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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第一部 カズハ・アックスプラントの三度目の冒険
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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず潜伏することでした。

 礼服に着替えた俺達は宰相に会うため、街の東にある議事堂へと向かった。

 広大な敷地の中にはこの街のギルドも併設されている。

 俺達が顔を出すと、すでに警備兵から連絡が入っていたのだろう。

 数名のラクシャディア兵らが丁寧に応対をしてくれて、俺達を宰相のいる応接室まで案内してくれることになった。


「……なぁ、レイさん。この兵士達、丁寧なのは良いんだけど……さっきから俺らをジロジロと見ていないか……?」


 前方と後方を兵士らに囲まれているのは警備上、仕方がないとして……。

 でもここまでチラ見されると正直良い気分じゃありません……。


「……はい。でもそれも仕方がありませんわ。私達『インフィニティ・コリドル』は、傭兵団結成からたったの数日で世界に名を轟かせましたから」


「え? マジで? 別にそんな大したことをした覚えがないんだけど……」


 ここ数日やってきたことと言えば、延々とクエストを受け続けてきたくらいだと思うんだけど……。

 それがどうしてラクシャディアの兵士まで噂が届いちゃうことになるの……? 


「ふふ、さすがはカズハ様ですわね。その自覚が無い部分も含めて、私は貴女様をお慕い申し上げておりますの」


 そう言ったレイさんは俺の尻に手を伸ばしてきた。

 当然俺はその手を掴み、護衛の兵士に見えないように捻り上げたわけなんだけど。

 もうレイさんのセクハラが日常化しちゃってて、こういうのにも慣れてきました。


「……こほん。宜しいですか、カズハ様。僭越ながらご説明致しますと、世界的にも有名なエーテルクランでの闘技大会の優勝者である私を筆頭に、傭兵団の全メンバーが女性のみで結成されております。それだけでも相当目立ちますのに、私達は帝国内における高報酬のクエストを短期間でほぼクリアしてしまいましたわ。恐らくハウエル宰相もその噂を聞きつけ、私達に今回の案件を依頼されたのでしょうね」


「あー……なるほど。納得しましたー」


 ただでさえ男尊女卑の帝国で、女だけの傭兵団なんてまず見かけないしなぁ。

 そら噂になるわけだ。


「『インフィニティ・コリドル』の皆様。こちらでハウエル宰相がお待ちで御座います。くれぐれも粗相の無いよう、よろしくお願い致します」


 扉の前で兵士長らしき人が俺達を振り返りそう言いました。

 何だよ……。そっちで招待しておいて、「粗相の無いように」って……。

 失礼な奴だなぁ……。


「カズハ? 聞いていたアルか? あんたに言っているアルよ?」


「俺かよ! どうして俺だけなんだよ! 今、全員に対して言ったんだろうが!」


 後ろを振り返り、タオに怒鳴ります。

 ていうか、お前が一番危ないんだからな!

 この国で前科を持っているの、お前だけなんだから!


「……こほん。念のため、我らも同席させていただきます。ご理解いただけますな?」


「ええ、構いませんわ。宜しいですわよね? カズハ様?」


 レイさんが決断を俺に委ねてきたので、軽く頷いて返事をしました。

 まあ、何かあったらいけないし、普通警備は付けるものだもんね。

 つまり兵士は依頼内容を知っているということなんだろうな。

 極秘で俺らに頼んできた線はこれで消えたわけだ。

 んじゃ、とりあえず話を聞いてみましょうか。





 応接室の扉が開かれ、部屋の中に招かれた俺達。

 うわー、なんかキラキラしてるー……。

 なにこの高そうなソファとかテーブルとか……。

 やっぱ金持ってるんだなぁ。ラクシャディア共和国って……。


「おお、お待ちしておりましたぞ! 貴女が、かの有名なレインハーレイン殿か!」


 そう言って出てきたのは、この国の宰相ハウエル・メーデー。

 中肉中背の脂ぎったおっさんと言えば、それで通じると思います。


「今回は我らが傭兵団『インフィニティ・コリドル』にご依頼頂き、真に光栄ですわ。宰相閣下」


 片膝を突き、剣士らしく丁寧にお辞儀をしたレイさん。

 俺達も慌ててそれに従い、宰相のおっさんに頭を下げた。

 危ない、危ない……。

 レイさんがいてくれて本当に良かった……。


「頭を上げられよ、レインハーレイン殿。それに御付きの方々も。遠路遥々このような何も無い国にいらして頂き、こちらこそ申し訳がありませんでしたな。ささ、そちらにお掛け下さい」


 そう答えた宰相は先にソファに腰を掛けた。

 それを確認したレイさんは俺達を振り返り首を縦に振る。

 よーし、レイさんから許可が下りたから遠慮なく座ろう。

 うわー、フカフカで気持ち良いー。

 これいくらで売ってるのかなぁ……。


「早速で申し訳御座いませんが、ご依頼の件についてお聞きしても宜しいでしょうか」


 扉付近で険しい表情をしている兵士らに一瞬だけ視線を向けたレイさん。

 あの顔から察するに、相当難しいクエストなのは一目瞭然だな。

 

「……はい。実はですな――」


 宰相の説明が始まりました。

 俺はそれをぼんやりと聞いています。

 まあ、要約するとこんな感じかな。


 ここアムゼリアにある古代図書館の地下で先日、秘密の地下道が発見されました。

 で、発見したのは良いんだけど、そこの入口の扉が強力な魔法で封印されていたんだって。

 まあ『封印の扉』だね。ファンタジーだね。

 ちなみにこの国の古い文献によると、その扉の先に重要文化財が隠されているらしいです。

 で、扉の封印も解いて、さあ先に進もうと思ったら凶悪なモンスターがウジャウジャ出てきたと。

 そいつらがあまりにも強すぎて、この国の兵士ではどうにもならないらしいです。


 それでどうしたかというと、今現在、もう一度扉を封印している状況みたいです。

 だってそのままにしておくと、地下から這い出してきたモンスターで街中、溢れ返っちゃうからね。

 ……それって、首都が崩壊する目前ってことなんじゃないの?

 うわー、馬鹿だなぁ。

 よく調べもしないで、そういう謎の扉の封印を解いちゃうから、こういうことになるんだよ……。


「――ということは、我々への本当の依頼・・・・・とは……?」


「……はい。ひとつは、地下に潜む凶悪なモンスターから、我がラクシャディアが誇る最強魔道士数名を護衛いただくこと。そしてもうひとつが、重要文化財の回収を成功させることです」


「重要文化財の回収が済んだ後、モンスターはどうしたら宜しいのでしょうか」


「兵からの報告によりますと、討伐は到底無理とのことです。ですので回収後、再び地下道に続く扉を封印するつもりでおります」


 宰相がそう言うと、後ろで立っていた兵士の一人がちょっとだけ呻いた。

 相当やられたみたいですね。

 凶悪なモンスターかぁ。魔王城近辺のモンスターとどっちが強いのかなぁ……。

 

 ていうか、重要文化財の回収イベントなんて過去に発生していないんだけどなぁ……。

 三周目限定ってことか……?

 でも、なんか嫌な予感がするんだよなぁ……。

 うーん。 




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