三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず絶句することでした。
「私の情報はこんな感じでしょうか」
レイさんが紙に書き出した情報を仲間達はみんな身を乗り出すように眺めた。
なにこの差は!
俺の時とぜんぜん反応が違うじゃんかよ!
みんなもっと俺にも興味を持って!
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お名前:レインハーレイン・アルガルド
得意属性:『氷』『気』
弱点属性:『光』『闇』
武器:聖者の罪裁剣(片手剣/光属性)
防具:闇耐性
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「うわぁ……。やっぱりカズハと違って完璧な装備アルね……。勇者の剣の光属性と闇耐性防具で弱点を完璧に補っているアル……」
「おいそこ。やっぱりとはなんだ、やっぱりとは」
失礼なことを仰ったタオさんのわき腹を軽く小突いてやりました。
そしたら手を抓られました。
痛てぇな! コノヤロウ!
「やはり勇者の血を引くだけあって、弱点属性は『光』と『闇』なのですね」
「はい。私の兄、ゲイルも同じ弱点属性です。この世に十二種類ある属性は魔法遺伝子とも深く関わっておりますから、それらが勇者の血筋とも関係していると言われておりますわね」
「ふーん。ならカズハもレイやゲイルさんと遠い親戚ってことアルかね……。…………うん」
「おい! 今の間は一体なんだ! 俺をレイさんみたいな変態と一緒にしないでくれ!」
椅子から立ち上がり叫ぶ俺。
でもレイさん以外、誰も俺と目を合わせようともしない……。
え? もしかしてみんな、俺のことを変態だと思ってるの……?
やめて! それだけは耐えられないからやめて!
「大丈夫ですわ、カズハ様。たとえ近親相姦になったとしても、私の愛は決して変わりませんわ」
「何ひとつ大丈夫じゃない!?」
おい! 誰かこいつを止めてくれ!
ていうか堂々と近親相姦とか言っちゃう奴を仲間にしたらアカン!
どうなってんだよ! このパーティは!
「少しは落ち着けカズハ。次は我の番だな」
軽く溜息交じりでそう言ったセレンは自身の情報を紙に書き出した。
お前……! 絶対に他人事だと思ってるだろ……!
俺の貞操が危ないんだから、もうちょっと心配してくれよ!
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お名前:セレニュースト・グランザイム八世
得意属性:『水』『闇』
弱点属性:『火』『陽』
武器:咎人の断首剣(片手剣/闇属性)
防具:陽耐性
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「……こんな感じか」
「……」
セレンはペンをテーブルに置き、そう呟いた。
でも情報を見た仲間達はみんな固まっちゃってる。
「……あの、これは一体? 『グランザイム』……?」
中でも一番困惑しているのはレイさんです。
……あ。そうだった。
レイさんはまだ知らないんだっけ……。
「あー、レイさん。その、今まで言うの忘れてたんだけど――」
俺はセレンとの経緯を簡単に説明しました。
こいつが元魔王だということ。
俺がお持ち帰りしちゃったこと。
そして契約を交わして、俺の眷属になったことなど。
「……」
「おーい、レイさーん? ……駄目だ。固まってる」
あまりのショックにレイさんが機能停止状態になっちゃいました。
まあ、でもそうなるよね。
いきなり仲間のうちの一人が、元魔王だと知らされたら。
うん。俺が悪かった。ごめん。
「レイのことはとりあえず置いておくとして……。しかし、どういうつもりなのですか? 私に真名を知らせるとは……」
ルルがセレンを睨みそう言いました。
そういえば前に、魔族は真名を知られると色々と面倒なことになるとか言ってたよね。
なんだったか忘れちゃったけど……。
「……さあな。我にも分からん。心境の変化、というやつかも知れんな」
さらっとそれだけ答えたセレンは紙とペンをタオに渡しました。
納得がいかない様子のルルはずっとセレンを睨んだままだし……。
これだからお子ちゃまは困るよね。
セレンはお前らを認めたってことだろうが。
それくらい察してあげなさい。
「じ、じゃあ次は私の番アルね。なんだか緊張するアル……!」
震える手で情報を書きだしたタオ。
座ったまま気絶しているレイさん以外がその情報を覗き見る。
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お名前:タオ
得意属性:『風』『体』
弱点属性:『火』『土』
武器:短刃拳(短剣)
防具:土耐性
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「……まあ、普通ですね」
「普通だな」
「よし。じゃあ最後はルルの情報を――」
「ちょっと待つアルっ! どうして私だけコメントが少ないアルかああぁぁ!」
バンッとテーブルを叩き立ち上がったタオ。
いや、特に何も言うことも無いし……。
「この短刃拳はすごいアルよ……! 『盗む』を特化させるために歪な形に作られた短剣で――」
「それ前も聞いた」
「う……」
大きく肩を落としたタオは大人しく椅子に座りました。
お前は普通のキャラなんだからそれで良いよ。
そんな変な奴らばっかりだったら俺が疲れちゃうし。
「では最後は私ですね。レイもいい加減に起きてください」
「…………はっ! 私としたことが気を失っていたようですわ……」
幼女に起こされたレイさんは若干よだれを垂らしていました。
一体どんな夢を見ていたのやら……。
ルルはペンを持ち情報を書きだす。
……あれ? そういえば俺、ルルの属性とかまったく知らなかったな。
ていうか精霊って属性とか関係あるのかな。
いちおう神様みたいな存在なんだし……。
うーん。
「こんな感じですね」
「……」
「……」
幼女の書いた紙を見て、今度は全員が固まった。
その様子を見て首を傾げるルル。
「どうかしたのですか?」
「……お前……なにこれ……」
「?」
俺は震える手で紙を拾い上げる。
そして今一度、そこに書いてある情報を凝視した。
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お名前:ルリュセイム・オリンビア
得意属性: 『火』『水』『風』『氷』『土』『木』『気』『体』『陰』『陽』『光』『闇』
弱点属性:なし
武器:なし
防具:属性なし
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「…………お、、、…………お前が一番チートじゃねえかよおおおぉぉぉ!!!」
「…………うん?」




