクー!』『バックリー!』はねぇだろっ!! ああ正直に言うよ! ちびったよ! ちびったなんてもんじゃねえよ! 全部出たよ! ああ出たさ! 海水で流れて行ったから黙ってたらバレなかったかもしれないけどねっ!!」


「・・・」


「ああそうだよ! この勢いでバラしちゃうけど! その通りだよ! 俺は元々『勇者』だったよ! お前を2回もぶっ殺したよ! 2回目はあまりにも退屈だったからトドメはグラハムに譲ってやったけどね! てへ♪」


「・・・」


「でもよぅ! ここはもうそんなん全てが関係無い3周目の・・・・世界・・なんだぜ! そんな昔の細かい事気にしてたってしょうがないじゃんかよ! ていうかお前が記憶喪失になってたのがいけないんじゃね!? どういう理屈かは俺にもわからにゃいんだけど覚えて無かったんだから『お? ラッキー! これ黙ってれば変な粘着とかされなくても済むから誰得? 俺得!!』ってなったって仕方無いじゃん!」


「……カズハ」


「それにお前俺と散々戦って負けたじゃん! で、俺、お前お持ち帰りしちゃったじゃん! もうお前俺の物じゃん! お前も俺に協力してくれるって約束したじゃん!」


「……カズハ……長い……」


「だからさぁ! 前世の事は謝るけどさぁ! あとついでにグラハムとリリィには言うなよ! あいつらも何も覚えていないんだから! てかお前ら前にエーテルクランの酒場で会った時に初対面で楽しそうに酒飲んでたじゃんかよ! 俺あの時目ん玉飛び出たよ! 殺した方と殺し返した方で仲良く酒飲んでるんだもんよう! 流石に俺――」



ガンッ!!



「………きゅう」


 つい魔剣の腹の部分で、力説が止まらないカズハのおでこに一発かましてしまう我。


 目を回しながらもその場に倒れるカズハ。


「……もう良いわ。話が長すぎて聞くに堪えん……」


 そして気絶するカズハを抱え城内へと向かおうとする我。



「…………あ」



 そこに広がる光景。


 城門から城内へと続く未だに何も建設されていない、土壌整備もされていないただの土地。



「……これは……叱られるな……」


 我は苦笑いを零しながらもその光景に溜息を吐く。



 城内に続く広い土壌のあたり一面に広がっていたのは――。




 ――先程唱えた《水魔法》で出来てしまった巨大な巨大な、巨大過ぎる水溜りだった。










「…………きゅう」



















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