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三周目の異世界で思い付いたのはとりあえず裸になることでした。  作者: 木原ゆう
第十部 カズハ・アックスプラントと竜人族の姫(後編)
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004 都合が悪いことを言われたらだいたい目を逸らせば解決します。

 ゼギウスの爺さんの小屋を出た俺達は周囲を警戒しつつ二手に分かれました。

 計画どおり俺とグラハムは精霊の丘へ。

 レイさん、ゲイル、ゼギウスの爺さんは帝都に向かってもらいます。

 まあ道中で帝国兵に見つかったとしても何とでもなるでしょう(鼻ほじ)。


「……カズハ殿。流石にその恰好のままうろつかれると、その……」


「? ……あー」


 レイさん達と別れ街を出発しようとしていた俺にグラハムがそう声を掛けてきます。

 確かにグラハムの上着を借りて着ているから一見大丈夫そうに見えるけど、この下はレイさんから借りた下着を着けているだけだったことに気付きます。

 完全に変態の格好やんこれ……。

 ていうか、レイさんノーブラのまま帝都出発してたけど大丈夫なのかあれは……。


「なんか洋裁店で適当な冒険服を買っといて。俺はさすがに悪目立ちしすぎてるから」


「それは残念――いや、かしこまりました。ではカズハ様はこのまま身を隠しつつ裏門より街を出発してくだされ。すぐに追いつきますゆえ」


 そのまま周囲の様子を伺いつつ、グラハムは洋裁店のある商業街に向かって行きました。

 それを見送った俺はその足で裏門までゆっくりと歩いて行きます。


「あー……。本当は風呂入ってお布団で寝たいんだけどなぁ……。全身筋肉痛だし、精霊の丘に到着するまでまた野宿しなきゃいけないし……」


 魔屍王に貫かれた腹もまだ完治しているわけじゃないし、ここのところドタバタが多すぎて全然ゆっくり休めていません。

 確実に強くなってるのは良いことなんだけど、いざ強敵と戦うとなった際に過労でぶっ倒れたら意味ねぇし……。


「おい、そこの女。何をそんなにのんびりと歩いている。今この街には緊急事態が発令――」


「あーーっ!! この子、あのテロ犯と戦って公衆の面前で素っ裸にされた子ですよ!! 警備長!!」


「なんだと!!?」


 ……うん。さっそく見つかりました……。

 ていうかそんな大声で俺のセンシティブな内容に触れるのやめてください……。


「…………チラッ」


「「ブーーーーーッ!!!」」


 グラハムの上着をちょっとずらし、チラ見せ作戦を展開すると案の定警備兵の二人は鼻血を出して前屈みになり蹲ります。

 その隙に俺はダッシュしてその場から逃走。


「に、逃がすな! 追え! 俺は、今は、無理だ!!」


「た、隊長……! 俺だって走れませぇん!!」


 アホの警備兵の叫び声が後ろから聞こえた気がするけど、もうそういうのはお腹いっぱいだから無視。


 とっとと裏門から街を出ちゃいましょう。





「……おっせぇなぁ、グラハムの奴……」


 無事に街を脱出したのは良いんだけど、なかなかグラハムがやってきません。

 買い物ひとつもまともに出来ないなんて、これだからダメ男は……。


「か、カズハ殿! お待たせして申し訳御座いません……!!」


 俺の心の悪口が聞こえたのか、タイミング良くグラハムが街の方から走ってくるのが見えました。

 でもなんか様子がおかしい。


「追え、追えーーー!!」

「待て貴様ーーー!!!!」


「げっ! 見つかってんじゃねぇかよグラハム!!」


 グラハムの後方から街の警備兵が十数人ほどこちらに向かって来るのが見えます。

 えー……。どうすんのこれ。このまま追われながら精霊の丘に向かうとか、かったるいやんけ……。


「はあ、はあ、も、申し訳ありませぬ……。洋裁店で冒険服を買えたまでは良かったのですが、裏門に向かった途端に街の警備兵らに囲まれてしまいまして……。そのままどうにか隙を突いて正門に向かえたのですが、何故かそちらのほうが警備兵が極端に少なく、そのお陰でこうして街を脱出できたのですが……」


