023 もうこうなったら最速で火の最上級魔法もちゃちゃっと覚えちゃいます。
「おー着いたー。やっぱ空から行けばめっちゃ早いな」
俺とタオを背に乗せたルル(竜化バージョン)はデモンブリッジの手前で着陸します。
もうそろそろ日も暮れる頃だし、予定通りこの場所で夜を明かすことにしましょうかね。
「あの二日はかかる道のりをものの二時間でひとっ飛びしちゃうアルなんて……。さすがルルちゃんアルね」
ルルの背から飛び降りたタオは感心したようにそう呟きます。
どうやら快適な空の旅で無慚状態からは完全に脱却できたっぽいですね。
これなら緊縛を解いても大丈夫だろ。たぶん。
「《解縛》」
「……お?」
俺はステータス画面を出現させ陰魔法の欄から『解縛』を選択してタップします。
それとほぼ同時にタオの全身を拘束していた蒼金の魔導具が消失し、彼女の能力が解放されました。
どれどれ……あ、ちゃんとステータスの名前の表記も『無慚のタオ』から『タオ』に戻ってる。
マジで良かった……。このままタオがひゃっはーキャラから戻らなかったらどうしようかと思った……。
「夕食の時間にはまだ早いですし……。どうしますかカズハ?」
竜化を解いたルルが何やら長い髪を気にしながらそう俺に問いかけてきます。
あーアレか。ドラゴンになっちゃうと幼女に戻った時に髪がボサボサになっちゃうんですね。
それに気付いたタオが持ち物袋から自前の櫛を取り出してルルの髪を梳かし始めました。
何だかんだでもう十分仲良くなってるし……。そろそろタオも若干記憶が戻ってきた感じなのかしら。
「もちろん、火魔法の習得をさせてもらいます! 目標は今夜中に火属性の三つの系統の『最上級魔法』まで覚えなおす事!」
「え――」「は?」
ビシッと人差し指を天に向けそう叫んだ俺。
しかしそれを聞き固まる幼女とチャイナ娘。
「……もう一度確認したいアルけど、カズハは火の属性基礎魔法すらもまだ習得していないアルよね?」
「お、ようやく名前で呼んでくれた。俺の事好きになっちゃったんじゃないのタオ」
「……無慚状態になっても良いアルか、ルルちゃん……」
「駄目です!! それだけはもうやめてください!!」
ルルの髪を梳かすのを止めたタオにすがるような目でそう叫ぶ彼女。
そんなに恥ずかしがらなくても良いじゃん。みんな俺の事大好きなのは分かってるんだし。
「……コホン。……カズハ? 火の最上級魔法ということは、『放出系』ならば『ファイアメテオアーク』、『物質系』ならば『ゾディアック・フレイガウェポン』、『具現化系』ならば『トレメンダス・ブレイズン』ということになりますが」
「うん。その三つを今夜中におぼえたい」
「…………はぁ」
俺の言葉を聞き何故か深い溜息を吐く幼女。
いやいやいや、普通でしょう! これくらいは!
だってもう陰の最上級魔法である『緊縛』も使えるようになったんだし、火魔法だけショボかったらこの先戦っていけないじゃん!
もう目の前、魔王城だよ! 魔王や四魔将軍がいるラストステージなんだよ!