「…………」


「……何故、目を逸らすのですか? カズハ殿?」


 俺は何も言わずにそのままグラハムが抱えている冒険服を奪い取ります。

 そして借りていた奴の上着を投げ渡し、一瞬で着替えが完了。

 うん。やっぱ冒険服が一番良いよね。安いし、動きやすいし、汚れが目立たないし。


「どういたしましょう? 彼らに手を出すわけにもいきませんし、このまま事情をきちんと説明して――」


「面倒臭い」


「えっ」


 俺は怒号を上げて向かって来る警備兵らに向き直り、右手を構えました。

 あの数を相手に傷つけずに、尚且つ追って来れないように出来る魔法はこれしか思い付きません。


「カズハ殿、何を――」


「常世の闇に集いし陰法師の御所へと誘わん! 《奈落》!!」


 陰魔法を詠唱すると、地面に赤黒い一本の線が伸びて行きました。

 それが警備兵らの足元まで到着したのを確認した俺は奴らに背を向けます。


「……? 何だ、この気味の悪い線は……?」

「た、隊長……。なんか、地面が……」

「??」


 足を止め、動揺する警備兵達。

 そして次の瞬間、まるで巨大な瞼が開くかのように赤黒い線が大きく二つに裂かれていきます。


「あ、あの……。カズハ、殿……? あれは――」


「ぎゃああぁぁぁ! 落ちる、落ちるーーーー!!!」

「おい! 俺に捕まるな! ひ、ひいぃぃ!!」

「これはまさか、陰魔法の……!!」


 ゴゴゴという轟音と共に地面が裂かれ、次々と警備兵らは奈落の底に落ちていきます。

 そして全員が消え去った後、その巨大な瞼は徐々に閉じていきました。

 うん。まあまあイケるな。あの感じだと。


「陰魔法、『奈落』。習得するのが結構ムズいレアな魔法なんだけど、集団の足止めには最適だし、数時間もすれば無傷で相手も解放されるから、死傷者も出ないっていう優れもの。ちなみに隠し上位魔法で『大奈落』っていうのも存在するんだけど、この世界じゃたぶん使えないと思う」


「…………」


 絶句するグラハムをそのままにしておき、俺は遠方に見える精霊の丘に視線を移します。

 ここからだと三日は掛かるから、とりあえず半日くらい歩いて日が暮れてきたらキャンプ張って飯食って寝たい。

 あの断崖絶壁を登るのも一苦労だし、グラハムだって魔屍王戦で受けた傷やら闘技大会に参加した疲労もあるだろうし、あまり無理はさせられないし。



 首の骨を鳴らして腕を大きく伸ばした俺は、両頬を思いっきり叩き。

 

 そして再び精霊の丘に向かい歩み始めたのでした。




LV.63 カズハ・アックスプラント

武器:なし

防具:木狐綿の冒険服(防御力8)

装飾品:なし

特殊効果:なし

状態:疲労

魔力値:3021

スキル:『ファスト・ブレード(片) LV.17』『スライドカッター(片) LV.45』『アクセルブレード(片) LV.30』『スピンスラッシュ(片) LV.31』『ツインブレイド(二) LV.19』『ブルファイト・アタック(二) LV.19』『センティピード・テイル(二) LV.13』『ダブルインサート(二) LV.8』『エクセル・スラッシュ(二) LV.8』『ツーエッジソード(二) LV.2』

魔法:『力士(陰)』『蛇目(陰)』『塩撒(陰)』『隠密(陰)』『悪夢(陰)』『迅速(陰)』『鎖錠(陰)』『封呪(陰)』『奈落(陰)』

得意属性:『火属性』『陰属性』

弱点属性:『光属性』『闇属性』

性別:女

体力:3439

総合結果:『正常』


ツーエッジソード/攻撃力が二倍になるが防御力が半減する二刀流スキル

鎖錠/異空間から黒い鎖が出現し対象を拘束する陰魔法

封呪/異界から着物姿の巨大な女の寄坐を召喚し対象の魔力を奪い取る陰魔法

奈落/地面に大穴を出現させ対象を無傷のまま奈落の底に落とす陰魔法

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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり格好アレなまんまだったか…… 陰魔法の陰の字は陰湿の陰じゃなかろうか(゜ω゜)
[一言] ···警備員がアホ過ぎるWWW
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