「……分かりました。ではあちらに見える渓谷の開けた場所で火の魔導契約を交わしましょう。申し訳ないのですが、タオはここで野営と夕食の準備を進めていてもらえますか?」
「わ、分かったアル……。でも日が完全に落ちるまでには戻ってきて欲しいアルよ。いくらこの場所がルルちゃんの加護で守られている場所だとしても、夜になれば魔物もモンスターも狂暴化するし、さっきみたいな上級魔物でも現れたら――」
「だーいじょうぶだって。渓谷は目と鼻の先だし、魔導契約と三つの属性基礎魔法だけルルから習得できたら、あとは夜中まで一人で修練すっから」
不安な表情でそう語るタオに満面の笑みを浮かべる俺。
まあそうそう鬼翼魔人みたいな上級魔物がぽんぽん現れて来ないだろうし、万が一現れてもルルも俺も一瞬でここに戻って来れるくらいの能力はあるから大丈夫。
それにタオの覚醒もあるし。……もう二度と見たくはないけれど。
「それでは、カズハ」
「おうよ」
再び竜化したルルの背中に飛び乗った俺は、すぐ目の前に見える渓谷まで向かいました。
◇
「ここなら水が流れていますし、万が一にも対処できますね」
渓谷に降り立った俺達はさっそく魔導契約の準備に取り掛かります。
ちなみに『万が一』っていうのは『魔力暴走』のことですね。
滅多には無いんだけど、魔導契約に失敗して対象者の体内に眠る火の魔法因子が暴走することがあるんですよ。
そうすると火の神獣に身体ごと乗っ取られて、そいつはもう二度と元の姿に戻ることができないんだとか。
確率からいえば10万分の1とか100万分の1とか、そんなもんらしいです。
……まあ火の神獣といえば、一度お世話になったことがあるんですが。
そうこう考えているうちにルルは空間に魔導契約書を出現させました。
それが宙から彼女の手元にゆっくりと降りて来て、とあるページが自然と開かれます。
「――『火魔法』。天授に集いし六つの奇跡は、今ここに汝の求めに同調せん。《放出》、《物質》、《召喚》。天から授かりし精神は、火なる魔力を宿し、その身に与え賜ん――」
前にエリーヌからも聞いたことがある魔導契約の言葉。
それがルルの口から発せられたと当時に俺の全身にピリピリとしか感覚が伝わってきます。
これこれ。この電気みたいなのが流れていく感じ。
決して気持ち良いとは言えないけど、まあ痛いとかしんどいとか、そういうものも特にない。
それらが全身をゆっくりと巡り脳にまで達した直後、ルルの手元にあった魔導契約書が再び宙を舞った。
上空高くまで飛び立ったそれはすぐさま急降下して、そのまま俺の胸に突き刺さります。別に痛くはないんだけどね。
「これで火の魔導契約は終了です。魔力暴走は……無さそうですね」
「あってたまるか!!!」
俺はつい本気でそう突っ込んでしまいました。
ちょっと残念そうな顔をしながらしれっと酷いことを言う幼女怖い……。
「では私はタオのお手伝いがありますので、修練頑張ってください。ちなみに夕飯はいりますか?」
「いらない。あ、でも夜中に腹減るかもしれないから夜食作っといてくれる?」
「夜食は太るから食べたくないんですけど……」
「俺が食べるんだよ!!! もういいから一人にして!! 魔導契約ありがとう!!!」
俺は若干巻き気味にルルの背中を強引に押しました。
ほら、タオが寂しそうにして待ってるんだからさっさと行きなさい。
俺だって今から夜中まで集中したいんだから。一夜漬けとかめっちゃ得意だし。
「……用が済めばそうやってすぐ邪魔者扱いする……」
「後でいっぱい構ってやるから!!! お前、ちょっと俺を邪魔したいだけだろ!!!」
俺がそう叫ぶと若干悪い顔をしたルルは諦めてドラゴンに変身してようやく飛び立ってくれました。
くそぅ……。俺はいじられ役よりもいじり役のほうが好きなのに……。
後でルルが寝静まったら強制的にハグしてやろう。
やられたらやり返す、それが俺。カズハ・アックスプラントだ。思い知るが良い。
――ということもありましたが。
ようやく集中できそうなので、夜中までノンストップで火魔法の修練を積もうと思います。
LV.65 カズハ・アックスプラント
武器:聖者の罪裁剣(攻撃力255)
防具:陰獄獣の軽服(防御力68)
装飾品:炎法師のイヤリング(魔力25)
特殊効果:斬撃強化(特大)、スキル威力強化(特大)、魔法攻撃力強化(特大)、光属性特効、闇属性特効、陰魔法発動時間短縮(大)、SP自動回復量(中)、火属性強化(大)
状態:正常
魔力値:3379
スキル:『ファスト・ブレード(片) LV.19』『スライドカッター(片) LV.45』『アクセルブレード(片) LV.30』『スピンスラッシュ(片) LV.31』『ツインブレイド(二) LV.19』『ブルファイト・アタック(二) LV.19』『センティピード・テイル(二) LV.14』『ダブルインサート(二) LV.10』『エクセル・スラッシュ(二) LV.8』『ツーエッジソード(二) LV.3』
魔法:『力士(陰)』『蛇目(陰)』『塩撒(陰)』『隠密(陰)』『悪夢(陰)』『迅速(陰)』『鎖錠(陰)』『封呪(陰)』『奈落(陰)』『緊縛(陰)』『解縛(陰)』『ファイアボール(火)』『ファイアランス(火)』『ファイアエレメンタル(火)』
得意属性:『火属性』『陰属性』
弱点属性:『光属性』『闇属性』
性別:女
体力:3280
総合結果:『正常』




